高年齢雇用継続給付金|60歳以降に賃金が75%未満なら出る
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定年を迎えて再雇用になると、同じ仕事でも賃金が下がることがあります。60歳以降のその下がり方が一定を超えたときに、雇用保険から出る給付があります。
「高年齢雇用継続給付金」と呼ばれることが多いものは、条文では高年齢雇用継続給付という制度の名前です。中身は2つに分かれます。在職のまま賃金が下がった人に出るのが高年齢雇用継続基本給付金。いったん辞めて再就職した人に出るのが高年齢再就職給付金です。年齢に関係なく、再就職して賃金が下がったときに出るものは別にあります。就業促進定着手当は賃金が下がったときに出るを参照してください。このページは前者を中心に見ていきます。
分かれ目は75%
雇用保険法61条1項が高年齢雇用継続基本給付金を定めています。条文は長いのですが、線は1つです。
支給対象月に支払われた賃金が、60歳に達した日を基準にして計算した賃金日額に30を掛けた額の75%を下回った場合に支給されます。
つまり60歳時点の賃金と比べて、今の賃金が75%未満かどうかで決まります。74%なら対象、76%なら対象外です。

5年の加入が要る
同じ1項のただし書きに、対象から外れる場合が2つ書かれています。
1つ目が加入期間です。60歳に達した日を基準日とみなして計算した期間が5年に満たないときは支給されません。雇用保険に入っていた期間が短いと、賃金が下がっても対象になりません。
2つ目が金額の上限です。支給対象月の賃金が35万6,400円以上のときは支給されません。この額は7項により、平均給与額の変動に応じて毎年8月1日から変更されます。
いくら出るか
5項が計算方法を定めています。
60歳時点と比べた賃金の下がり方64%
64%未満まで下がった
賃金の10%
64%以上75%未満
10%から一定の割合で逓減する率
賃金の10%が上限で、そこから下がり方が小さいほど率も下がります。賃金と給付を足した額が支給限度額を超えるときは、限度額から賃金を引いた額までになります。
6項に下限もあり、計算した額が一定の額の80%を超えないときは支給されません。
早見表は、条文の式から出ている
早見表を探しているなら、その表がいつのものかを先に確かめてください。この率は2025年4月1日から引き下げられています。それ以前の表は上限が違います。
逓減する部分の率は、雇用保険法61条5項2号が厚生労働省令に投げています。
みなし賃金日額に三十を乗じて得た額に対する当該賃金の額の割合が逓増する程度に応じ、百分の十から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率
その省令が雇用保険法施行規則101条の4です。式はこう書かれています。
法第六十一条第五項第二号の厚生労働省令で定める率は、第一号に掲げる額から第二号及び第三号に掲げる額の合計額を減じた額を第二号に掲げる額で除して得た率とする。
1号は60歳時点の賃金月額の75%、2号は今の月の賃金額です。3号がこの式の要になります。
みなし賃金月額に千分の四十六を乗じて得た額にイに掲げる額をロに掲げる額で除して得た率を乗じて得た額
イは1号から2号を引いた額、ロは賃金月額の11%です。この式に当てはめると、賃金比64%でちょうど10%、75%でちょうど0%になります。計算した値を並べると次のようになります。
| 60歳時点と比べた賃金の比 | 給付の率 |
|---|---|
| 64%以下 | 10.00% |
| 65% | 8.95% |
| 67% | 6.95% |
| 69% | 5.06% |
| 70% | 4.16% |
| 71% | 3.28% |
| 73% | 1.59% |
| 74% | 0.79% |
| 75%以上 | 出ない |
端数の扱いは条文に書かれていないので、支給される額はハローワークの表で確かめてください。ここで示したのは、式に入れたときの値です。
表を使わなくても、まず比を出してから条文の区分に当てはめれば、古い数字を拾う心配がありません。
対象になる月の範囲
2項が支給対象月を定めています。60歳に達した日の属する月から、65歳に達する日の属する月までです。
ただし、その月の初日から末日まで引き続いて被保険者であることが要ります。月の途中で辞めた月は入りません。介護休業給付金や育児休業給付金を受けられる休業を取った月も外れます。
辞めてから再就職した場合は別の給付
いったん失業給付を受けてから再就職した場合は、61条の2の高年齢再就職給付金になります。
高年齢再就職給付金は、受給資格者(その受給資格に係る離職の日における第二十二条第三項の規定による算定基礎期間が五年以上あり、かつ、当該受給資格に基づく基本手当の支給を受けたことがある者に限る。)が六十歳に達した日以後安定した職業に就くことにより被保険者となつた場合において、当該被保険者に対し再就職後の支給対象月に支払われた賃金の額が、当該基本手当の日額の算定の基礎となつた賃金日額に三十を乗じて得た額の百分の七十五に相当する額を下るに至つたときに、当該再就職後の支給対象月について支給する。
比べるのが60歳時点の賃金ではなく、基本手当の日額のもとになった賃金日額になります。辞める直前の賃金が基準です。
