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休業補償は労災の給付で、休業手当とは別の制度

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この記事の見出し(9)
  1. どちらの制度か
  2. 4日目から、60%
  3. 最初の3日間は会社が払う
  4. 給付基礎日額は平均賃金
  5. 20%は申請しないと出ない
  6. 退職しても止まらない
  7. 年金と重なると減る
  8. 会社が労災だと認めない場合
  9. まとめ

「休業補償」と「休業手当」は名前が近いのですが、別の制度です。

休業補償は労災、休業手当は労働基準法26条で、条文も金額の出し方も違います。先にどちらの話かを分けます。

どちらの制度か

休業補償給付

  • 労災保険法14条1項
  • 仕事が原因のけがや病気
  • 払うのは政府(労働基準監督署)

休業手当

  • 労働基準法26条
  • 会社の都合で休まされた
  • 払うのは会社

違うのは休んだ原因。仕事が原因なら前者、会社の都合なら後者

名前が似ている2つは、根拠も場面も払う相手も違う

会社都合の休業のほうは休業手当は平均賃金の60%以上にまとめました。このページは労災のほうです。

休業手当と労災の休業補償という別の制度を、最初の短い期間を事業主が負担するブロックと、四日目から始まる労災の給付の流れに分けて矢印で示し、労災側に給付の上乗せを示すコインや保護を表す盾のアイコンで制度の違いを視覚化したイメージ図です

4日目から、60%

労災保険法14条1項です。

休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。

分かることを挙げます。

  1. 支給は4日目から。最初の3日間は出ない
  2. 額は給付基礎日額の60%

「労働することができないために賃金を受けない日」なので、働けない状態であることと、その日の賃金が出ていないことの両方が要ります。

最初の3日間は会社が払う

出ない3日間はどうなるのか、という話になります。ここは労働基準法76条1項に書かれています。

労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

使用者に補償の義務があります。労災保険の給付と同じ60%です。

労災保険があるのに使用者の義務も残るのか、という疑問が出ますが、これは84条1項が整理しています。

この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

労災保険から給付されるべき部分について、使用者は責任を免れます。労災保険が給付しない最初の3日間は、免れる対象に入りません。

だから待期の3日間は会社に請求できます。

給付基礎日額は平均賃金

60%を掛ける相手が何なのかも、条文で決まっています。労災保険法8条1項です。

給付基礎日額は、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額とする。

労働基準法12条の平均賃金は、直前3か月に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で割ったものです。労働日数ではありません。

月給の人にとっては、ここで金額が下がります。月給30万円なら1日1万円ではありません。3か月で90万円を約90日で割ります。結果は1万円前後ですが、休日を含めて割る分だけ日給より低くなります。同じ計算のしかたは休業手当の側で詳しく書きました。

休んだ期間は計算から外れる

長く休むと平均賃金が下がっていくのではないか、という心配が出ます。労働基準法12条3項が、算定の期間から控除するものを並べていて、1号が「業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間」です。

休業した期間と、その期間の賃金は、両方とも計算から外します。分子と分母の両方から抜くので、休んだせいで平均賃金が下がることはありません。

同じ項の2号は産前産後の休業、3号は使用者の責めに帰すべき事由による休業、4号は育児休業と介護休業、5号は試みの使用期間です。

一部だけ働いた日の扱い

途中から半日だけ出られるようになった、という日もあります。14条1項のただし書が部分算定日と呼んでいて、給付基礎日額からその日に支払われた賃金を引き、残りの60%を出します。

働いた分の賃金がまるごと差し引かれるのではなく、差額に60%を掛けるので、少しでも働いたほうが手取りは増えます。

20%は申請しないと出ない

ここがいちばん取り逃しやすいところです。

よく「労災なら80%出る」と言われますが、法律が定めている休業補償給付は60%です。残りの20%は休業特別支給金という別の枠で、労働者災害補償保険特別支給金支給規則3条1項が「その申請に基づいて支給する」と定めています。

つまり申請しなければ60%のままです。

休業補償給付の請求書には特別支給金の申請欄が組み込まれています。だから一緒に出せることが多いのですが、制度としては別のものです。書類を出すときは、20%の欄が埋まっているかを確かめてください。

同じ規則の2条は、特別支給金を8種類挙げています。休業のほかに障害・遺族・傷病にも同じ形の枠があります。

退職しても給付が止まらないこと、年金と重なると給付額が減ること、会社が労災と認めない場合に行政へ申請する流れを、出口を通り過ぎる矢印、重なったコインの縮小、建物の否定と行政機関への矢印で示したイメージ図です

退職しても止まらない

労災の給付を受ける権利は、辞めても変わりません。条文と時効の数え方は労災の権利は退職しても変わらないにまとめました。

働けない状態が続いていれば、退職後の期間も休業補償給付の対象になります。一方で、働ける状態ではないため失業給付の要件は満たしません。どちらを先に受けるかという話ではなく、状態で決まります。

年金と重なると減る

同じ事由で厚生年金保険の障害厚生年金や、国民年金の障害基礎年金を受けられる場合は、休業補償給付の額が調整されます。14条2項がそう定めていて、率は政令で決まります。

両方を満額では受け取れません。先に知っておくと、支給額の通知を見たときに慌てずに済みます。

会社が労災だと認めない場合

労災かどうかを決めるのは会社ではなく労働基準監督署です。会社が証明を渋る場合も、請求書は本人が出せます。

監督署に何を持ち込めるかは労働基準監督署への相談と、申告は別のものに分けて書きました。相談と申告は扱いが違います。

まとめ

  • 休業補償は労災、休業手当は労働基準法26条。別の制度
  • 労災の休業補償給付は4日目から、給付基礎日額の60%(労災保険法14条1項)
  • 最初の3日間は使用者が補償する(労働基準法76条1項)。84条1項で労災の給付分だけ免れる
  • 給付基礎日額は労働基準法12条の平均賃金。総日数で割る
  • 20%の休業特別支給金は申請に基づいて支給される。出さなければ60%のまま
  • 休業した期間は平均賃金の算定から外れる(労働基準法12条3項1号)ので、休んでも下がらない
  • 同じ事由で障害年金を受けられるときは調整される(労災保険法14条2項)
  • 退職しても権利は変わらない

出典