派遣と正社員の違いは契約の相手
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派遣と正社員の違いを「安定しているかどうか」で説明されることがあります。それは結果であって、原因ではありません。
違いの出発点は、契約の相手が誰かです。 このページは、そこから何が変わるのかを労働者派遣法の条文でたどります。
雇う会社と、指示する会社が分かれる(労働者派遣法2条1号)
法律は労働者派遣をこう定義しています。
自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
「自己の雇用する労働者を」「他人の指揮命令を受けて」の2つが本質です。雇用しているのは派遣元で、指示を出すのは派遣先。ここが分かれています。
正社員は、雇う会社と指示を出す会社が同じです。それだけの違いから、給与を払う相手、契約を終わらせる相手、就業規則が適用される相手がすべて変わります。
派遣
- 雇用契約の相手は派遣元
- 指揮命令する相手は派遣先
- 給与を払うのは派遣元
- 就業規則は派遣元のもの
正社員
- 雇用契約も指揮命令も給与もその会社
- 就業規則もその会社のもの
派遣だけ、指揮命令する相手と雇用契約の相手が分かれている
「派遣先に辞めたいと言う」ことにならないのは、ここから出てきます。契約の相手は派遣元だからです。
定義の後半にも意味があります。「雇用させることを約してするものを含まない」とあるので、最初から派遣先に雇わせる約束をしているものは、労働者派遣にあたりません。紹介予定派遣が別に整理されているのは、この線があるためです。

待遇は「派遣先の通常の労働者」と比べる(30条の3第1項)
分かれているのは指示の系統だけではありません。待遇の決まり方も条文にあります。
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
比べる相手は「派遣先に雇用される通常の労働者」です。派遣元の中で揃っていればよい、という話ではありません。
比べ方も「基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて」とされています。総額で釣り合っていればよいのではなく、項目ごとに見ると書かれています。
職務が同じなら、不利にしてはならない(30条の3第2項)
もう一段強い規定も置かれています。
派遣元事業主は、職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であつて、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情からみて、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない。
条件が2つ重なっています。職務の内容が同一で、かつ職務の内容と配置の変更の範囲も同一の範囲であることです。その場合は「不合理と認められる相違」ではなく、「正当な理由がなく不利にしてはならない」になります。
実務では、変更の範囲が違うことを理由に差が説明されることが多くなります。だから確認する順序は、まず自分の職務と配置がどこまで変わりうるかです。
「派遣先の通常の労働者」が見えない問題
条文の比較対象は派遣先の通常の労働者ですが、その待遇は本人からは見えません。派遣先が派遣元に情報を提供する仕組みがあり、そこを経由して初めて比較が成立します。
つまり、待遇が決まる過程に自分は直接入っていません。だからこそ、説明を求める権利が別に置かれているという関係になります。
もう1つ、派遣元が労使協定を結んで待遇を決める方式もあります。この場合、比較の相手が派遣先の労働者ではなく、同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準になります。
どちらの方式が自分に適用されているかで、比べる相手が変わります。 待遇に納得できないときは、まずどちらの方式かを聞いてください。方式が分からないまま「派遣先の社員と違う」と言っても、話が噛み合いません。

説明を求められる
待遇の内容や決め方について、派遣労働者は派遣元に説明を求めることができ、派遣元には説明する義務があるとされています。
差があること自体より、説明できるかどうかが問われるという組み立てです。納得できない場合は、まず書面で説明を求めてください。
期間の扱いも違う
正社員には期間の定めがありませんが、派遣には期間制限が掛かります。事業所単位と個人単位で扱いが違い、延長できるのは事業所単位だけです。数え方は派遣の3年ルールは2種類あるに整理しました。
なお、派遣元と無期雇用で契約している場合は期間制限の対象外です。同じ「派遣」でも、有期か無期かで掛かるルールが変わります。
契約が請負や業務委託になっている場合は、そもそも派遣にあたるかから確認が要ります。判断の基準は偽装請負かどうかは指示で決まるにまとめました。
正社員に移る場合
期限や待遇を理由に正社員を目指す場合、見るのは求人票と労働条件通知書です。求人票は広告ではなく、職業安定法が明示を義務づけている書面で、条件を変えて契約する場合は変更の明示が必要とされています。順序は求人票の見方|違う条件なら明示義務があるにあります。
内定後に渡される書面で見る項目は労働条件通知書で確認する項目に整理しました。就業場所・業務の変更の範囲が明示事項に入っているので、派遣で問題になった「変更の範囲」を、今度は入社前に確認できます。
辞めるときの手続きと期限は退職後の健康保険と年金|20日と14日にまとめました。
記事末尾の表に挙げた2社は、どちらも正社員での就職を扱っています。JAIC就職カレッジは18歳から35歳が成果の条件で、就職を希望する地域が12の都府県のいずれかであることも条件に入っています。UZUZ第二新卒は18歳から29歳で最終学歴が高卒以上、30歳以上は対象外です。年齢と地域の条件が先に決まっているので、当てはまるかを見てから登録してください。
どちらも有料職業紹介事業の許可を根拠に動いています。求職者から手数料を取らない仕組みは転職エージェントはなぜ無料なのかにあります。
パート・アルバイトから正社員への転換については、事業主が措置を講じなければならないと別の法律が定めています。フリーターが正社員になる二つの道にあります。
まとめ
- 違いの出発点は契約の相手。雇うのは派遣元、指示するのは派遣先
- 辞める話をする相手は派遣元。派遣先ではない
- 定義は「雇用させることを約してするもの」を含まないとしている
- 待遇は派遣先に雇用される通常の労働者と比べる。派遣元の中の比較ではない
- 比べ方は「それぞれについて」。総額ではなく項目ごと
- 職務の内容と変更の範囲が同一なら、正当な理由がなく不利にしてはならない
- 待遇の決め方は説明を求められる。差より説明できるかが問われる
安定しているかどうかは結果です。原因は契約の相手が分かれていることにあります。