退職で引き継ぎをしないと賠償されるか
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引き継ぎが終わっていないだけで、決まった額の違約金を払う義務は生じません。 ただし、在職中に任された仕事をどう扱ったかと、実際に損害が出たかは別に考えます。退職日が迫っているなら、引き継げる範囲を文書で残し、会社に渡す日を決めてください。
「辞められない」「給料を払わない」「賠償を請求する」と言われたときは、同じ話として受け止めず、何を求められているのかを分けます。退職の時期は民法627条1項を基にした、期間の定めがない雇用の整理です。契約期間がある人は、このまま当てはめないでください。
引き止めで出てくる言い方条文の側の答え
「引き継ぎをしないなら違約金だ」
額を先に決めておく契約はできない
労働基準法16条。実際に生じた損害の請求は別
「引き継ぎが終わるまで給料は払わない」
賃金の請求があれば7日以内
労働基準法23条。争いがあっても異議のない部分は払う
「引き継ぎが終わるまで辞められない」
期間の定めがない雇用なら、原則2週間の経過
民法627条1項。契約期間がある場合は別
退職日までに残せる引き継ぎ
完成したマニュアルを作る時間がなくても、いま止まっている仕事の一覧は残せます。案件名、次の期限、相手の連絡先、ファイルの場所、未決の判断を一行ずつ書き、会社の指定する相手へ渡します。共有してはいけない私物のアカウントや、持ち出せない顧客情報は勝手に送らず、会社の管理方法を聞いてください。
たとえば「A社の見積もりは返答待ち。金曜までに担当者へ確認。資料は社内の共有フォルダ」という具合です。どこまで渡したかが分かるメールや文書を残せば、後から自分も説明しやすくなります。病気などで作業が難しいなら、できない事情と、手元にある情報だけを伝えてください。
引き継ぎと在職中の義務(労働契約法3条4項)
「引き継ぎ」という語で退職を止める条文はありません。ただし、在職中の仕事については労働契約法の一般的な定めがあります。
労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
「信義に従い誠実に」という書き方です。引き継ぎという言葉は出てきませんが、在職中は誠実に働く関係にあることを示しています。
在職中の担当業務や就業規則を無視してよい、という意味ではありません。一方、この条文だけで退職後も無期限に働く義務があるとも言えません。
就業規則に引き継ぎが書かれていたら(労働基準法89条3号)
一方、就業規則には引き継ぎの定めが置かれていることがあります。労働基準法が、就業規則に必ず記載する事項としてこう挙げているためです。
退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
退職の手続きは、必ず記載する事項に入っています。退職時に何をするかは、手元の就業規則も確かめます。
とはいえ、就業規則に書いてあることが、そのまま賠償に結びつくわけではありません。
あらかじめ金額を決めておくことはできない(16条)
引き止めの場面で「引き継ぎをしないなら違約金だ」と言われることがあります。これは条文で禁じられています。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
あらかじめ額を決めておく契約はできません。 「引き継ぎ不履行の場合は◯万円」という取り決めは、この定めに触れます。
ただし、実際に生じた損害を請求すること自体まで禁じられているわけではありません。禁じられているのは、額を先に決めておくことです。
実際に請求が通るかは別の話
では実際の損害を請求されるとどうなるか。請求する側は、損害が生じたことと、それが引き継ぎをしなかったことによるものだというつながりを示す必要があります。
請求を受けても、その額がそのまま認められるわけではありません。会社がいう損害の内容、金額、あなたの行為との関係を分けて確かめます。事実に争いがあるなら、書面を残して専門家へ相談してください。
言葉として出てくることと、認められることは別です。損害賠償を持ち出された場面の整理は退職代行の失敗とトラブル|起きる順に整理にまとめました。
賃金を一方的に止められたら(23条)
もう1つ多いのが「引き継ぎが終わるまで給料は払わない」という言い方です。これも条文があります。
全文を開く(102字)
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
退職後の賃金の請求があれば7日以内です。引き継ぎの完了は条件になっていません。
争いがある場合の定めもあります。
前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。
争いがあるときも、異議のない部分は支払う定めです。退職手当は支払時期の定めによる場合があるため、毎月の賃金と同じ期限だと決めつけないでください。
期間の定めがない雇用なら、退職時期は別に決まる
引き継ぎの話と、辞められるかどうかは別です。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引き継ぎの完了は、退職の条件になっていません。期間の定めがない雇用では、原則として申し入れから2週間の経過で終わります。契約期間のある雇用などには別の扱いがあります。
切り出す段取りは退職は何ヶ月前に言えばいいかにまとめました。先に就業規則の「退職に関する事項」を読んでおくと、話が短く済みます。
有給消化と重なる場合
引き継ぎの期間と有給の消化がぶつかることがあります。残りを消化してから辞めると、その分だけ引き継ぎに使える日が減ります。
有給の予定も早めに伝えます。取得を断られたときの考え方は退職前の有給消化|断られたときの根拠にまとめました。
引き継ぎを理由に有給を後ろへ動かされる形もあります。時季変更権には条件があるので、そちらも同じ記事にあります。
話が進まないとき
引き継ぎを理由に退職日を延ばされる、給与を止めると言われる。そういう場面では、交渉ができる相手かどうかで打つ手が変わります。
有給や退職日の交渉が必要なら、運営元の違いを退職代行|弁護士と労働組合の違いで確かめてください。実際の賃金や賠償請求で争いになっているなら、書面を持って弁護士や公的相談窓口に相談します。
この記事で確かめたこと
- 原文から引用した文
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