求人票の見方|違う条件なら明示義務がある
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求人票を見るとき、どこまで信じてよいのかが分かりにくいところです。広告のようなものだと思っていると、条件が違っていたときに何も言えなくなります。
実際には、求人票は法律が明示を義務づけている書面です。このページは、そこに何が書かれているはずかを職業安定法の条文から確認します。
求人票は広告ではなく、明示義務の対象
根拠は職業安定法5条の3です。
条文はこう定めています。
公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
主語が長いのですが、押さえるべきはハローワークだけでなく、職業紹介事業者と募集を行う者も含まれている点です。転職エージェント経由でも、企業の採用ページからの応募でも、同じ義務がかかります。
明示すべき対象として名指しされているのは、業務の内容と賃金と労働時間、そして「その他の労働条件」です。方法も条文が定めています。
前三項の規定による明示は、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により行わなければならない。
口頭で済ませてよいものではありません。

何を書くかは、省令が号で並べている
条文が「厚生労働省令で定める事項」に送っているので、中身は職業安定法施行規則4条の2第3項にあります。
法第五条の三第四項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。ただし、第二号の三に掲げる事項にあつては期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものに限る。以下この項において「有期労働契約」という。)に係る職業紹介、労働者の募集又は労働者供給の場合に限り、第八号に掲げる事項にあつては労働者を派遣労働者(労働者派遣法第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)として雇用しようとする場合に限るものとする。一労働者が従事すべき業務の内容に関する事項(従事すべき業務の内容の変更の範囲を含む。)二労働契約の期間に関する事項二の二試みの使用期間に関する事項二の三有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間(労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)三就業の場所に関する事項(就業の場所の変更の範囲を含む。)四始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項五賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第八条各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項六健康保険法(大正十一年法律第七十号)による健康保険、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)による厚生年金、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)による労働者災害補償保険及び雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)による雇用保険の適用に関する事項七労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項八労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨九就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項
長いので、求人票を見るときに効く号だけ取り出します。
一号の括弧書きに「従事すべき業務の内容の変更の範囲を含む」とあります。いまの仕事の内容だけでなく、どこまで変わりうるかも明示の対象です。三号の就業の場所にも同じ括弧が付いていて、転勤の範囲が明示事項に入っています。
二の二が「試みの使用期間に関する事項」です。試用期間があるかどうかは、求人票に書かれているはずのものになります。
二の三は有期契約の更新です。括弧の中に「有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む」とあるので、更新の上限があるならその回数まで書かれます。
九号は受動喫煙を防止するための措置です。就業の場所での扱いが明示事項に入っています。
試用期間中と後で条件が違うなら、両方を示す
同じ職業安定法施行規則4条の2の6項です。
法第五条の三第一項から第三項までの規定による明示は、試みの使用期間中の従事すべき業務の内容等と当該期間が終了した後の従事すべき業務の内容等とが異なる場合には、それぞれの従事すべき業務の内容等を示すことにより行わなければならない。
試用期間中の賃金が本採用後と違うなら、両方が書かれていなければなりません。 片方しか書かれていない求人票は、この項を満たしていないことになります。
方法のほうは同じ規則の4項が決めていて、原則は書面の交付です。ファクシミリと電子メール等は、書面を受け取るべき人がそれを希望した場合に限られます。「メールで送っておきました」だけで済ませられるものではありません。
条件を変えるなら、変更を明示しなければならない(職業安定法5条の3第3項)
求人票を読むうえでいちばん効いてくるのがここです。
求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者(供給される労働者を雇用する場合に限る。)は、それぞれ、求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者と労働契約を締結しようとする場合であつて、これらの者に対して第一項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下この項において「従事すべき業務の内容等」という。)を変更する場合その他厚生労働省令で定める場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令で定める事項を明示しなければならない。
