公務員の退職代行|労働組合法が適用されない
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公務員が退職代行を調べると、民間向けの説明ばかりが出てきます。
その説明はそのまま当てはまりません。 根拠になっている法律が、公務員には適用されないためです。このページでは、どの条文がどう違うのかを確認します。
民間で交渉できる根拠はどこにあるか
このサイトでは、退職代行の運営元を3つに分けています。民間業者、労働組合、弁護士です。交渉ができるかどうかで扱いが変わり、その線引きは退職代行の運営元3種類にまとめました。
労働組合が交渉できるのは、労働組合法が団体交渉の仕組みを定めているからです。つまり労働組合運営の退職代行は、この法律を土台にしています。
そこで問題になるのが、公務員にこの法律が及ぶかどうかです。

地方公務員には労働組合法が適用されない(地方公務員法58条1項)
地方公務員法は、他の法律の適用について正面から定めています。
労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)並びにこれらに基く命令の規定は、職員に関して適用しない。
労働組合法が名指しで外されています。
民間の労働者について成り立っていた土台が、ここでは無いということです。労働組合が運営しているという一点だけを見て、民間と同じ結果を期待することはできません。
なお、この条文は労働基準法まで全部を外しているわけではありません。地方公務員には労働基準法が原則として適用され、条文の別の項が一部の条を除いています。そこは国家公務員と違うところです。
国家公務員は労働基準法も適用されない
国家公務員法附則6条1項のほうは、外している範囲がもっと広くなっています。
労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、船員法(昭和二十二年法律第百号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及び船員災害防止活動の促進に関する法律(昭和四十二年法律第六十一号)並びにこれらの法律に基づく命令は、職員には適用しない。
労働組合法だけでなく、労働基準法も並んでいます。
民間向けの記事が労働基準法を引いて説明している部分は、国家公務員にはそのまま使えません。有給休暇や解雇予告の話も、根拠になる法律が違います。
同じ「公務員」でも、国と地方で適用される法律の範囲が違う。まずここを分けてください。
地方公務員
- 労働組合法・労働関係調整法・最低賃金法が適用外
- 労働基準法は原則として適用される
国家公務員
- 労働組合法に加えて労働基準法も適用外
- 船員法・じん肺法・労働安全衛生法なども並ぶ
どちらも労働組合法は外れる。分かれるのは労働基準法が残るかどうか
条文に「辞職」という言葉が見当たらない(国家公務員法27条・75条)
では退職の手続きはどう書かれているのか。ここは正直に書きます。
国家公務員法と地方公務員法の条文を通して探しましたが、「辞職」という語はどちらにも見つかりませんでした。
「任命権者の承認が必要」という説明はよく見かけます。しかし、その根拠にあたる条文をこの2つの法律の中に見つけることはできませんでした。
条文にあるのは、次のような定めです。
職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、又は免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職され、又は降給されることがない。
読むと分かりますが、これは意に反する処分から職員を守る規定です。自分から辞めたいときの手続きを定めたものではありません。
同じ条は、扱いが公正であるべきことも定めています。
全て職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
こちらも向いている方向は同じで、処分される側の保護です。
そもそも自分が公務員かどうか
先に確かめてほしいことがあります。勤め先の名前が公的でも、職員の身分が公務員とは限りません。
独立行政法人や国立大学法人のように、公的な仕事をしていても職員が公務員ではない組織があります。その場合は民間の労働者と同じ法律が適用されるので、このページの話は当てはまりません。
見分ける手がかりは、採用のときに受け取った書類です。辞令に「任命する」とあるか、雇用契約書を交わしたか。健康保険が共済組合なのか、協会けんぽや健康保険組合なのか。給与明細と保険証を見れば、たいてい判断がつきます。
はっきりしないときは、人事の担当者に地方公務員法の適用を受けるかを聞いてください。ここが決まらないと、読むべき条文が決まりません。

だから調べる先が民間と違う
法律に手続きが書かれていないなら、どこにあるのか。勤め先の団体が定めた条例や規則です。
地方公務員なら、その自治体の条例や任免に関する規程。国家公務員なら、人事院規則や各府省の内規になります。同じ公務員でも、勤め先ごとに手続きが違うということです。
だから最初に見るのは、退職代行の比較サイトではありません。自分の団体の例規集や職員向けのポータルです。そこに退職願の様式や提出先、いつまでに出すのかが書かれています。
例規集は多くの自治体が公開していて、「◯◯市 例規」で探せます。職員の任免に関する規程や、退職手当の条例が手がかりになります。
業者に頼む前に確かめること
それでも第三者に頼みたい場合、確かめる点が民間とは変わります。
- 公務員の案件を扱った経験があるか
- 労働組合であることを根拠にしていないか
- どこまでを代行し、何は本人がやるのかを書面で示せるか
労働組合法を土台にした説明をそのまま公務員に当てている業者は、条文を見ていません。 上に引いたとおり、その法律は適用されないと書かれています。
なお、このページでは特定のサービスを紹介していません。公務員の任用関係でどこまで代行できるのかを、公的な資料で確認できなかったためです。確認できないものを勧めることはしません。
運営元による違いそのものは退職代行の運営元3種類で確認できます。民間で働いている場合の選び方は、そちらが当てはまります。
まとめ
- 労働組合が交渉できる土台は労働組合法。その法律は公務員に適用されないと条文にある
- 地方公務員は労働組合法・労働関係調整法・最低賃金法が適用外。労働基準法は原則適用
- 国家公務員は労働基準法も適用外。外れている範囲がより広い
- 国家公務員法と地方公務員法に「辞職」の語は見当たらなかった
- 条文にあるのは意に反する降任・免職からの保護で、自分から辞める手続きではない
- 手続きは勤め先の条例や規則にある。まず自分の団体の例規を見る
民間向けの説明を読む前に、自分がどちらの法律の適用を受けるのかを確かめてください。
弁護士なら公務員でも受けられる
労働組合が交渉できないのは、労働組合法が公務員に適用されないからでした。弁護士には、この土台そのものが要りません。 弁護士法72条は弁護士でない者を制限する条文なので、弁護士は最初から外にいます。
記事末尾の表に挙げた弁護士法人ガイア総合法律事務所は、ページの説明文で「即日退社、有給消化、社宅住み、入社したばかりの方、公務員、役員、業務委託全部対応します」と自分で書いています(2026年8月31日確認)。
それでも、退職の手続きそのものは自分の団体の例規で決まります。 先に条例や規則を見てから、そのうえで足りないところを相談してください。