内定の承諾期限は待ってもらえるか
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内定が出たとき、「1週間以内に返事を」と言われることがあります。
他社の選考が残っていると、この期限が重くのしかかります。待ってもらえるのか、過ぎたらどうなるのか。 土台になるルールを条文で確かめます。
何日以内という決まりは法律に無い
まず前提として、内定の返事を何日以内にしなければならない、という定めはありません。期限は会社が示しているだけで、法律が決めた日数ではありません。
ただし返事を待つ側と待たせる側の関係については、民法に申込みと承諾のルールがあります。内定のやりとりも、この形に沿って考えることになります。

期限を定めたほうも縛られる(民法523条1項)
期限を示した側について、条文はこうなっています。
承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。
期限を切った側は、その期間中は引っ込められません。「1週間以内に返事を」と言った会社が、3日目に「やはり無かったことに」と言うのは、このルールから外れます。
期限は返事をする側だけを縛るものではない、という作りです。迷っている間に取り消されるのではないか、という不安は、ここで少し軽くなります。
過ぎるとどうなるか(523条2項・524条・525条)
では期限を過ぎたらどうなるか。同じ条文の次の項に書かれています。
申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
効力を失います。 黙って過ぎると、内定そのものが消えることがあります。
ここが実務でいちばん危ないところです。「返事をしていないだけで、断ってはいない」と考えていても、期限を過ぎた時点で相手の申込みが無くなっていることがあります。
ただし救いもあります。
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
遅れた返事を、新しい申込みとして扱うことが会社の側でできます。つまり遅れたら必ず終わり、というわけではありません。とはいえ扱うかどうかは相手が決めるので、期限内に連絡するほうが確実です。
期限が示されていないとき(民法525条1項)
日付を言われないこともあります。その場合の定めは別にあります。
承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
「相当な期間」という書き方になっています。日数の指定はありません。
何日が相当かは事情によります。ただ、期限が示されていないからといって無期限に待ってもらえるとは読めません。分からないなら聞いたほうがよい、というのがこの条文から言えることです。
聞くこと自体は失礼にあたりません。むしろ、いつまでに返事をするかをこちらから示すほうが、相手も動きやすくなります。
期限を定めた申込み
- その期間中は撤回できない(523条1項)
- 期間内に承諾の通知が無ければ効力を失う(523条2項)
期限を定めない申込み
- 相当な期間を経過するまで撤回できない(525条1項)
- 日数の指定は無い
縛られる長さが日付で決まるか、「相当な期間」で決まるか
待ってもらう根拠になるもの(労働基準法15条1項)
延ばしてほしいと言いにくい場合、根拠になるものがあります。労働条件の明示です。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
明示は義務です。 賃金や労働時間が書面で出ていない段階で承諾を求められているなら、「条件を確認してから返事をしたい」と言うのは、確認としてまっとうな話になります。
何が明示の対象かは省令に並んでいて、月給と賞与と退職手当は別の項目です。勤務地や業務の変更の範囲も入っています。中身は年収交渉は明示される項目で話すにまとめました。
確認する項目そのものは労働条件通知書で確認する項目にあります。
承諾した後で辞退できるか(民法627条1項)
期限に追われて承諾し、あとで別の会社に決まることがあります。その場合の扱いは、申込みと承諾のルールではなく、契約を終える側の条文になります。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
いつでも申し入れることはできます。 承諾したから抜けられない、とはなっていません。
ただし入社日が近いほど、相手の準備が進んでいます。損害賠償を求められるかどうかを含めた整理は内定辞退で損害賠償を求められるかにまとめました。
承諾してから断るより、期限を延ばしてもらうほうが摩擦は小さくなります。先に相談してください。

複数社が並行しているとき
他社の選考が残っている場合、やることは2つです。
- 内定を出した会社に、いつまでなら待てるかを聞く
- 選考中の会社に、内定が出ていることを伝えて日程を早められるか聞く
2つ目を遠慮する人が多くありますが、伝えないまま期限を迎えると選べません。選考の順番は動かせることがあります。
エージェント経由で応募しているなら、この調整は代わりにやってもらえます。渡してよい情報の範囲は転職エージェントに渡す情報の範囲にまとめました。
取り消される側の話
こちらが待ってもらう話とは逆に、会社の側から取り消されることもあります。承諾した後の取消しは、申込みの撤回ではなく解雇にあたる扱いになります。
中身は内定取り消しは解雇にあたるにまとめました。承諾したかどうかで、こちらの立場も変わります。
承諾を決める前に確かめること
日数の交渉より先に、判断の材料が揃っているかを見てください。
- 賃金の内訳(月給・賞与・退職手当がそれぞれどうなっているか)
- 勤務地と業務の変更の範囲
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 試用期間の有無と、その間の条件
このうち1つでも分からないなら、まだ判断できる状態ではありません。試用期間の扱いは試用期間中の解雇|14日を境に変わるにあります。
決まった後にも期限がある(民法627条1項)
承諾して入社日が決まると、そこから先にも期限のあるものが出てきます。
失業給付を受けている途中で決まった場合、残りが戻る制度があります。再就職手当|早く決まると残りが戻るにまとめました。
健康保険を任意継続していたなら、そちらをやめる手続きも要ります。転職が決まったら任意継続はどうやめるかにあります。
入社日そのものの決め方は入社日は退職日の翌日にできるかにまとめました。
まとめ
- 内定の返事を何日以内にする、という日数の定めは法律に無い
- 期限を定めた側は、その期間中は撤回できない
- 期限内に承諾の通知が無ければ、申込みは効力を失う
- 遅れた返事を新しい申込みとして扱うことは、相手の側でできる
- 期限が示されていない場合は「相当な期間」。分からないなら聞く
- 労働条件が明示されていないなら、確認してから返事をしたいと言える
- 承諾した後でも解約の申入れはできるが、先に延ばしてもらうほうが摩擦は小さい
黙って期限を過ぎるのがいちばん損をします。連絡だけは先に入れてください。