長い一文ですが、骨は単純です。求人票と違う条件で契約しようとするなら、変更したことを明示する義務がある、と書かれています。
条件を変えること自体は禁じられていません。禁じられているのは、黙って変えることです。「求人票と違うが、そういうものだ」と言われた場合、変更の明示があったかどうかが論点になります。
求人票どおりに契約する
- そのまま
条件を変えて契約する
- 変更内容の明示が必要
変更を伝えないまま契約する
- 明示義務を果たしていない
条件を変えること自体は禁じられていない。分かれ目は変更を明示したかどうか
正確かつ最新に保つ義務もある
募集情報そのものについても定めがあります。職業安定法5条の4です。
労働者の募集を行う者及び募集受託者は、この法律に基づく業務に関して広告等により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
同じ条の1項には、もっと直接的な禁止が置かれています。
当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。
「誤解を生じさせる表示」まで対象になっているところが要点です。書いてあることが1つずつは嘘でなくても、読んだ人が違う条件だと受け取る形ならこの規定に触れます。募集が終わった求人を残しておく、実態と離れた条件を掲げる、といった状態も同じです。
なお2項が向いているのは募集を行う者で、3項が職業紹介事業者などに正確かつ最新に保つための措置を義務づけています。相手によって条項が分かれます。
「古い求人票かもしれない」は、読む側が我慢する話ではありません。掲載日と、最終更新の表示があるかを見てください。
休暇制度の欄は、法律で決まっている部分と会社が決める部分が混ざる
求人票の「休暇制度」には、法律が最低限を決めているものと、会社が独自に置いているものが並びます。分けて読まないと、比べたつもりで比べられていません。
法律が決めているのは休日の回数です。労働基準法35条1項です。
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
同条2項に例外があります。
前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
週1回か、4週で4日か。条文が求めているのはここまでで、「週休2日」も「年間休日120日」も法律の要求ではありません。会社が決めている部分です。
有給休暇は39条で日数まで決まっています。数え方は有給の付与日数は6か月後の10日からにまとめました。
夏季休暇や慶弔休暇は法定外
一方、夏季休暇・年末年始・慶弔休暇・リフレッシュ休暇は、労働基準法に規定がありません。置くかどうかも、有給にするかどうかも会社が決めます。
決めた場合は就業規則に書くことになります。89条1号です。
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
「休暇」が入っているので、独自の休暇を置くなら就業規則に書かれているはずです。求人票に書いてあって就業規則に無い、という状態は起こりにくい。逆に言えば、就業規則を見せてもらえば実態が分かります。
求人票で確かめること
- 年間休日の日数(週休2日でも、祝日が休みかで年20日近く違う)
- 夏季・年末年始が年間休日に含まれているか
- 慶弔休暇が有給か無給か
3つとも法律が決めていないので、求人票と就業規則を見る以外に確かめる方法がありません。条件が入社後に違っていた場合の扱いは労働条件が違うときの退職にあります。

見る順序
条文が明示を求めている項目から、実務で差が出やすい順に並べます。
賃金は内訳を見ます。 総額だけでは判断できません。固定残業代が含まれているなら、何時間分か、超えた分が別途支払われるかまで書かれているはずです。月給の数字が同じでも、固定残業代の有無で実際の時間単価は変わります。
就業場所と業務の内容は「変更の範囲」まで見ます。2024年4月から、労働条件の明示に「就業場所・業務の変更の範囲」が加わりました。求人票の段階でも、転勤や職種変更の可能性がどこまで書かれているかは判断材料になります。
雇用形態と契約期間を確認します。 有期なら更新の上限があるか、試用期間があるならその長さと、その間の条件が本採用後と違うかどうかです。試用期間中に解雇されうるかどうかは試用期間中の解雇|14日を境に変わるに整理しました。
違っていたときにどこへ言うか
入社前に気づいた場合は、その場で確認するのがいちばん早くなります。変更の明示は契約を締結しようとする段階での義務なので、「求人票ではこうなっていますが、認識に相違はないでしょうか」と聞けば足ります。
入社後に分かった場合、窓口は求人の経路で変わります。ハローワークの求人なら、ハローワークに申し出る仕組みがあります。職業紹介事業者経由なら、都道府県労働局が需給調整を担当しています。
労働条件そのものが違っていた場合には、別の条文が効きます。労働基準法は、明示された条件が事実と相違する場合に即時に退職できるとしています。 その扱いは労働条件通知書で確認する項目に整理しました。求人票と労働条件通知書は別の書面なので、両方を保管しておくと照合できます。
エージェント経由の場合
冒頭の条文が職業紹介事業者も名指ししているとおり、エージェント経由でも明示義務は同じです。求人票にあたる書面が社内フォーマットになっていることはありますが、義務が軽くなるわけではありません。
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まとめ
- 求人票は広告ではなく、職業安定法が明示を義務づけている書面
- 義務の対象にはハローワークだけでなく、職業紹介事業者と募集を行う者も含まれる
- 明示すべきは業務の内容・賃金・労働時間その他の労働条件で、方法も省令で定められている
- 条件を変えて契約する場合は、変更内容の明示が必要
- 募集情報は正確かつ最新に保つ義務があり、虚偽や誤解を生じさせる表示は禁じられている
- 賃金は内訳、就業場所と業務は変更の範囲まで見る
- 求人票と労働条件通知書は別の書面。両方を保管して照合する
条件が変わること自体は禁じられていません。禁じられているのは、黙って変えることです。