失業保険の決定に納得できないときの不服申立て
本サイトはアフィリエイト広告(PR)を利用しています。
離職理由が思っていた区分と違った。給付制限が付いた。日数が想定より少ない。窓口で説明を受けても納得できないことがあります。
窓口の判断が最終ではありません。争う仕組みが条文に置かれています。
誰に申し立てるのか
雇用保険法69条1項です。
第九条の規定による確認、失業等給付及び育児休業等給付(以下「失業等給付等」という。)に関する処分又は第十条の四第一項若しくは第二項の規定(これらの規定を第六十一条の六第五項において準用する場合を含む。)による処分に不服のある者は、雇用保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
相手はハローワークではありません。雇用保険審査官です。どこにいるのかは、労働保険審査官及び労働保険審査会法2条の2に書かれています。
審査官は、各都道府県労働局に置く。
窓口で判断した人に言い直しても、同じ答えしか返りません。判断した側とは別の機関に持ち込む仕組みなので、納得できない時点で相手を変えることになります。
そこでも納得できなければ、労働保険審査会への再審査請求に進みます。こちらの置かれ方は同法25条1項です。
労働者災害補償保険法第三十八条及び雇用保険法第六十九条の規定による再審査請求の事件を取り扱わせるため、厚生労働大臣の所轄の下に、労働保険審査会(以下「審査会」という。)を置く。
厚生労働大臣の所轄の下なので、労働局よりさらに外側にあたります。同法26条1項により委員9人で組織されていて、1人が判断する形ではありません。
| 段階 | 申し立てる先 |
|---|---|
| 1回目 | 雇用保険審査官(都道府県労働局) |
| 2回目 | 労働保険審査会 |
対象として並んでいるものが3つあります。被保険者であったかどうかの確認、失業等給付や育児休業等給付に関する処分、そして返還命令などの処分です。給付の額や日数だけでなく、そもそも被保険者だったかどうかも争えます。
- 原処分のあつたことを知つた日の翌日
3か月審査請求ができる期間
条文は「三月を経過したときは、することができない」
- 審査請求ができなくなる

期限は3か月
労働保険審査官及び労働保険審査会法8条1項が期限を決めています。
審査請求は、審査請求人が原処分のあつたことを知つた日の翌日から起算して三月を経過したときは、することができない。
起算点は処分があった日ではなく、それを知った日の翌日です。同項のただし書きは、正当な理由でこの期間内にできなかったことを疎明したときはこの限りでないとしています。過ぎたら必ず駄目、という書き方ではありません。
同条2項により、郵便で出した場合は送付にかかった日数を期間に算入しません。期限が近いときは、窓口へ持ち込むより郵便のほうが有利になります。
待たされたら先へ進める
申し立てたのに決定が来ないことがあります。69条2項が、その場合の扱いを置いています。
前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日の翌日から起算して三箇月を経過しても審査請求についての決定がないときは、雇用保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。
「みなすことができる」なので、選ぶのはこちらです。 待ち続けることもできますし、棄却されたものとして再審査請求へ進むこともできます。
決定が出ないまま止まると、次の段階に行けないまま時間だけが過ぎます。この規定は、その状態から自分で抜けるためのものです。
時効は止まる
失業等給付を受ける権利には時効があります。申し立てているあいだに時効で消えては意味がないので、69条3項が置かれています。
第一項の審査請求及び再審査請求は、時効の完成猶予及び更新に関しては、裁判上の請求とみなす。
裁判上の請求とみなされるので、時効の進行はそこで止まります。争っているうちに権利が消えることはありません。

争う順番を間違えない
見落とされやすい条文があります。70条です。
第九条の規定による確認に関する処分が確定したときは、当該処分についての不服を当該処分に基づく失業等給付等に関する処分についての不服の理由とすることができない。
被保険者であったかどうかの確認について処分が確定してしまうと、そのあとで給付の処分を争うときに、確認の中身を理由にできなくなります。
つまり順番があります。
- 被保険者だったかどうかに争いがあるなら、確認の処分の段階で申し立てる
- そこが確定してから給付の処分を争っても、確認の中身は持ち出せない
離職票の記載に納得できない場合は、離職理由の判定で扱っている区分の話と、被保険者資格そのものの話を分けて考えることになります。
行政不服審査法の一部が外れている
雇用保険法69条4項です。
第一項の審査請求及び再審査請求については、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二章(第二十二条を除く。)及び第四章の規定は、適用しない。
第2章まるごとではなく、22条だけは残ります。22条は誤った教示があった場合の救済を定めた条なので、案内が間違っていたときの手当ては働きます。それ以外は一般の不服申立てと手続きの流れが違うということです。
だから調べるときは、行政不服審査法の解説ではなく、労働保険審査官及び労働保険審査会法のほうを見ることになります。審査請求書の書き方や審理の進め方は、そちらに置かれています。
窓口で「行政不服審査法に基づく審査請求」と案内されることがありますが、根拠になるのは雇用保険法69条1項です。どちらの名前で呼んでも申し立てる先は変わらないので、言葉の違いで止まる必要はありません。
何を用意するか
条文が求めているのは、処分に不服があることだけです。それでも通るかどうかは材料で変わります。
窓口が何を根拠に判断したのかを先に確かめます。離職理由なら離職票の記載と、事業主が付けた具体的事情。給付制限なら、その理由として示された事実。
会社の言い分と食い違う場合は、会社都合退職のデメリットと、自己都合との違いで判定の材料になるものを整理しています。
理由がパワハラの場合は、省令のどこに当たるかが先に決まります。パワハラで退職したら会社都合退職になるかを見てください。
自分で作った資料より、第三者が作った書類のほうが強く働きます。やりとりの記録、診断書、辞令、就業規則の該当部分。窓口に出したものと、出していないものを分けて把握しておきます。
代理人を立てることもできます。ただし報酬を得て代理できる相手は限られるので、退職代行は弁護士と労働組合で何が違うかで線を確かめてください。
ここまでで分かること
- 争う相手はハローワークではなく雇用保険審査官(雇保法69条1項)
- 次の段階は労働保険審査会への再審査請求
- 期限は原処分を知った日の翌日から3か月。正当な理由があれば例外がある
- 郵便で出せば送付にかかった日数は期間に入らない
- 3か月待っても決定がなければ、棄却とみなして先へ進める(同69条2項)
- 申し立てているあいだ時効は止まる(同69条3項)
- 被保険者資格の確認が確定すると、その中身は給付の処分の不服理由にできない(同70条)