雇用保険の加入条件|条文は「入らない人」を書いている
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この記事の見出し(11)
失業給付を受けられるかどうかは、そもそも雇用保険に入っているかで決まります。ただ、条文は「入る条件」を並べる書き方をしていません。
このページは、実際にどう書かれているのかを条文から確認します。
条文は「適用しない人」を並べている
雇用保険法6条の見出しは「適用除外」です。書き出しはこうなっています。
次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
原則は適用で、そこから外れる人を並べる形になっています。「条件を満たしたら入れる」ではなく、「除外にあたらなければ入る」という向きです。
この違いは実際に効きます。入っているかどうかを会社が選べるわけではありません。除外にあたらなければ、届出をしていなくても被保険者だったことになります。

除外の中心は2つ(雇用保険法6条1号・2号)
並んでいる号のうち、先に来るのが労働時間と雇用の見込みに関するものです。
一週間の所定労働時間が二十時間未満である者(第三十七条の五第一項の規定による申出をして高年齢被保険者となる者及びこの法律を適用することとした場合において第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く。)
同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者(前二月の各月において十八日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及びこの法律を適用することとした場合において第四十二条に規定する日雇労働者であつて第四十三条第一項各号のいずれかに該当するものに該当することとなる者を除く。)
括弧を外すと、こうなります。
一週間の所定労働時間が20時間未満
- 20時間以上なら除外にあたらない
31日以上雇用される見込みがない
- 31日以上の見込みがあれば除外にあたらない
どちらも除外の側の書き方
両方を満たして初めて対象になります。 片方だけでは足りません。
「所定」であって実績ではない
1つ目でよく誤解されるのが、20時間の数え方です。
条文は「所定労働時間」と書いています。 契約で決まっている時間のことで、たまたま忙しくて多く働いた週があるかどうかではありません。
契約が週19時間なのに、実際は毎週25時間働いている——という状態は、所定労働時間そのものの見直しが必要な場面です。労働条件通知書に何時間と書かれているかを見てください。 確認する項目は労働条件通知書で確認する項目に整理しました。
「見込み」であって結果ではない
2つ目も同じ構造です。条文は「見込まれない者」と書いています。
31日以上働く見込みがあるかどうかは、雇い入れの時点で判断されます。契約期間が31日未満でも、更新の可能性がある場合や、同じ雇い方で31日以上雇った実績がある場合は、見込みがある側に入ります。
結果的に短期間で辞めたとしても、見込みがあった時点で被保険者です。入社してすぐ辞めた場合でも、その期間は加入期間として残ります。
見込みが無い場合でも、別の道が残っています。上の引用の括弧の中で、「前二月の各月において十八日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者」が除外から外されています。2か月続けて各月18日以上働いていれば、31日以上の見込みが無くても除外にあたりません。
短い契約を繰り返している場合は、ここで判定が変わることがあります。日数は月ごとに数えるので、片方の月が17日なら当てはまりません。
掛け持ちしている場合の例外(37条の5第1項)
20時間の号には長い括弧書きが付いていました。その中で参照されている条文に、複数の勤務先を合算できる仕組みが置かれています。
次に掲げる要件のいずれにも該当する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に申し出て、当該申出を行つた日から高年齢被保険者となることができる。
要件のうち中心になるのは次の2つです。
二以上の事業主の適用事業に雇用される六十五歳以上の者であること。
二の事業主の適用事業(申出を行う労働者の一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間数以上であるものに限る。)における一週間の所定労働時間の合計が二十時間以上であること。
65歳以上で、2つの勤務先の合計が週20時間以上になる場合です。1社ごとに見ると20時間未満でも、合算して届けられます。
ただし制約が付いています。「申し出て」とあるとおり、自分から手続きが要ります。会社が自動的に出すものではありません。そして65歳以上に限られます。それより下の年齢では、掛け持ちを合算する仕組みはこの条文にありません。
