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会社の罰金制度はどこまで許されるか

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この記事の見出し(11)
  1. 「罰金」は法律の言葉ではない
  2. 減給の制裁には上限が2つある
  3. 「1回」の数え方に注意する
  4. 就業規則に書かれていなければ、そもそもできない
  5. 制裁が複数の月にまたがる場合
  6. 名前が変わっても中身で判断される
  7. 給与から引くには別の条件がある(労働基準法17条)
  8. 給料日前に払ってもらえる場合がある
  9. 相談する先
  10. 引かれた分を取り戻すのは、別の話
  11. まとめ

遅刻したら3千円、ミスをしたら5千円。そういう決まりのある職場があります。これが許されるかどうかは、法律の側で2つに分かれます。

「罰金」は法律の言葉ではない

労働基準法に「罰金」という制度はありません。実際に行われているものを条文に当てはめると、次のどちらかになります。

条文扱い
あらかじめ金額を決めておく違約金16条禁じられている
就業規則にもとづく減給の制裁91条上限の範囲なら可能

上の行が16条です。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

「1年以内に辞めたら30万円」のように、起きる前に金額を決めておく形が禁じられています。研修費用の返還をめぐる争いも同じ条文で、判断のしかたは研修費用の返還を求められたときにまとめました。

罰金制度の法的な区分と、減給に関する「1回」と「総額」の二つの上限を、秤(法的な比較)、書類、コイン、カレンダー、矢印や囲みだけで表現した図のイメージ図です

減給の制裁には上限が2つある

下の行が91条です。就業規則で定めた制裁として行う場合の規定です。

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

上限が2つ並んでいます。

  • 平均賃金の1日分の半額1回の額

    何に対する上限か1回の減給ごと

  • 賃金総額の10分の1総額

    何に対する上限か一賃金支払期

平均賃金の1日分が1万円・月給30万円なら、1回5,000円までで、月に6回分まで

減給の制裁の上限(労働基準法91条)。どちらか一方ではなく、2つとも同時に掛かる

数字を入れてみます。平均賃金の1日分が1万円で、月給が30万円の場合です。

何の上限か計算上限
1回の額10,000円 ÷ 25,000円
その月の総額300,000円 ÷ 1030,000円

1回5,000円までで、月に6回分まで。 それを超える減給は91条に反します。

平均賃金は直前3か月の賃金総額を暦日数で割って出します。月給だけでなく、手当を含めた総額が基になります。

「1回」の数え方に注意する

遅刻を10回したから5万円、という計算はできません。1回ごとに上限があり、そのうえで月の総額にも上限がかかるためです。

2つの上限は同時に効きます。 片方を守ればよい、という作りではありません。

なお、遅刻や欠勤で働かなかった時間分の賃金が支払われないことは、制裁ではありません。働いていない分は発生しない、というだけの話です。91条が対象にしているのは、働いた分から引く場合です。

就業規則に書かれていなければ、そもそもできない

91条は「就業規則で……定める場合においては」と書き出しています。制裁の種類と程度は就業規則の記載事項なので、書かれていない制裁を行うことはできません。

だから確かめる順番はこうなります。

  1. 就業規則に減給の制裁の定めがあるか
  2. その定めが91条の上限の範囲内か
  3. 実際に引かれた額が、その定めどおりか

就業規則は労働者に周知されているはずのものです。見せてもらえない場合は、それ自体が別の問題になります。

制裁が複数の月にまたがる場合

1か月の総額の上限を超えてしまう額の減給が必要になったとき、翌月以降に繰り越して引く扱いになることがあります。

条文が上限を置いているのは「一賃金支払期における賃金の総額」なので、月をまたげば、それぞれの月で10分の1までという計算になります。それでも1回の額の上限は変わりません。

つまり、大きな金額を制裁として取ることは、条文の作りからしてできません。額が大きい話であれば、それは制裁ではなく損害賠償の請求という別の話になります。そちらは実際に生じた損害を示す必要があり、あらかじめ額を決めておくことは16条が禁じています。

名前が変わっても中身で判断される

「罰金」ではなく「協力金」「積立」「反省金」といった名前が使われることがあります。名前を変えても、賃金から引くのであれば同じ条文の対象です。

確かめるのは名前ではなく次の3つです。

  1. 働いた分の賃金から引かれているか
  2. 引かれる額が事前に決まっていたか
  3. 就業規則に定めがあるか

1が「はい」で2も「はい」なら16条の問題に、1が「はい」で3が「いいえ」なら91条の前提を満たしていないことになります。

給与明細で、どの項目から引かれているかを確かめてください。明細に項目が出ていない形で引かれている場合は、そこが最初の材料になります。

「1回」の数え方や複数月にまたがる扱い、相談や差額の取り戻しの流れを、虫眼鏡でカレンダーを拡大しコインが月をまたいで移動する様子と電話や返却する手のアイコンで示した図のイメージ図です

給与から引くには別の条件がある(労働基準法17条)

減給として認められる場合でも、給与から差し引くには賃金の全額払いの原則が関わります。天引きできる範囲は決まっていて、勝手に引くことはできません。

前借りとの相殺も禁じられています。

使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

「貸した分を給料から引く」という形も、条文の側で止められています。

給料日前に払ってもらえる場合がある

罰金の話から離れますが、同じ章に読者が使える規定があります。25条です。

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

出産、病気、災害などの費用に充てるために請求した場合、支払期日の前でも、すでに働いた分の賃金を支払わなければなりません。

「前借り」ではなく、すでに働いた分の前払いです。会社の都合で断れるものとしては書かれていません。

相談する先

減給や罰金に納得できない場合、行政の窓口があります。

総合労働相談コーナーは全国にあり、予約なしで無料で相談できます。線引きと使い方は退職相談は無料の公的窓口でできるにまとめました。

賃金が支払われていない場合は労働基準監督署が扱います。申告のしかたは未払い残業代は労働基準監督署に申告できるにあります。

引かれた分を取り戻すのは、別の話

監督署が行うのは是正の指導で、過去に引かれた額の返還を会社に命じるものではありません。 上限を超えて引かれていた分を返してもらうには、金額を計算して会社に請求します。

報酬を得て他人の代わりにこの請求をできるのは弁護士だけです。根拠は弁護士法72条で、運営元ごとの違いは退職代行|弁護士と労働組合の違いにまとめました。

まず無料の窓口で、自分の場合に上限を超えているかを確かめてください。 91条の2つの上限は計算すれば出るので、超えていなければ請求する先がありません。

まとめ

  • 労働基準法に「罰金」という制度はない。違約金(16条)か減給の制裁(91条)に分かれる
  • あらかじめ金額を決めておく違約金は禁じられている
  • 減給の制裁は、1回が平均賃金1日分の半額まで、総額が賃金総額の10分の1まで
  • 2つの上限は同時に効く
  • 就業規則に定めが無ければ、そもそも制裁を行えない
  • 前借金と賃金の相殺は禁じられている(17条)
  • 出産・疾病・災害の費用なら、支払期日前でも既往の労働分を請求できる(25条)

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