退職代行にクーリングオフの条文は無い
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申し込んだあとで気が変わることがあります。クーリングオフでやめられるのか、というのが最初に出てくる問いです。条文と消費者庁の表記は中黒を入れた「クーリング・オフ」で、以下はその形で書きます。条文から順に見ると、答えは申し込んだ場所で分かれます。
ネットや電話で申し込むと通信販売にあたる(特定商取引法2条2項)
まず、どの類型に入るかです。特定商取引法2条2項が通信販売を定めています。
この章及び第五十八条の十九において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
役務の提供も入っています。退職代行は有償の役務なので、サイトのフォームやLINEから申し込めば、この形に当てはまります。

ところが通信販売の解除は、商品と特定権利だけ(15条の3)
通信販売にも8日間の解除の条文があります。特定商取引法15条の3第1項です。
通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該特定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。
読むところは主語です。「商品又は特定権利」と書いてあって、役務が入っていません。 2条2項では役務も通信販売に含めていたのに、解除の条文のほうは商品と特定権利に絞られています。
つまりネットで申し込んだ退職代行には、特定商取引法の解除の条文が働きません。返金やキャンセルができるかどうかは、その事業者の規約で決まることになります。
事務所の外で申し込んだ場合は別(9条)
同じ法律でも、訪問販売のほうは役務が対象に入っています。特定商取引法9条1項は、営業所等以外の場所で役務提供契約の申込みを受けた場合などについて、書面または電磁的記録で申込みの撤回や解除ができるとしています。
効力が生じる時点も条文にあります。同条2項です。
申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。
届いた時ではなく、出した時です。期間の終わりに近いときはここが効いてきます。ただし退職代行の申し込みは、ふつうサイトやLINEからなので、こちらには当たりません。
特定継続的役務にも入っていない(41条2項)
長く続く役務には、別のクーリング・オフの仕組みがあります。特定商取引法41条2項が定義です。
この章並びに第五十八条の二十二第一項第一号及び第六十七条第一項において「特定継続的役務」とは、国民の日常生活に係る取引において有償で継続的に提供される役務であつて、次の各号のいずれにも該当するものとして、政令で定めるものをいう。
政令で定めるものなので、指定されていない役務は入りません。施行令の別表第四に挙がっているのは、皮膚を清潔にし美化する施術、美容を目的とした医学的処置、語学の教授、入学試験に備える学力の教授、補習のための学力の教授、電子計算機やワードプロセッサーの操作の教授、そして結婚を希望する者への異性の紹介です。
退職代行はここにありません。だからこの章のクーリング・オフも使えません。
通信販売の解除(15条の3)
- 対象は商品と特定権利
- 役務は入っていない
- サイトやLINEからの申し込みはここ
訪問販売の撤回(9条)
- 役務提供契約も対象
- 通知を発した時に効力を生じる(9条2項)
- 営業所等以外の場所で申し込んだ場合
特定継続的役務(41条2項)
- 政令が指定した役務だけ
- 施行令の別表第四に退職代行は無い
分かれ目は申し込んだ場所と類型で、金額でも期間でもない

規約を出す義務のほうは、役務にもかかっている(11条)
解除の条文からは外れていますが、広告の表示義務のほうは役務も対象です。特定商取引法11条が、通信販売の広告に表示すべき事項を各号で挙げています。その5号がこれです。
商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項
役務提供契約と書かれています。同じ条には、役務の対価、その支払の時期と方法、役務の提供時期も並んでいます。つまり退職代行の事業者も、申し込みの撤回や解除についてどう扱うのかを、広告に表示しなければならない立場にあります。
ただし同条にはただし書きがあって、請求すれば遅滞なく書面か電磁的記録を渡す旨を表示している場合には、一部を表示しないことができます。 サイトに書いていない事業者に当たったら、この形かどうかをまず見ることになります。書いていないのに請求の案内も無いなら、そこがそのまま判断材料になります。
読者の側でできるのは、申し込む前に次を探すことです。
- 役務の対価と、その支払の時期と方法
- 役務の提供時期(いつから動いてくれるのか)
- 申し込みの撤回や解除をどう扱うか
3つ目が見つからないときに、請求すれば書面をもらえる旨の表示があるかを見ます。どちらも無ければ、条文が求めている表示が足りていないことになります。
使えるのは規約と、消費者契約法のほう
法定の解除権が無い以上、見るのは申し込む前の規約です。返金の条件が書いてあるか、着手のあとはどうなるかを確かめておきます。
規約に解約料の定めがある場合でも、上限の考え方は消費者契約法にあります。実際の請求に納得できないときは、消費者ホットライン188に相談できます。
料金の書かれ方と、表示額の外に出てくる費用は退職代行の料金は表示額の外を見るに9社ぶん並べました。うまくいかなかったときに何が起きるかは退職代行が失敗するとどうなるかにあります。
申し込む前に決めておくこと
- 返金の条件が規約に書いてあるか
- 着手の前と後で扱いが変わるか
- 連絡が取れなくなったときの窓口はどこか
運営元の種別によって、そもそもできることが違います。見分け方は退職代行の運営元を確かめるにまとめました。
まとめ
- ネットやLINEからの申し込みは通信販売にあたる(特定商取引法2条2項。役務も入る)
- ところが通信販売の解除の条文(15条の3)は商品と特定権利だけを対象にしている
- だから退職代行には、特定商取引法の解除の条文が働かない
- 事務所の外で申し込んだ場合は訪問販売の側(9条)になり、役務も対象に入る
- その撤回は、通知を発した時に効力を生じる(9条2項)
- 特定継続的役務は政令で指定されたものだけで、退職代行は入っていない(41条2項)
- 返金の可否は事業者の規約で決まる
申し込む前に、規約の返金の条件を読んでください。 条文の側に戻れる道が用意されていない類型です。