転職の年収交渉は、明示される項目で話す
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年収の話になると、いくらと言うべきかで止まります。
ただ交渉の前に確かめることがあります。提示された金額に何が含まれているかです。ここが揃っていないと、上がったつもりで下がることが起こります。
明示しなければならない項目が決まっている(労働基準法15条1項・規則5条)
まず前提として、労働基準法に明示の義務があります。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
何を明示するかは省令が並べていて、賃金についてはこうなっています。
賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
「昇給に関する事項」まで入っています。 入社時の金額だけでなく、その後どう上がるのかも明示の対象です。

賞与と退職手当は別の号にある(規則5条1項4号の2・5号)
見落とされやすいのは、賞与と退職手当が別の項目として立っていることです。
臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
つまり月給・賞与・退職手当は3つに分かれています。
提示された「年収◯◯万円」がどれを含んでいるのかを確かめないまま比べると、賞与込みの数字と月給ベースの数字を並べてしまいます。
退職手当のほうは「適用される労働者の範囲」も明示の対象です。勤続年数の条件で対象外になることがあるので、そこも確かめる材料になります。
月給(賃金)
- 決定・計算・支払の方法
- 締切りと支払の時期
- 昇給に関する事項
賞与
- 臨時に支払われる賃金と並ぶ別の号
- 最低賃金額もこの号
退職手当
- 適用される労働者の範囲
- 決定・計算・支払の方法と、支払の時期
「年収」の一語では、月給と賞与と退職手当のどこまでを含むのかが決まらない
場所と業務の「変更の範囲」も対象(規則5条1項1号の3)
金額とは別に、改正で入った項目があります。
就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
変更の範囲を含む、と書かれています。入社時の勤務地だけでなく、将来どこまで動く可能性があるのかが明示の対象です。
年収が同じでも、転勤の範囲が違えば実際の条件は変わります。交渉の材料としても使えるところです。
残業代が含まれているかを見分ける(規則5条1項2号)
年収の話でいちばん食い違うのが、残業代の扱いです。時間の条件も明示の対象に入っています。
始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
「所定労働時間を超える労働の有無」が項目として立っています。残業があるかどうかは、明示される側です。
提示された月給に一定時間ぶんの残業代があらかじめ含まれている形もあります。その場合、含まれている時間数と、超えたぶんが別に払われるかを確かめてください。時間数が分からないまま比べると、同じ月給でも働く時間が違います。
実際の残業時間は、第二新卒歓迎の求人なら数字で聞けます。逆質問は答える義務がある項目からにまとめました。
上げ幅より、上がり方を確かめる
入社時の金額は1回きりですが、昇給の決まり方はその後ずっと効きます。
明示の対象に「昇給に関する事項」が入っているので、どういう場合に上がるのかを聞くのは、確認としてまっとうな質問になります。
評価の頻度、評価の基準、昇給の時期。この3つが分かると、3年後の見込みが立ちます。入社時に5万円の差があっても、昇給の仕方が違えば数年で逆転します。
交渉の順番
まとめると、金額を言う前に確かめる順序はこうなります。
- 提示額に賞与が含まれるか
- 昇給がどう決まるか
- 退職手当の対象になるか
- 勤務地と業務の変更の範囲
1から4が揃って、はじめて他社の提示と比べられます。比べられない状態で金額だけを動かそうとすると、根拠が出せません。

前職の年収を聞かれたとき
前職の年収は、伝えると上限の目安にされることがあります。一方で、こちらの希望額に根拠を持たせる材料にもなります。
判断が分かれるところですが、答える前に何に使うのかを聞いてよいという線はあります。エージェント経由の場合、集める情報は業務の目的の範囲内で、目的を明らかにして集めることが職業安定法で定められています。
範囲は転職エージェントに渡す情報の範囲にまとめました。
提示と実際が違ったとき(労働基準法15条2項)
交渉がまとまっても、入社してから話が違うことがあります。そのときの定めが労働基準法にあります。
前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
「即時に」です。 2週間を待つ必要がありません。
ただしこれを使うには、明示された条件が手元に残っている必要があります。口頭で聞いた金額はメモに、書面で出たものは保管しておいてください。
内定時に確認する項目は労働条件通知書で確認する項目にまとめました。
手取りで考えると印象が変わる
年収が上がっても、手取りが同じということがあります。転職した年は前職と新しい勤め先の給与が混ざるので、税と社会保険の動き方が変わります。
年内に入社するなら年末調整で精算されます。扱いは転職した年の年末調整にまとめました。
住民税は前年の所得で決まるので、上がった年収がそのまま反映されるのは翌年です。辞める時期で払い方も変わります。退職後の住民税にあります。
相談を挟む場合
年収の交渉を自分でやりにくい場合、エージェントが代わりに出すこともあります。そのときも、提示に何が含まれるかは自分で確かめてください。
求人票そのものの読み方は求人票の見方にあります。
まとめ
- 明示の対象に昇給に関する事項まで入っている
- 月給・賞与・退職手当は3つの別項目。提示額がどれを含むかを先に確かめる
- 退職手当は「適用される労働者の範囲」も明示の対象
- 勤務地と業務は変更の範囲まで明示の対象
- 提示と事実が違えば、即時に契約を解除できる
- そのために書面とメモを残す
金額を言う前に、何が含まれているかを揃えてください。