退職後に家族の扶養に入る条件
保険料が0円になる選択肢を先に確認する
退職後の健康保険には、任意継続・国民健康保険・家族の扶養という3つの入り口があります。前の2つは保険料がかかりますが、扶養に入れた場合の本人負担はありません。
それなのに、この選択肢は「自分は年収があったから無理だろう」と最初に外されがちです。外す前に確認したいのは、判定に使われる「年収」が何を指しているかです。 ここを誤解していると、入れるはずの人が入らずに保険料を払うことになります。
任意継続と国民健康保険の比べ方は退職後の健康保険と年金|20日と14日にまとめています。この記事は、そこで先に確認するよう書いた3つ目の選択肢を扱います。
「年収130万円」は去年の年収ではない
日本年金機構は、被扶養者の収入要件についてこう書いています。
年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。
過去の収入ではない、と明記されています。 去年フルタイムで働いていて年収が400万円あった人でも、辞めて収入が無くなった時点から先の見込みで判定されます。
判定の目安も示されています。
給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であれば要件を満たします。
年額130万円を12で割ると108,333円、360で割ると3,611円です。月単位・日単位に割り戻した数字が基準になるので、辞めた月の途中まで給与が出ていても、その後の見込みが基準内なら要件は満たしうることになります。
このほかに、同居の場合は収入が扶養者の収入の半分未満であること、別居の場合は扶養者からの仕送り額未満であることが挙げられています。収入が無ければ自動的に入れる、という制度ではありません。
失業給付は収入に数えられる
多くの人がここで外れます。
また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれますので、ご注意願います。
失業給付は非課税なので、税の計算では収入になりません。しかし社会保険の扶養では収入として数えられます。 税と社会保険で扱いが違うところなので、確定申告の感覚のまま考えると判断を誤ります。
つまり基本手当の日額が3,612円以上になる人は、受給している間は扶養に入れません。基本手当の日額は辞める前の賃金をもとに決まるため、フルタイムで働いていた人はこの額を超えることが多くなります。
待期の間は入れて、受給が始まったら外れる
ここが実務として一番効く部分です。
雇用保険の待機期間中でも、収入要件を満たしている場合は被扶養者として認定することが可能です。ただし、基本手当(3,612円以上)の支給が始まった場合は、扶養削除の届出が必要となります。
扶養は「入るか入らないか」の一択ではなく、支給が始まる前と後で状態が変わるものとして書かれています。手続きが2回発生することを前提に読む必要があります。
同時に、これは外れるときに自分から届け出る義務があるということでもあります。支給が始まったのに扶養のままにしておくと、後から資格が遡って取り消され、その間に使った医療費の返還を求められることがあります。放置して得になる場面はありません。
給付制限の期間中どう扱われるかは、ここでは書けない
自己都合で辞めた人には、待期のあとに給付制限の期間があります。この期間も基本手当は支給されていません。
ただし、給付制限の期間中の扶養の扱いを、一次情報として確認できませんでした。 日本年金機構のページに書かれているのは待期期間についてだけです。健康保険の被扶養者の認定は、協会けんぽか、勤め先の健康保険組合が行います。健康保険組合は独自の基準を定めている場合があるため、「待期がよいのだから給付制限中もよい」と一般化して書くことはできません。
この点は、扶養に入れてもらう家族の勤務先を通じて、加入している健康保険の保険者に確認してください。 手続き自体が勤務先経由なので、聞く相手は同じです。
健康保険に入れても、年金の扱いは配偶者かどうかで変わる
見落としやすいのがこちらです。健康保険の扶養と、国民年金の第3号被保険者は別の制度です。
国民年金の加入者のうち、厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満であり、かつ配偶者の年収の2分の1未満の方)を第3号被保険者といいます。
対象は配偶者に限られています。 保険料については、こう書かれています。
保険料は、第2号被保険者全体で負担しますので、個別に納める必要はありません。
したがって、扶養に入る相手が誰かで結果が分かれます。
| 扶養に入る相手 | 健康保険 | 国民年金 |
|---|---|---|
| 配偶者(厚生年金の加入者) | 被扶養者になれる | 第3号被保険者。保険料の負担なし |
| 親など配偶者以外 | 条件を満たせば被扶養者になれる | 第1号のまま。保険料が発生する |
実家に戻って親の健康保険の扶養に入った場合、健康保険料はかからなくなりますが、国民年金の保険料は自分で払う必要が残ります。 収入が無い時期にここを未納で放置すると受給資格期間にも算入されないため、免除や納付猶予の申請につなげてください。失業した場合の特例は退職後の健康保険と年金|20日と14日で扱っています。
手続きは市区町村の窓口ではない
国民健康保険や国民年金の切替は自分で市区町村に行きますが、扶養は違います。
第3号被保険者の方は、配偶者の勤務している事業所を通じて手続きしてください。
自分が窓口に行っても手続きは進みません。 扶養する家族に、勤務先へ申し出てもらうところから始まります。家族の会社の締め日や事務の都合で日数がかかることがあるので、退職日が決まった時点で伝えておくと間に合いやすくなります。
添付書類として挙げられているのは、退職によって収入要件を満たす場合は退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し、失業給付を受給中または受給終了の場合は雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の写しです。どちらも辞めた会社かハローワークからしか出ません。 手元に届く時期は退職後に会社から受け取る書類で整理しています。
19歳以上23歳未満は基準が変わっている
年齢によって金額が違う部分があります。
扶養認定日が令和7年10月1日以降で、扶養認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合は、「年間収入150万円未満」に変わります。
2025年10月1日以降の認定が対象です。この年齢に当たる人は、130万円で判断すると誤ります。 制度が変わった直後は、解説記事や社内の案内に古い数字が残っていることがあります。金額を確認するときは、資料がいつ時点のものかを見てください。
順番に確認する
- 家族に、勤務先の健康保険の扶養に入れるか聞いてもらう。 保険者によって基準が違う
- 失業給付を受けるかどうか、基本手当の日額がいくらになるかを確認する。 3,612円が境目
- 待期や給付制限の期間だけ入る形が取れるかを、保険者に確認する
- 入れないなら、任意継続と国民健康保険を試算する
- 配偶者以外の扶養に入る場合は、国民年金の手続きを別に行う
失業給付そのものを受けられるかは、離職前の被保険者期間で決まります。失業給付の受給要件|被保険者期間の数え方を先に確認しておくと、2の見込みが立てやすくなります。
まとめ
- 判定に使う年間収入は、過去の収入ではなく、認定された日以降の見込み額
- 目安は月額108,333円以下、雇用保険の受給者は日額3,611円以下
- 失業給付は非課税だが、社会保険の扶養では収入に含まれる
- 待期期間中は認定されうるが、基本手当(3,612円以上)の支給が始まったら削除の届出が必要
- 給付制限の期間中の扱いは一次情報で確認できなかった。保険者に確認する
- 国民年金の第3号被保険者になれるのは配偶者だけ。親の扶養では第1号のまま
- 手続きは自分の市区町村ではなく、扶養する家族の勤務先を通じて行う
判定は加入している健康保険の保険者が行います。最終的な可否は、家族の勤務先を通じて保険者に確認してください。