特定理由離職者は条文では2種類しかない
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特定理由離職者を調べると、病気・出産・介護・配偶者の転勤といった理由がずらりと並んだ一覧が出てきます。条文を開くと、そこまで細かくは書かれていません。
省令には2つしか書いていない
範囲を決めているのは雇用保険法施行規則の19条の2です。
法第十三条第三項の厚生労働省令で定める者は、次のいずれかの理由により離職した者とする。
続く号は2つだけです。
- 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、更新がないこと(更新を希望したのに合意に至らなかった場合に限る)
- 法33条1項の正当な理由
病気や介護の一覧は、2号の「正当な理由」の中身として行政が示している基準です。省令の条文そのものではありません。 だから一覧に自分の事情が見当たらなくても、そこで終わりではありません。33条1項の正当な理由に当たるかどうかで判断されます。

1号には条件が付いている
法13条3項の本文も見ておきます。
前項の特定理由離職者とは、離職した者のうち、第二十三条第二項各号のいずれかに該当する者以外の者であつて、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないこと(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかつた場合に限る。)その他のやむを得ない理由により離職したものとして厚生労働省令で定める者をいう。
括弧の中が効いてきます。契約が満了して終わったというだけでは足りず、本人が更新を希望していたことが条件です。
自分から更新しないと申し出た場合は、この号には当たりません。だから契約満了で辞めるときは、更新を希望したかどうかをどこかに残しておくことになります。更新の意思を伝えた記録が無いと、離職票の理由が変わることがあります。
効果は受給資格の要件が緩むこと
該当すると何が変わるのかは法13条2項にあります。変わるのは、さかのぼって見る期間と、必要な被保険者期間(雇用保険に入っていた月数)の2つです。1項を読み替える形で、次のように入れ替わります。
原則
- 算定対象期間は離職前2年間
- 必要な被保険者期間は通算12か月以上
特定理由離職者
- 算定対象期間は離職前1年間
- 必要な被保険者期間は通算6か月以上
どちらも半分になる。短く働いて辞めた人が受給資格に届くかどうかが、ここで変わる
短く働いて辞めた人が受給資格に届くかどうかが、ここで変わります。勤めた期間が7か月なら、原則では足りませんが、特定理由離職者なら要件を満たします。
受給要件そのものの数え方は失業給付の受給要件にまとめました。
特定受給資格者とは別のもの
名前が似ていますが、根拠も効果も違います。片方は受給資格の要件、もう片方は所定給付日数(何日分もらえるか)に効きます。
| 特定理由離職者 | 特定受給資格者 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 法13条3項・規則19条の2 | 法23条2項・規則36条 |
| 効果 | 受給資格の要件が緩む | 所定給付日数が増える |
特定受給資格者の理由は規則36条に11号あり、解雇、労働条件が事実と著しく相違したこと、賃金の3分の1を超える額の未払い、過重な時間外労働、退職勧奨などが並びます。8号のハラスメントについてはパワハラで退職したら会社都合退職になるかで防止義務の条文と並べました。こちらは所定給付日数が法23条1項の表で計算され、年齢と算定基礎期間で最大330日になります。
会社都合で辞めたときに何が変わるかは会社都合退職のデメリットはあるかに分けました。
給付制限が掛からない理由
自己都合で辞めると、法33条1項により1か月以上3か月以内の給付制限が付きます。条文は「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」と書いています。
規則19条の2の2号は、その「正当な理由」がある場合を指しています。だから2号に当たる人には、そもそも33条1項が適用されません。 給付制限が解除されるのではなく、最初から掛からないという形です。
1号(契約満了)のほうは自己都合退職ではないので、こちらも33条1項の対象になりません。
どう判断されるかも、同じところに寄せられています。 ハローワークインターネットサービスの範囲のページに、2号についてこう書かれています。
給付制限を行う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。
2号に当たるかどうかを決める物差しと、給付制限が掛かるかどうかを決める物差しは同じ、ということです。だから2つを別々に用意する必要はありません。 自分の事情がどちらの側かを、1つの基準で見ることになります。

所定給付日数は原則のまま
所定給付日数は、要件が緩むぶん増えると読まれがちですが、そこは別です。特定理由離職者の日数は原則どおり法22条で決まり、算定基礎期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。年齢では変わりません。
特定受給資格者のほうは法23条1項の表で、たとえば45歳以上60歳未満で算定基礎期間20年以上なら330日になります。同じ「会社の都合に近い辞め方」でも、日数の扱いはここで分かれます。
ただし1号(契約満了で更新なし)に当たる人には、期限つきの措置があります。ハローワークインターネットサービスの基本手当(いわゆる失業手当)のページにこう書かれています。
なお、「特定理由離職者の範囲」の1に該当する方については、受給資格に係る離職の日が平成21年3月31日から令和9年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。
離職の日が令和9年3月31日までに入っているかどうかで分かれます。「当分の間」と説明されることがありますが、案内には終わりの日が書かれています。2号(自己都合のうち正当な理由があるもの)はこの措置の対象ではありません。
自分がどちらで計算されているかは、受給資格者証に書かれた離職理由コードと所定給付日数を見れば分かります。
2号に当たりそうなときに確かめること
33条1項の正当な理由は、条文には「正当な理由」としか書かれていません。中身は厚生労働大臣の定める基準に従ってハローワークが認定します。同条2項がそう定めています。
だから同じ事情でも、資料が揃っているかで結果が変わりえます。体調を理由にするなら受診の記録、家族の事情なら要介護認定や転勤の辞令のように、第三者が作った書類があるかどうかで説得力が変わります。
自分の申し立てだけで通すのは難しいので、辞めると決めた時点で何が手に入るかを確かめておきます。
家族の介護が理由なら、辞める前に使える制度が別にあります。介護休業は申し出れば取れて、雇用保険から給付金も出ます。先に辞めるとそちらは使えなくなるので、順番は介護離職と失業保険の前に確かめることにまとめました。
判断するのは自分ではない
離職票に書かれた理由は会社が記載したものです。特定理由離職者に当たるかどうかを決めるのはハローワークで、本人が申し立てて理由が変わることがあります。
そのときに効くのが記録です。契約更新を希望したメール、体調の診断書、家族の介護の証明など、2号の正当な理由を裏づけるものは、辞める前に集めておくほうが確実です。辞めてから会社に出してもらうのは難しくなります。
まとめ
- 省令の条文は2号だけ。細かい理由の一覧は2号の中身
- 1号は「更新を希望したのに」が条件
- 効果は算定対象期間1年・被保険者期間6か月への読み替え
- 特定受給資格者は別の条文で、効果は給付日数のほう
- どちらも給付制限は掛からない
- 判断はハローワーク。裏づけの記録は辞める前に集める