退職代行のデメリットを2つに分ける
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「退職代行 デメリット」で調べると、費用がかかる・会社に迷惑がかかる・転職に不利、といった話が並びます。このうち本当に困るのは一部だけです。
デメリットは2種類に分かれます。業者を選べば避けられるものと、誰に頼んでも避けられないものです。分け目は法律の側にあります。
分け目は「交渉できるか」
弁護士法72条です。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
弁護士でない者が報酬を得て法律事務を扱うことはできない、と書かれています。交渉はここに含まれます。
一方、末尾にただし書きがあります。「他の法律に別段の定めがある場合」です。労働組合法6条がその「別段の定め」にあたります。
労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。
つまり交渉できるのは、弁護士と労働組合だけです。条文のつながりは退職代行|弁護士と労働組合の違いにまとめました。

避けられるデメリット
有給が消化できない
いちばん金額の大きいデメリットがこれです。会社が「有給は認めない」と言ったとき、交渉できない業者は伝言するところまでで止まります。
20日の有給を残して辞めると、日給1万円の人で20万円です。代行の費用が3万円か5万円かという差より、こちらのほうが大きくなります。
退職日を動かせない
「引き継ぎがあるから来月末まで」と言われたときも同じです。交渉できる相手なら日付を詰められますが、そうでなければ伝えるだけになります。
未払いの残業代・退職金を請求できない
金銭の請求は法律事務そのものなので、弁護士でなければ扱えません。請求まで視野に入るなら、最初から弁護士に頼むほうが早く終わります。
どれも「誰に頼むか」で決まる
3つとも、業者の質の問題ではなく権限の問題です。安いところを選んだから交渉が下手だった、という話ではありません。運営元の見分け方は退職代行の運営元で選ぶにまとめました。
避けられないデメリット
費用がかかる
自分で言えば0円です。代行を使う以上、ここは消えません。相場は退職代行の料金にまとめました。
会社から直接連絡が来ることがある
代行から「本人に連絡しないでほしい」と伝えても、会社に連絡を禁じる法律はありません。出るかどうかは自分で決められますが、来ないようにはできません。
対処は退職代行を使っても会社から連絡は来るかにまとめました。
書類が遅れることがある
離職票や源泉徴収票は会社が出します。代行を通しても、出す義務があるのは会社のままです。遅れたときの手順は離職票が届かないときにあります。
気まずさは残る
同じ業界で働き続けるなら、辞め方を知っている人と再会することはあります。これは制度で解決する話ではありません。
避けられる
- 有給が消化できない
- 退職日を動かせない
- 未払いの残業代・退職金を請求できない
避けられない
- 費用がかかる
- 会社から直接連絡が来ることがある
- 書類が遅れる
- 気まずさが残る
分かれるのは業者の質ではなく権限。前者は運営元が弁護士か労働組合かで決まり、後者は誰に頼んでも残る
交渉できない業者が交渉してしまう場合
ここが、この分け方でいちばん実害の出るところです。
条文は「業として取り扱うことができない」と定めています。交渉の権限が無い業者が、それでも会社と条件のやりとりをしたとすると、その行為は72条が禁じている範囲に入る可能性があります。
読者の側の困りごとは、条文違反そのものより後に来ます。そうやってまとまった話は、あとから会社に「あの合意は無かった」と言われたときに、よりどころが弱くなります。 有給の日数や退職日を口約束で決めていた場合、確かめる相手がいなくなります。
だから見るのは、業者が「交渉できます」と書いているかどうかではなく、運営元が労働組合か弁護士かのほうです。ここは登記や組合名で確かめられます。確かめ方は退職代行の運営元で選ぶにまとめました。13社ぶんの特定商取引法に基づく表記を読んで、実際の運営者を並べた表は退職代行の労働組合は誰なのかにあります。
失敗の型は退職代行で失敗するときにもまとめています。
「損害賠償を請求される」は分けて考える
デメリットとして必ず挙がりますが、退職そのものを理由に賠償が認められる形にはなっていません。期間の定めのない雇用については民法627条1項があります。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
いつでも申し入れができて、2週間で終わると書かれています。辞めること自体は権利なので、そこを理由に賠償を負う組み立てにはなっていません。
研修費用の返還を求められる場合は別の論点になります。研修費用の自己負担は違法かにまとめました。
転職に不利になるか
前の会社が転職先に伝える仕組みはありません。気になる場合の考え方は退職代行を使うと転職先にバレるかにまとめました。

使わずに済むなら、そのほうが安い
デメリットを並べたうえで言えば、自分で言えるなら自分で言うのがいちばん安いです。費用も0円で、交渉の権限も自分にあります。
言い出せない事情があるとき、たとえば体調を崩している、引き止めが強い、連絡そのものが難しい、といった場合に代行の出番になります。言い方の組み立ては退職の切り出し方にまとめました。
避けられるほうを選ぶなら、運営元で見る
上で見たとおり、避けられるデメリットの大半は運営元の種別で決まります。窓口を見るときは、料金より先にそこを確かめることになります。
弁護士法人ガイア総合法律事務所は弁護士が対応します。有給消化と、離職票や源泉徴収票の取り寄せに加えて、残業代や退職金の請求まで行うと公式サイトに記載があります。
円満退職ユニオンは労働組合法人が運営しています。主な対応内容として、退職の意思の通知・退職日の調整・有給休暇の取得についての協議・最終賃金の確認・必要書類の確認を挙げています。損害賠償請求や訴訟など法律上の争いが生じている場合は弁護士への相談が適しているとしています。
料金と対応範囲を並べた比較は退職代行の窓口を運営元で選ぶ|4社比較にあります。
迷っている段階の相談先
会社とのやりとりで困っている段階なら、依頼する前に公的な窓口に相談できます。総合労働相談コーナーが各労働局・労働基準監督署に置かれていて、無料です。
窓口の一覧は退職相談ができる窓口にまとめました。
まとめ
- デメリットは避けられるものと避けられないものに分かれる
- 分け目は弁護士法72条。交渉できるのは弁護士と労働組合だけ
- 有給・退職日・未払い金は、誰に頼むかで決まる(避けられる)
- 費用・会社からの連絡・書類の遅れ・気まずさは、誰に頼んでも残る
- 「損害賠償」は民法627条1項があるので、退職そのものを理由には成立しにくい
なお、72条に触れた場合に罰を受けるのは事業者と弁護士の側です。依頼した人は条文の主語に入っていません。根拠は退職代行で逮捕されるのは誰かにまとめました。