介護離職と失業保険の前に、介護休業を確かめる
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家族の介護が始まると、仕事を続けられるかがすぐ問題になります。勤務先に相談しにくい事情があると、辞めるほうが早いように見えます。
その前に確かめておくことがあります。介護休業は、会社の許可を得るものではありません。
申し出ればできる
育児・介護休業法11条1項が、こう書いています。
労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。
条件が「申し出ること」だけです。承認とか、許可とか、認められた場合といった言葉は入っていません。
同じ項のただし書きが、期間を定めて雇われている人について別の条件を置いています。介護休業を始める予定の日から93日を過ぎた日から、さらに6か月を過ぎた日までに労働契約が満了することが明らかでない人に限られます。逆に言えば、そこに当たらない有期雇用の人も申し出ることができます。

上限は3回と93日
無制限ではありません。11条2項が、申し出ができなくなる場合を並べています。
前項の規定にかかわらず、介護休業をしたことがある労働者は、当該介護休業に係る対象家族が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該対象家族については、同項の規定による申出をすることができない。
並んでいるのは2つで、その対象家族について3回の介護休業をした場合と、介護休業をした日数が93日に達している場合です。
3回回数の上限
数え方対象家族1人につき
通算93日日数の上限
数え方対象家族1人につき
2つは同時に進む。父と母の両方を介護する場合のように、対象家族が別なら別に数える
対象家族ごとに数えます。父と母の両方を介護する場合、それぞれについて3回と93日があります。片方で使い切っても、もう片方は残ります。
93日を一度に使う必要もありません。3回に分けられるので、施設を探す期間、入所の手続き、容体が変わったときと、必要な場面に配分できます。
給付金は雇用保険から出る
休んでいる間の賃金は、法律で払うことになっていません。代わりに雇用保険から介護休業給付金が出ます。雇用保険法61条の4第1項です。
介護休業給付金は、被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この条において同じ。)が、厚生労働省令で定めるところにより、対象家族(当該被保険者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう。以下この条において同じ。)を介護するための休業(以下「介護休業」という。)をした場合において、当該介護休業(当該対象家族を介護するための二回以上の介護休業をした場合にあつては、初回の介護休業とする。以下この項において同じ。)を開始した日前二年間(当該介護休業を開始した日前二年間に疾病、負傷その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上賃金の支払を受けることができなかつた被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかつた日数を二年に加算した期間(その期間が四年を超えるときは、四年間))に、みなし被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、支給単位期間について支給する。
長い条文ですが、押さえるところは3つです。
まず対象家族の範囲が条文に書かれています。配偶者、父母、子、配偶者の父母です。事実婚の相手も含まれると書かれています。
次に要件です。休業を開始した日の前2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上。雇用保険に入っていた月数を数えるという意味で、失業手当の受給資格と似た形ですが、起算点が離職日ではなく休業開始日になります。
3つ目は数え方の起点で、2回以上休業した場合は初回の休業が基準になります。2回目や3回目のときに要件を数え直すわけではありません。
2年のほうが伸びることがある
引用の括弧の中に、期間を伸ばす仕組みが入っています。疾病、負傷その他の理由で引き続き30日以上賃金の支払を受けられなかった場合、その日数を2年に加算します。加算しても4年が上限です。
「その他厚生労働省令で定める理由」は施行規則101条の18が受けています。
法第六十一条の四第一項の厚生労働省令で定める理由は、次のとおりとする。
挙がっているのは、出産、事業所の休業、事業主の命による外国における勤務、教育訓練休暇、国と民間企業との間の人事交流に関する法律の交流採用、そしてこれらに準ずる理由で公共職業安定所長がやむを得ないと認めるものです。
介護のために先に休んでいて賃金が出ていなかった期間は、ここに当たりえます。 2年で数えて12か月に届かないと思っても、賃金が出なかった期間を書き出してください。基本手当(失業手当)の側にも同じ仕組みがありますが、そちらの施行規則18条には教育訓練休暇が入っておらず、挙がっている理由が違います。
同条3項の支給単位期間は、休業を開始した日から3か月を経過する日までの期間に限られます。休業として取れる93日と、給付の出る期間は同じではありません。
介護休暇は別の制度
名前が似ていて混同されやすいものがあります。介護休暇です。同法16条の5第1項。
要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(要介護状態にある対象家族が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得することができる。
こちらは1年度に5日で、対象家族が2人以上なら10日です。同条2項により、1日より短い単位でも取れます。
| 単位 | 上限 | |
|---|---|---|
| 介護休業 | まとまった期間 | 家族1人につき通算93日・3回 |
| 介護休暇 | 1日または1日未満 | 1年度に5日(家族2人以上で10日) |
通院の付き添いやケアマネジャーとの面談には、介護休暇のほうが合います。 93日を細切れに使うより、日数を残せます。同条4項により、年度は特に定めがなければ4月1日から翌年3月31日です。
介護休暇には給付金の仕組みがありません。賃金が出るかは会社の定めによるので、就業規則で確かめることになります。

辞めた場合と並べる
辞める場合は失業保険のほうになります。介護を理由とする離職は、離職理由の区分で扱いが変わることがあります。体調や家庭の事情による離職を分けている特定理由離職者という区分があり、中身は特定理由離職者は条文では2種類しかないにまとめました。
順番で見ると、2つの制度は排他ではありません。
| 続けながら | 辞めてから | |
|---|---|---|
| 使うもの | 介護休業給付金 | 失業手当(基本手当) |
| 前提 | 在職していること | 離職していること |
| 期間 | 開始から3か月まで | 所定給付日数まで |
介護休業を取ったうえで、それでも続けられずに辞める、という順番も取れます。先に辞めてしまうと、介護休業給付金のほうは使えなくなります。戻れない順番なので、辞める前に片方を試せるかを見ることになります。
会社に伝えるときに用意するもの
11条3項が、申し出のときに明らかにする事項を決めています。対象家族が要介護状態にあることと、休業の初日と末日です。
決まっているのはこの3つなので、介護の中身をどこまで説明するかは、こちらが決められます。辞める理由を細かく説明する必要がないのと同じで、制度を使うときも必要な範囲を超えて話すことにはなりません。
伝え方そのものは会社を辞めたいと言えないときと考え方が重なります。
要介護状態にあることを明らかにする方法は省令に委ねられています。証明を求められた場合に何を出すかは会社によって違うので、申し出る前に人事の担当に聞いておくと二度手間になりません。
断られたときにどうするか
申し出ればできる仕組みなので、会社に諾否の権限はありません。それでも断られることは起こりえます。
このとき言い争う前に、書面で申し出た記録を残すほうが先です。口頭でのやりとりだけだと、あとで申し出の有無そのものが争いになります。提出した日付と、休業を始める予定の日が分かる形にしておきます。
相談先は都道府県労働局の雇用環境・均等部です。労働基準監督署ではありません。育児・介護休業法を所管しているのが労働局のほうで、助言や指導を求められます。
会社が制度そのものを知らない場合もあります。条文を示すだけで話が進むことがあるので、11条1項の一文を印刷して持っていくと早く済みます。
ここまでで分かること
- 介護休業は申し出ればできる。会社の許可を条件にしていない(育介法11条1項)
- 上限は対象家族1人につき3回・通算93日。家族ごとに数える(同11条2項)
- 3回に分けられるので、必要な場面に配分できる
- 給付金の要件は、休業開始前2年間にみなし被保険者期間12か月以上(雇保法61条の4第1項)
- 給付が出る期間は開始から3か月までで、93日と同じではない
- 先に辞めると介護休業給付金は使えない。順番が戻せない