会社都合退職のデメリットはあるか
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会社都合で辞めることになったとき、「会社都合だと不利になる」という話を目にします。転職で見られる、住宅ローンに響く、といった形で語られます。
公的な資料でデメリットを探しましたが、見つかりませんでした。 代わりに出てきたのは、保険料が下がる制度のほうでした。このページはその中身を確認します。
探して出てきたのは軽減のほう(国民健康保険法施行令29条の7の2)
国民健康保険法施行令に、対象者を定めた規定があります。
前項に規定する特例対象被保険者等とは、都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険の被保険者又は特定同一世帯所属者のうち次の各号のいずれかに該当する者(これらの者の雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第十四条第二項第一号に規定する受給資格(以下この項において「受給資格」という。)に係る同法第四条第二項に規定する離職の日の翌日の属する年度の翌年度の末日までの間にある者に限る。)をいう。
長い一文ですが、押さえるのは末尾の限定です。離職の日の翌日が属する年度の、その翌年度の末日までが対象期間になります。
該当する人は、続く2つの号に書かれています。
雇用保険法第二十三条第二項に規定する特定受給資格者
雇用保険法第十三条第三項に規定する特定理由離職者であつて受給資格を有するもの
倒産や解雇で辞めた人と、雇止めなど正当な理由のある離職の人です。会社都合で辞めたこと自体が、この制度に入る条件になっています。
同じ施行令は、この人たちの保険料を計算するとき、前年の給与所得をその100分の30として扱うと定めています。所得が3割として計算されるので、保険料はその分だけ小さくなります。

どれくらい変わるか
渋谷区の案内は、計算の扱いをこう書いています。
軽減措置の対象となるのは、非自発的失業者本人の前年の給与所得のみです。
対象は給与所得だけです。 同じ人の営業所得や不動産所得は減りませんし、同居する家族の所得も減りません。世帯の中で、本人の給与部分だけが3割として扱われます。
自治体側は、下がらない場合があることも明記しています。
給与所得を30パーセントにして保険料を計算しても、給与所得、その他の所得や他の世帯員の所得の金額によっては、保険料が軽減されない場合があります。
必ず安くなるわけではありません。 世帯の他の所得が大きければ、本人の給与所得を3割にしても保険料の区分が動かないことがあります。
本人の給与所得
- 前年の分を100分の30として計算する
本人のその他の所得・世帯の他の人の所得
- そのまま計算する
- 額によっては保険料が下がらないこともある
下がるかどうかは離職の理由ではなく、世帯の中でどの所得が大きいかで決まる
自動では適用されない
ここが取りこぼしやすいところです。
軽減の適用を受けるには届け出が必要です。
黙っていても下がりません。 国民健康保険の加入手続きとは別に、軽減の届け出が要ります。加入だけ済ませて安心すると、そのまま高い保険料を払うことになります。
判定に使う書類も具体的に示されています。
雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の離職理由コードが、11・12・21・22・31・32(特定受給資格者)、23・33・34(特定理由離職者)のいずれかである。
離職理由コードで機械的に決まります。 会社が離職票に何と書いたかではなく、ハローワークが確定させたコードを見ます。順序としては、先にハローワークで受給資格の手続きを済ませ、そのうえで市区町村の窓口へ行くことになります。
なお、これは渋谷区の案内です。手続きの窓口や必要書類は市区町村ごとに違うので、住んでいる自治体のページで確認してください。 根拠になっている施行令は全国共通です。
前年の所得で計算されることの意味
国民健康保険料が前年の所得で決まる点も、あわせて押さえておく必要があります。辞めた直後は収入が無くても、保険料は働いていた年の所得で計算されます。収入がゼロなのに在職中と同じ水準の請求が来ることになります。
軽減はここに効きます。前年の給与所得を3割として扱うので、働いていた年の所得で計算される部分が小さくなり、実際の状況に近づきます。逆に言えば、この制度を知らないまま届け出をしないと、収入が無い時期に最も高い保険料を払うことになります。
対象期間が「翌年度の末日まで」と長めに取られているのも、前年所得での計算が2年度にまたがるためです。離職した年度と、その次の年度の両方が入ります。手続きを1回すれば期間の終わりまで続くので、後から思い出して出すより先に出すほうが取りこぼしません。

給付日数のほうも増える
保険料とは別に、失業給付でも扱いが変わります。特定受給資格者(倒産や解雇で辞めた人)になると所定給付日数(何日分もらえるか)が長くなり、給付制限も付きません。
区分がどう決まるのか、離職票に自己都合と書かれていた場合にどうするのかは離職理由は会社の記載で決まらないに整理しました。判定するのは会社ではなくハローワークです。
給付額の計算そのものは失業給付はいくらもらえるかにあります。
では、言われているデメリットは何か
よく挙がるのは「転職の選考で不利になる」というものです。これを裏づける公的な資料は見つかりませんでした。
面接で退職理由を聞かれること自体はありますが、それは自己都合でも同じです。聞かれ方と答え方の問題であって、区分そのものが評価を決めるという根拠は無いということになります。伝え方の組み立ては面接で退職理由をどう伝えるかにあります。
住宅ローンなどへの影響も同様で、公的資料に記載を見つけられませんでした。書けない理由のほうを書いておきます。 見つからなかったものを「無い」と断定はできませんが、少なくとも制度として定められた不利益は確認できませんでした。
実際に注意が要るところ
制度上の不利益ではありませんが、順序の問題は残ります。
会社都合の場合、辞める日を自分で選べないことが多くなります。保険や年金の切替は退職日から日数で数えるので、準備の時間が短くなります。期限は退職後の健康保険と年金|20日と14日に整理しました。
任意継続を選ぶ場合、この軽減は使えません。軽減は国民健康保険の制度なので、比べるときは「任意継続の保険料」と「軽減後の国民健康保険料」を並べることになります。先に軽減後の金額を市区町村で試算してもらうと、判断が早く終わります。
まとめ
- 会社都合のデメリットは、公的資料には見つからなかった
- 見つかったのは国民健康保険料の軽減のほう
- 対象は特定受給資格者と、受給資格のある特定理由離職者(契約が更新されなかったなど、やむを得ない理由で辞めた人)
- 期間は離職の日の翌日が属する年度の、翌年度の末日まで
- 前年の給与所得を100分の30として計算する
- ただし本人の給与所得のみが対象で、世帯の他の所得次第では下がらないこともある
- 届け出が要る。 加入手続きだけでは適用されない
- 判定は離職理由コード。先にハローワーク、次に市区町村
不利かどうかを心配するより、軽減の届け出を出すほうが金額として大きく効きます。
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