退職代行を使ったことは転職先にバレる?
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退職代行を使ったことが次の会社にばれるかは、書類と経路で分けて考えます。
「バレる」を分解すると、答えが出る
退職代行を使うか迷っている人が最後に引っかかるのが、この一点です。
ただ「バレる」という言葉のままだと考えが進みません。分解すると3つになります。
- 入社手続きで出す書類に、退職の伝え方が記録されるのか
- 転職先が前職に問い合わせて聞き出すことがあるのか
- 人づてに伝わるのか
1つずつ潰していきます。

入社手続きの書類に何が書かれているか(所得税法226条)
転職先に提出する書類は決まっています。それぞれ何が載っているかを並べると、こうなります。
書類前職について載ること
- 雇用保険被保険者証前職の社名と退職年月日退職理由と伝え方は載らない
- 源泉徴収票前職の社名退職理由と伝え方は載らない
- 年金手帳・基礎年金番号どれも載らない
- 離職票そもそも転職先には提出しない
源泉徴収票を交付することは所得税法で決まっています。
居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(第百八十四条(源泉徴収を要しない給与等の支払者)の規定によりその所得税を徴収して納付することを要しないものとされる給与等を除く。以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)に、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。
長い条文ですが、この書類に何を書くかは条文が財務省令に委ねています。実際に載るのは支払者の名称と支払金額で、辞め方の欄はありません。
退職理由(自己都合・会社都合)が記載されるのは離職票です。ただし離職票は本人に交付され、失業給付の手続きでハローワークに出すものです。転職先に提出する書類ではありません。
つまり、退職の伝え方が記録された書類は存在しません。 自分で伝えても代行に依頼しても、提出書類は同一です。
前職への問い合わせについて(個人情報保護法27条1項)
2つ目の経路です。採用側が前職に照会する「前職調査」は、本人の同意なく行うと個人情報保護法上の問題が生じるため、実務ではほとんど行われません。この点は退職代行のその後|転職活動への影響で詳しく整理しています。
前の会社が転職先に伝えることはあるか(労働基準法22条)
「腹いせに次の職場へ言われるのでは」という不安を持つ人がいます。
個人情報保護法には、こう書かれています。
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
退職者の退職の経緯を、無関係な会社へ伝える行為はこれに触れます。
さらに労働基準法には、より直接的な定めがあります。
使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。
「第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として」という部分です。前の会社が転職先と示し合わせて次の就職を妨げることは、法律が名指しで禁じています。
「秘密の記号を記入してはならない」とあるのは、退職証明書に暗号のような印を付けて何かを伝える行為を指しています。そういうことが実際にあったから条文になっています。
そもそも会社側に動機もありません。退職者について外部に語ることは、会社にとってリスクにしかならないためです。
退職証明書に何が書かれるかは、自分で決められる(労働基準法22条1項・3項)
前の会社が出す書類のうち、転職先に出すことがあるのが退職証明書です。これも請求する側が中身を決められます。
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
5つの項目が並んでいますが、全部を請求する必要はありません。続く項にこう書かれています。
前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
つまり「使用期間」だけを請求すれば、退職の事由は書かれません。書かないことを頼むのではなく、請求しなかった項目は書いてはいけないという形です。
転職先から退職証明書を求められたときは、何の証明が要るのかを先に確認してから、その項目だけを前の会社に請求するのが確実です。
依頼するときに渡す個人情報(労働基準法22条1項・3項/弁護士法23条)
見落とされがちですが、退職代行を使うと、業者に対して勤務先・氏名・雇用形態・連絡先といった情報を渡すことになります。「バレる」を心配するなら、こちらのほうが現実的な論点です。
ここでも運営元による差があります。弁護士法にはこう書かれています。
弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。
「弁護士であつた者」まで含んでいます。 担当していた弁護士が辞めた後も義務は続きます。
民間業者には、この法律上の守秘義務がありません。契約書やプライバシーポリシーの範囲での約束になります。
依頼前に、取得した情報の利用目的と保存期間が明記されているかを確認してください。ここが曖昧な業者は、料金の安さに関係なく避けたほうが無難です。

唯一残るのは「人づて」
3つ目です。ここだけは書類の話では消せません。
- 同業の狭い業界で、前職と転職先に接点がある
- 前職の同僚とSNSで繋がっている
- 自分で話してしまう
3つ目が意外と多いようです。面接で聞かれてもいないのに説明したり、入社後の雑談で漏らしたりするケースです。話す必要がない場面では話さない、というだけで防げます。
業界が狭い場合は、この可能性をゼロにはできません。ただしその場合に伝わるのは「あの人は退職代行を使ったらしい」という情報であって、書類上の不利益ではありません。
実際に不利に働くのは別の要素
ここが本題かもしれません。採用側が職務経歴から読み取るのは、退職の手段ではなく在籍期間です。
短期離職のほうが影響が大きい。 1年未満での退職が続いていれば、その事実は書類に残ります。退職代行を使ったかどうかは残りません。どちらが選考に効くかは明らかです。
空白期間の説明。 離職から次の応募までが長い場合、何をしていたかは聞かれます。ここは準備しておく価値があります。
説明の一貫性。 職務経歴書の日付と面接での説明が食い違うと、そこは掘られます。在籍期間をどう書くかは職務経歴書の書き方に整理しました。退職代行の利用を隠すこと自体は問題ありませんが、辻褄の合わない説明を作るとかえって不利になります。
それでも気になる場合の考え方
退職代行を使うかどうかで迷っている時点で、いまの職場を辞めること自体は決まっているはずです。であれば、判断材料は「バレるか」ではなく「自力で伝えられるか」になります。
自力で伝えられるなら、費用をかける必要はありません。3回申し出て押し戻されている、上司と話すこと自体が難しい、といった状況であれば、時間が延びるコストのほうが代行費用より大きくなります。
次の入社日がすでに決まっているなら、判断の軸はさらに時間側へ寄ります。バレるかどうかより先に、退職の申し入れから契約が終わるまでの2週間が入社日に間に合うかが決まってしまうためです。逆算の仕方は転職先が決まっている場合の退職代行にまとめています。
なお、有給を残しているなら、代行の運営元によって交渉できるかどうかが変わります。この違いは退職代行はLINEで無料相談できる窓口まとめにまとめています。
まとめ
- 提出書類のどこにも、退職の伝え方は記録されない
- 退職理由が載る離職票は、そもそも転職先に提出しない
- 消せないのは人づての経路だけ。話さなければ大半は防げる
- 選考で実際に効くのは在籍期間と説明の一貫性であって、退職の手段ではない