支給される期間も違います。就職日の前日の支給残日数が200日以上なら2年、200日未満なら1年です。100日未満なら対象になりません。65歳に達する月を超えることはありません。
再就職手当とは同時に受けられない
61条の2第4項に調整の規定があります。同じ就職について就業促進手当を受けたときは高年齢再就職給付金を支給せず、逆に高年齢再就職給付金を受けたときは就業促進手当を支給しない、という形です。
再就職手当は就業促進手当の一種なので、どちらかを選ぶことになります。 再就職手当の側は再就職手当にまとめました。
一時金で受け取るか、月々の給付を続けて受けるかで有利さが変わります。残日数が多く賃金の下がり方が小さいなら再就職手当、残日数が少なく賃金が大きく下がるなら高年齢再就職給付金が大きくなりやすい形です。
不正があると止まる
61条の3が給付制限を定めています。偽りその他不正の行為で失業等給付を受けたか受けようとした者には、その日以後の高年齢雇用継続給付を支給しない、という規定です。ただし書きで、やむを得ない理由がある場合は全部または一部を支給できます。
60歳時点の賃金は自分では選べない
比べる相手になる「みなし賃金日額」は、60歳に達した日を離職の日とみなして計算されます。直前6か月の賃金から出す形なので、その時期に残業が少なかった人は基準そのものが低くなります。
基準が低ければ、75%の線も低くなります。同じ額まで下げられても、基準が高かった人は対象になり、低かった人は対象外になることがあります。
4項に例外があります。みなし賃金日額を算定できないときや、算定した額を使うのが適当でないときは、厚生労働大臣が定めるところにより算定します。特殊な事情がある場合はここで調整されます。

10%か15%かは、60歳に達した日で分かれる
率が下がったのは2025年4月1日からですが、その日をまたぐ人が全員10%になるわけではありません。 雇用保険法附則3条1項に経過措置が置かれています。
改正後雇用保険法第六十一条第五項の規定は、六十歳に達した日(その日において雇用保険法第六十一条第一項第一号に該当する場合にあっては、同号に該当しなくなった日。
続きで、60歳に達した日が施行日より前の人については「なお従前の例による」とされています。分かれ目は支給を受ける月ではなく、60歳に達した日です。
だから同じ時期に同じ賃金で働いていても、60歳の誕生日がどちら側かで上限が変わります。古い早見表が15%で作られているのは、この経過措置に当たる人がいるためです。自分がどちらかは、60歳に達した日を数えれば決まります。
「廃止」で検索されることについて
この給付は縮小されたので、廃止されたと書かれているのを見かけます。2026年9月5日にe-Govの法令APIで確かめたところ、**現行の版にも、2028年10月1日施行の版にも雇用保険法61条は残っています。**附則にあるのは上の経過措置で、廃止の定めは見当たりません。
縮小と廃止は別です。15%から10%へ下がったことが縮小で、条文はまだあります。制度がこの先どうなるかは、改正されたときに条文の側で確かめられます。
65歳になると終わる
支給対象月は65歳に達する日の属する月までです。その後も働き続けることはできますが、この給付は止まります。
65歳以降も雇用保険に入り続けると、高年齢被保険者という扱いになります。辞めたときに受けるのは基本手当ではなく高年齢求職者給付金です。仕組みは高年齢求職者給付金は一時金で出るにまとめました。日数の計算が別なので、65歳の前後で辞めるかによって受け取る額が変わります。
会社が手続きしないとき
支給申請は事業主を経由して行うのが原則です。会社が動かない場合、本人が申請できないわけではありません。
賃金の記録は会社側にあります。労働基準法108条の賃金台帳と109条の記録保存で、5年間残すことになっています。手元に給与明細が無くても、記録そのものは存在します。そろえ方は休業手当は平均賃金の60%以上にも書きました。
何を確かめるか
- 60歳時点の賃金がいくらだったか(賃金台帳や給与明細)
- 今の賃金がその75%を下回っているか
- 雇用保険の加入期間が5年以上あるか
- 今の賃金が支給限度額を下回っているか
手続きは会社を通じてハローワークへ行うのが通常です。自分で計算した額と支給額が違うときは、みなし賃金日額の算定がどうなっているかを確かめることになります。
賃金が下がること自体に納得できない場合は、労働条件の変更として別の問題になります。労働条件が違うときに分けました。
育児の時短給付とは両取りできない
同じ就業について、育児時短就業給付金を受けられる場合があります。雇用保険法61条の12第10項は、どちらか一方しか支給しないと定めています。先に受けたほうで決まる形なので、両方に当たりそうなら順序を確かめてください。中身は育児時短就業給付金は賃金の10%が上限にまとめました。
まとめ
- 60歳時点の75%未満に下がったら対象(61条1項)
- 雇用保険の加入が5年に満たないと対象外
- 賃金が35万6,400円以上の月も対象外。この額は毎年変わる
- 給付は賃金の10%が上限。64%以上に下がっただけなら率は下がる
- 対象は60歳の月から65歳に達する月まで
- 再就職した場合は61条の2の別の給付。再就職手当とはどちらか一方