休業手当とは|平均賃金の60%以上
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シフトを削られた日や、仕事が無いからと休まされた日に、賃金がまったく出ていないことがあります。条文では、出さなければならない場合が決まっています。
条文は労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
短い条文ですが、要点は3つに分かれます。会社側に理由があること、休業であること、平均賃金の60%以上であることです。

「会社の責め」の範囲
天災のように誰にも止められない事情は入りません。一方で、受注が減った、材料が届かない、機械が壊れた、といった経営上の理由は入ります。
経営が苦しいことは免除の理由になりません。資金繰りの都合で休ませるのは、条文でいう会社側の事情です。
シフト制で「今週は入れない」と言われた場合も、契約上の所定労働日を会社の都合で削ったのなら同じ扱いになります。もともと所定労働日でなかった日は休業ではありません。
平均賃金は月給の6割ではない
ここを取り違えると金額が合いません。平均賃金の定義は労働基準法12条1項です。
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。
割るのは労働日数ではなく総日数、つまり暦の日数です。土日も数に入るので、1日あたりの額は日給より小さくなります。
総日数で割る(平均賃金)
- 1万円
労働日60日で割る(日給の感覚)
- 1万5,000円
違うのは分母。平均賃金は土日も数に入るので、1日あたりの額は日給より小さくなる
この例で休業手当の下限は1万円の60%で6,000円です。日給の60%である9,000円ではありません。
日給制や時給制の人には12条1項1号に最低保障があり、労働した日数で割った額の60%を下回らないことになっています。
休業した期間は計算から外れる
12条3項に、平均賃金を計算するときに期間と賃金から控除するものが並んでいます。その3号が「使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間」です。
長く休業させられても、その期間は平均賃金の計算から抜かれます。休業が続くほど平均賃金が下がっていく、という形にはなりません。
休業補償とは別のもの
名前が似ていますが根拠が違います。
| 休業手当 | 休業補償 | |
|---|---|---|
| 条文 | 労働基準法26条 | 労働基準法76条 |
| 場面 | 会社の都合で休ませたとき | 仕事が原因のけがや病気で働けないとき |
| 額 | 平均賃金の60%以上 | 平均賃金の60% |
仕事中のけがなら労災保険から給付が出るので、そちらは会社が直接払う場面が限られます。4日目から出ることと、最初の3日間は会社が払うことは休業補償は労災の給付で、休業手当とは別の制度に分けました。仕事が原因でない病気で休むときは、健康保険の傷病手当金のほうになります。条件は傷病手当金は退職後も受けられるかにまとめました。
払われないときに請求できるもの
26条に違反した場合、未払分に加えて同額を請求できる規定があります。労働基準法114条の付加金です。
裁判所が労働者の請求により、未払金のほかに同一額の支払を命ずることができる、という形になっています。命じるかどうかは裁判所の判断です。
請求できる期間は条文本文では5年ですが、附則143条により当分の間は3年に読み替えられています。残業代の請求が3年になったのと同じ規定です。
60%を超える定めがあることもある
条文は「百分の六十以上」なので、下限を示しているだけです。就業規則や労働協約で100%と定めていれば、そちらが優先されます。
自分の会社がどうなっているかは就業規則の休業の項を見ます。定めが無ければ26条の60%が下限になります。
一部だけ働いた日の扱いも決まっていて、その日の賃金が平均賃金の60%に届かなければ、差額を休業手当として支払うことになります。午前だけ働いて午後は帰された日が、これに当たります。
有給を使わせる形は認められない
休業させる日に年次有給休暇を充てるよう言われることがあります。有給を取る日を決めるのは労働者なので、会社が一方的に指定することはできません。
労働基準法39条5項です。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
ただし書きで会社にできるのは、時季を他に移すことだけです。 労働者が請求していない日に会社の側から有給を割り当てることは、この条文からは出てきません。移す先はあっても、始める側は労働者です。
会社の都合で休ませる日を有給で埋めると、本来払うべき休業手当を払わずに済ませたうえ、労働者の有給が減るという二重の不利益になります。
有給の残日数や消化の考え方は退職前の有給消化にまとめました。

雇用調整助成金が出ていても額は変わらない
会社が雇用調整助成金を受け取っている場合があります。これは会社が受け取る助成であって、労働者への手当の下限を動かすものではありません。
助成金が出ているのに休業手当が60%のままでも、条文上は違反になりません。逆に、助成金が出ないからといって60%を下回ってよいことにもなりません。
金額の根拠は就業規則と26条の側にあります。会社の受給状況を確かめても、自分が受け取る額の判断材料にはなりません。
手当にも税と社会保険がかかる
休業手当は賃金として扱われるので、所得税が源泉徴収され、社会保険料や雇用保険料の対象にもなります。給付ではないので、非課税にはなりません。
年末調整や確定申告のときは、給与の一部として源泉徴収票の支払金額に入ります。どの欄に何が入るかは源泉徴収票の見方にまとめました。
記録は会社に残っている
賃金台帳を作ることは108条で義務づけられていて、109条が労働者名簿・賃金台帳・賃金その他の重要な書類を5年間保存するよう定めています。
自分の手元に給与明細が無くても、会社側には記録があります。話し合いで出てこない場合、監督署へ相談する道があります。手順は労働基準監督署への相談に分けました。
辞めるかどうかの判断材料として
休業手当が出ていない状態が続くなら、それ自体が退職を考える理由になります。賃金の不払いは離職理由の判定にも関わり、特定受給資格者に当たると所定給付日数(何日分もらえるか)が変わります。
やむを得ない事情で辞めた場合の特定理由離職者という区分もあり、範囲は特定理由離職者は条文では2種類しかないにまとめました。辞める前に確認しておくと、失業給付の側で不利になりません。
まとめ
- 会社の都合で休ませたら平均賃金の60%以上(26条)
- 平均賃金は暦の総日数で割る。月給や日給の6割ではない
- 会社都合の休業期間は平均賃金の計算から除かれる
- 休業補償(76条)とは根拠も場面も別
- 払われないときは同額の付加金を請求できる(114条・当分3年以内)
仕事が原因でない病気で休むときの傷病手当金は傷病手当金の計算式は条文にあるに分けました。