退職理由を面接でどう伝えるか|聞かれる範囲
退職理由は「聞かれてよいこと」に入る
転職の面接で退職理由を聞かれるのは、避けられないと考えておいたほうが現実的です。前の仕事で何をして、なぜ辞めたのかは、応募者の適性や能力を判断する材料として扱われるためです。
一方で、面接で聞かれること全部に答える義務があるわけではありません。厚生労働省は、採用選考で配慮すべき事項として、応募者の適性・能力に関係のない事項を採用基準にしないという考え方を示しています。
本籍や出生地を採否に影響させることなく、本人の適性・能力に基づいた採用基準とする
この線引きを知っておくと、「答えるべき質問」と「答えなくてよい質問」を切り分けられます。準備すべきなのは前者だけです。
聞いてはいけないとされている事項
厚生労働省の公正採用選考特設サイトは、就職差別につながるおそれがある事項を具体的に挙げています。採用選考の方法として問題があるとされているものには、次が含まれます。
身元調査などの実施
本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
また、把握すべきでない事項として、本籍・出生地、住宅状況、家族に関すること、生活環境・家庭環境、宗教、支持政党、購読新聞や愛読書、労働組合などの社会運動に関することが挙げられています。
つまり、家族構成や実家の場所、支持政党を聞かれた場合、それは答えを用意しておくべき質問ではありません。 話をそらしても、選考上の不利を自分の落ち度として抱え込む必要はない領域です。
なお、これは「聞かれたら通報すべき」という話ではありません。実際の面接では線引きが曖昧なまま雑談として出てくることもあります。知っておく意味は、準備の対象を絞れることにあります。
前職への確認は「身元調査」にあたり得る
前の会社に問い合わせて退職の経緯を確認する、いわゆる前職調査は、上に挙げた身元調査に該当し得る行為として扱われています。
退職代行を使ったことが転職先に伝わるかを心配する人は多いのですが、この点は退職代行を使ったことは転職先にバレる?で、提出書類ごとに何が記録されるのかを整理しています。この記事では「聞かれたときに何を話すか」だけを扱います。
答え方の組み立て方
退職理由の答えは、3つの要素で組み立てると破綻しにくくなります。
- 事実 — 実際に何があったか
- 自分がどう動いたか — その状況で何を試したか
- 次に何を求めているか — 応募先で実現したいこと
多くの人がつまずくのは 1 だけを話してしまう点です。「残業が多かった」「人間関係が合わなかった」で止まると、環境のせいにしている印象だけが残ります。2 と 3 まで揃えると、同じ事実でも判断材料として機能します。
例:残業が理由の場合
事実だけの答えはこうなります。
残業が多く、体力的に続けられませんでした。
3要素に分けるとこうなります。
月の残業が慢性的に多い状態が続いていました。作業の棚卸しをして自動化できる部分を提案しましたが、人員配置の問題が大きく、改善に至りませんでした。次は業務改善の提案が通る環境で働きたいと考えています。
内容を盛る必要はありません。やったことをそのまま順番に並べるだけで、印象は変わります。
例:人間関係が理由の場合
人間関係は説明が難しい理由の代表格です。個人の批判にすると、応募先は「同じことをうちでも言うのでは」と受け取ります。
避けたいのは、特定の人物の言動を詳しく描写することです。代わりに、仕事の進め方の噛み合わなさとして表現すると、事実を曲げずに済みます。
案件の優先順位を決める仕組みがなく、都度の判断で動く進め方でした。自分としては基準を明文化して共有したかったのですが、合意を取るのが難しい状況でした。
退職代行を使った場合をどう扱うか
退職代行を利用したこと自体を、面接で自分から説明する必要はありません。聞かれてもいない経緯を話すと、そこが話題の中心になります。
聞かれた場合も、答えるべきは「なぜ辞めたか」であって「どう辞めたか」ではありません。手段の話に踏み込まれたときは、辞める意思を伝えられない状況にあったことを事実として述べれば足ります。
嘘をつく必要はありません。経歴を偽ると、後で解雇の理由として扱われる可能性が出てきます。話す範囲を選ぶことと、事実と違うことを言うことは別です。
在職中に条件を整えてから辞める選択肢
ここまでは辞めた後の話ですが、辞める前にできることが残っている場合があります。
有給が残っているなら、消化してから退職日を設定できます。退職日を月末にするか月初にするかで、社会保険料の負担も変わります。これらは辞める前に決める必要があり、後から取り戻せません。
会社との調整が難しく、自分で交渉できる状況にないなら、交渉できる窓口に相談する方法があります。報酬を得る目的で法律事務を扱うことは弁護士法72条で制限されているため、民間業者は会社との交渉ができません。労働組合と弁護士は、有給や退職日について会社と交渉できます。
辞めるタイミングと手続きの全体像は仕事を辞めてから転職するか、在職中に動くかで扱っています。
準備しておく答えは3つで足りる
面接ごとに答えを作り直す必要はありません。次の3つを用意しておけば、大半の質問はこの範囲に収まります。
| 質問 | 用意しておくこと |
|---|---|
| なぜ辞めたのか | 事実・自分が試したこと・次に求めるもの |
| なぜこの会社なのか | 前職で足りなかったものと、応募先で得られるものの対応 |
| ブランクの期間は何をしていたか | 手続きや療養も含め、実際に使った時間 |
3つ目は、離職期間がある人ほど聞かれます。取り繕う必要はなく、実際にしていたことを述べれば足ります。転職活動そのものに時間を使っていたなら、それが答えになります。
答えを一人で組み立てなくてもよい
ここまでは自分で準備する前提で書きましたが、退職理由の説明は第三者に一度聞いてもらうと精度が上がります。自分では言い訳に聞こえないか判断しにくいためです。
転職エージェントの面談は、この用途に使えます。求人紹介が目的の場では、応募先に何がどう伝わるかを前提にした反応が返ってきます。
ただしエージェントには対象年齢が決まっているところがあります。 対象外だと申し込んでから断られることになるので、先に確認してください。
まとめ
- 退職理由は適性・能力の判断材料として扱われるため、聞かれる前提で準備する
- 家族・本籍・支持政党などは、厚生労働省が把握すべきでない事項として挙げている
- 前職への問い合わせは身元調査にあたり得る行為として扱われている
- 答えは「事実・自分が試したこと・次に求めるもの」の3要素で組み立てる
- 退職代行を使ったことを自分から説明する必要はない。ただし経歴を偽らない
- 有給や退職日は辞める前にしか決められない。後から取り戻せない
採用選考で不適切な取り扱いを受けたと感じた場合は、ハローワークや都道府県労働局が相談窓口になります。