合算して入った人には、読み替えが2つ付いてくる(37条の6)
37条の5で高年齢被保険者になった場合、その先の給付に読み替えがかかります。別の条に置かれているので、37条の5だけを読んでいると出てきません。
1つ目が1項です。
前条第一項の規定により高年齢被保険者となつた者に対する第六十一条の四第一項、第六十一条の七第一項、第六十一条の八第一項、第六十一条の十第一項及び第六十一条の十二第一項の規定の適用については、これらの規定中「をした場合」とあるのは、「を全ての適用事業においてした場合」とする。
挙がっているのは介護休業給付金と育児休業給付の各条です。「を全ての適用事業においてした場合」に読み替えられます。 片方の勤務先だけで休んでも、この読み替えの下では対象になりません。
2つ目が2項です。申し出た事業のうち1つを離職した場合について、高年齢求職者給付金を定めた37条の4の額の計算に、読み替えを置いています。賃金日額を定める17条の適用について、「離職した適用事業において支払われた賃金に限り」という限定が入ります。
合算して加入していても、給付の計算に使うのは辞めたほうの賃金だけになります。加入するときの20時間は合算、辞めたときの賃金は片方。向きが違います。
掛け持ちのまま申し出るかどうかを決めるときは、入口の条件だけでなくこの2つも見ておくことになります。
学生は原則として外れる(雇用保険法6条4号)
学生についての号もあります。
学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒であつて、前三号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
「厚生労働省令で定める者」と書かれています。 つまり、学生なら一律に除外という書き方ではありません。夜間や通信制など、働き方によって扱いが変わります。自分が該当するかは、勤務先かハローワークに確認してください。

2028年10月から週10時間になる
20時間という数字は動きます。厚生労働省の改正資料にこう書かれています。
雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大する。
施行は令和10年10月1日とされています。同じ資料の施行期日の欄に記載があります。
いま週15時間で働いている人は、現在は対象外でも、施行後は対象になります。短時間で働きながら次を探している人にとっては、受給資格の前提が変わる話です。
自分が入っているかを確かめる
いちばん早いのは給与明細です。「雇用保険料」の控除欄があれば入っています。金額は賃金に対して小さいので、見落としやすい行です。
もう1つが雇用保険被保険者証で、在職中に交付されていることが多い書類です。退職時に出てくるとは限らないので、在職中に有無を確認しておくと後が楽になります。
| 確かめ方 | 見るもの |
|---|---|
| 給与明細 | 「雇用保険料」の控除があるか |
| 雇用保険被保険者証 | 手元にあるか。番号が書かれている |
| ハローワーク | 被保険者だったことの確認を請求できる |
入っているはずなのに手続きがされていない場合
除外にあたらないのに届出が出ていない、ということが起こります。このとき、自分から確認を請求できます。 会社の同意は要りません。
請求の根拠と、離職票が出てこない場合にどう動くかは離職票が届かない|仮決定手続きで待たないに整理しました。給与明細に雇用保険料の控除があれば、それが動かしにくい材料になります。
加入していても、受給には別の条件がある
被保険者であることと、失業給付を受けられることは別です。加入期間の長さという条件が重なります。
数え方は暦月ではなく、賃金の支払いの基礎になった日数で決まります。辞める前に|失業給付の受給要件に整理しました。金額の決まり方は失業給付はいくらもらえるかにまとめています。
雇用保険の給付は失業給付だけではありません。育児休業給付も同じ保険から出ますが、職場復帰を前提とした給付なので、辞める時期によって扱いが変わります。線引きは育児休業給付金をもらってから辞められるかに整理しました。
まとめ
- 雇用保険法6条は「適用除外」、つまり入らない人を並べる形で書かれている
- 除外の中心は、週の所定労働時間が20時間未満と、31日以上の雇用見込みがないこと
- 「所定」なので契約上の時間で見る。実際に働いた時間ではない
- 「見込み」なので雇い入れ時点で判断する。結果的に短くても加入期間は残る
- 学生は原則として外れるが、厚生労働省令で定める者という書き方で例外がある
- 2028年10月1日から、週10時間以上に拡大される
- 入っているかは給与明細の控除欄で分かる。届出が無い場合は確認を請求できる
会社が届出をしていないことは、入っていなかったことを意味しません。