試用期間を延長すると言われたら
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入社して数か月後、「試用期間を延長します」と言われることがあります。
延長そのものを定めた条文はありません。 できるかどうかは、就業規則に根拠があるかで変わります。そして延長された時点で、扱いが1つ変わります。
まず就業規則に根拠があるか(労働契約法3条5項)
試用期間の長さも延長の可否も、法律ではなく就業規則で決まります。延長の定めが無いのに延ばすのは、契約の内容を後から変えることになります。
だから最初に確かめるのは、就業規則に延長の条項があるかどうかです。あるなら、どういう場合に、何か月まで延ばせるかまで書かれているはずです。
条項が無いまま延長を告げられたなら、その根拠を聞いて構いません。

延長には限度がある(労働契約法3条5項)
条項があっても、無制限ではありません。労働契約法にこう書かれています。
労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
権利の濫用は認められません。 延長の条項があっても、必要のない延長を繰り返すのはこの線に触れます。
試用期間そのものの長さにも限度があります。中身は試用期間中の解雇|14日を境に変わるにまとめました。
延長されると解雇予告の除外から外れる(労働基準法20条・21条)
ここが実務でいちばん効く点です。解雇の予告について、原則はこうです。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。
30日前です。そして例外を定めた条文があります。
前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。
各号のひとつに「試の使用期間中の者」が挙がっています。ただし、そのあとにただし書があります。
但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
「十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合」が試用期間の話です。
延長を告げられる場面は、入社から数か月が経っています。つまり14日はとうに超えているので、例外は使えません。 延長された試用期間中でも、解雇には30日前の予告か予告手当が要ります。
試の使用期間中の者が引き続き使用された日数十四日
十四日を超えていない
21条により20条の予告の規定は適用しない
十四日を超えて引き続き使用
ただし書により除外から外れ、30日前の予告か予告手当が要る
「試用期間中だから予告は要らない」と言われたら、ここが根拠になります。
書面で残してもらう(労働契約法4条)
延長の話は口頭で来ることがあります。労働契約法にこう書かれています。
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
書面で確認する、とされています。 延長も労働契約の内容なので、書いてもらうよう頼むのは自然な求めになります。
確認しておくとよいのは3つです。
- いつまで延長するのか(終わりの日付)
- 何が足りないと判断されたのか
- 何が満たされれば本採用になるのか
2つ目と3つ目が返ってこない場合、延長の理由がはっきりしていないことになります。改善のしようがないまま期間だけ延びる形は、こちらにとって損しかありません。
断ることはできるか(労働契約法8条・9条)
延長に同意しないという選択もあります。労働条件の変更については定めがあります。
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
合意によって変更する、という形になっています。 一方的な変更については、こうです。
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
ただし、もともとの就業規則に延長の条項があった場合、それは入社の時点で契約の内容に入っていたことになります。その範囲の延長なら、新しい変更にはあたらないと考えられます。
だから断れるかどうかも、条項があるかどうかで変わります。まず条項を見る、という順序はここでも同じです。
延長中の条件は変わらない
延長は期間の話であって、給与や労働時間の話ではありません。同時に条件を下げる提案が来たら、それは別の変更です。
労働条件が入社時の明示と違う場合の扱いは労働条件通知書で確認する項目にまとめました。手元の書面と照らして確かめてください。
社会保険や有給の扱いも変わりません。有給が付くのは入社から6か月後で、試用期間かどうかは関係ありません。有給休暇の付与日数|転職先では6か月からにあります。

自分から辞める場合
延長を告げられて、続ける気持ちが持てなくなることもあります。その場合、辞める側の手続きは通常と同じです。
試用期間中でも、申し入れから2週間の経過で終わります。辞めると決めたときの段取りは退職は何ヶ月前に言えばいいかにまとめました。
短期間で辞めた場合の雇用保険の扱いは、加入していた月数で決まります。数え方は20代の転職は在職中かで順序が変わるにまとめました。11日以上働いた月だけを1か月と数えます。
本採用にならなかったとき
延長した末に本採用を断られることがあります。これは新しく採用しないという話ではなく、すでにある契約を終わらせる話なので、解雇として扱われます。
だから前の節のとおり、30日前の予告か予告手当が要ります。判断の枠組みは試用期間中の解雇|14日を境に変わるにまとめました。
理由についても証明書を請求できます。労働基準法は、解雇の理由について証明書の交付を求められると定めています。口頭の説明だけで終わらせず、書面で受け取っておくと、後から確かめられます。
記録を残しておく
延長の理由が曖昧なまま本採用にならなかった場合、後から争うには記録が要ります。
- 延長を告げられた日付と、そのときの説明
- 書面が出たならその写し
- 指摘された点と、それに対して自分がやったこと
メールやチャットで確認の返信を送っておくと、日付つきの記録になります。「先ほどのお話の確認ですが」で始めて、聞いた内容を書けば足ります。
まとめ
- 試用期間の延長を定めた条文は無い。就業規則に根拠があるかを先に見る
- 条項があっても、権利の濫用は認められない
- 延長の時点で入社から14日を超えているので、解雇予告の除外は使えない
- つまり延長中の解雇にも、30日前の予告か予告手当が要る
- 労働契約の内容は書面で確認するとされている。延長も同じ
- 終わりの日付・足りない点・満たすべき条件の3つを聞く
- 給与や労働時間の変更は、延長とは別の話
期間だけ延びて理由が示されない形が、いちばん避けたい状態です。