休職制度は法律に無い。だから就業規則を見る
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体調を崩して休むとき、まず出てくるのが休職という言葉です。ところが条文を探すと、この語が見つかりません。
労働基準法に「休職」は1度も出てこない
法令APIで労働基準法の全文を取って数えました。「休職」は0回です(2026年8月31日に取得した版で確認)。健康保険法の全文でも同じく0回でした。
有給休暇は39条、産前産後は65条、育児休業は別の法律にそれぞれ条文があります。休職にはそれがありません。
つまり休職は、法律が用意した制度ではなく、会社が作るものです。制度が無い会社があっても、それ自体は違法になりません。

就業規則の「定めをする場合」に入る
条文に出てくるとしたら、労働基準法89条10号です。
前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
「定めをする場合においては」なので、置くかどうかは会社が決めます。置いたときだけ、就業規則に書く義務が生じます。
89条の書き出しはこうです。
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
必ず書かなければならないものとの違いは、条文の書き方で分かります。
| 89条の号 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|
| 1号〜3号 | そのまま列挙 | 始業終業の時刻、賃金、退職 |
| 3号の2〜10号 | 「定めをする場合においては」 | 退職手当、表彰と制裁、休職 |
休職は後者にあたります。だから期間も、給与が出るかどうかも、会社ごとに違います。 他社の例や解説サイトの数字を自分の会社に当てはめることはできません。
診断書についても同じです。何日休んだら診断書が要るかを決めた条文はありません。 提出を求めるかどうかも、様式も、会社の就業規則が決めています。だから「何日から必要か」を外で探しても、自分の会社の答えは出てきません。
ただし傷病手当金のほうには、書類の定めがあります。申請書には療養担当者(医師)の意見欄があり、労務不能と認めた期間を書いてもらいます。休職に診断書が要るかとは別の話で、こちらは給付を受けるための要件です。中身は体調で辞める前に|傷病手当金と退職日にまとめました。
見せてもらう根拠がある
会社ごとに違うということは、自分の会社の就業規則を読むしかありません。それを求める根拠が106条にあります。
使用者は就業規則を「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない」と定められています。
周知は義務なので、見せてほしいと言えます。求めても出てこない場合、その時点で106条の問題になります。
休職中は、方法によっては読めない
「その他の厚生労働省令で定める方法」の中身は、労働基準法施行規則52条の2にあります。そこに並んでいる方法のうち、労働者本人の手元に渡るのは書面の交付だけです。
書面を労働者に交付すること。
残りは置き場所のほうを定めています。掲示と備付けは各作業場に、電子機器も各作業場です。
使用者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は第二十四条の二の四第三項第三号に規定する電磁的記録媒体をもつて調製するファイルに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
作業場に置く形
- 見やすい場所への掲示と備付け
- 記録を常時確認できる機器の設置
- 出社しているあいだは読める
本人に渡す形
- 書面の交付
- 手元に残るので、休んでいるあいだも読める
違うのは、休んでいるあいだに読めるかどうか
休職を考えている段階で、まず書面をもらっておくほうが確実です。 休み始めてから電話で聞くことになると、期間も復職の条件も人づてになります。社内のシステムで読める会社もありますが、休職中にアカウントを止める運用もあります。止まる前に、手元に残る形にしておくことです。
作るときの手続きも90条にあります。
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
「意見を聴かなければならない」であって、同意までは求めていません。反対の意見を書いた書面を添えても、届出そのものは通ります。
見るのは4つ
就業規則を開いたら、次を探します。どれも会社ごとに違います。
- 休職に入れる条件(勤続年数の要件が付くことがある)
- 休職できる期間の上限
- 休職中の給与(無給と定めている会社が多い)
- 期間が終わっても復職できないときの扱い
4つ目がいちばん重いので、そこは必ず読んでください。自然退職と書かれているのか、解雇と書かれているのかで、そのあとの離職理由の扱いが変わります。判定の手順は離職理由はハローワークが判定するにまとめました。
休職の手前に、法律が置いている段階がある
休職そのものは法律に無くても、その手前は別です。労働安全衛生法に、会社がやらなければならないことが書かれています。
66条の10がストレスチェックを義務づけていて、3項に申出の仕組みがあります。検査の結果が要件に当たる人が面接指導を希望すると申し出たら、会社は医師による面接指導を行わなければなりません。同項の後段です。
事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
申し出たこと自体を理由にする扱いが、条文で禁じられています。 言い出すと不利になるのではないか、という心配に対する答えがここにあります。
検査の結果は、同意なく会社へ行かない(労働安全衛生法66条の10第2項)
同じ条の2項に、結果の流れが書かれています。
当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。
検査を行った医師や保健師から会社へ、結果がそのまま渡ることはありません。渡すには本人の同意が要ります。
面接指導を申し出るかどうかは、結果を見てから決められる順序になっています。
会社は働き方のほうを変える義務がある(66条の8第5項・66条の10第6項)
面接指導のあと、会社が何をするかも決まっています。同条6項です。
事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
並んでいるのは働き方を変える措置です。就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少。
休職に入る前に、これらを検討する順序が法律の側にあります。 長時間労働が理由の場合は66条の8に同じ形の規定があり、5項が同じ措置を並べています。
就業規則の休職は、この先にある会社ごとの決まりです。法律の段階と就業規則の段階は、別々に用意されています。
傷病手当金は休職を要件にしていない
ここが実際にいちばん効きます。健康保険法99条1項です。
被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。
要件は「療養のため労務に服することができないとき」です。休職という語はここにも出てきません。
だから次のことが言えます。
| 会社の状況 | 傷病手当金 |
|---|---|
| 休職制度がある | 要件を満たせば出る |
| 休職制度が無い | 要件を満たせば出る |
休職制度が無いことは、傷病手当金を受けられない理由にはなりません。待期の3日と、給与が出ている期間の扱いは傷病手当金はいくらもらえるかに計算まで書いています。

会社の期間と、給付の期間は別に進む
就業規則が決めるのは休職の期間で、傷病手当金の期間は条文が決めています。99条4項です。
傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して一年六月間とする。
「通算して」なので、途中で復職して働いた期間は数に入りません。一度戻って、また休むことになっても、残りを使えます。
この2つは別々に進みます。就業規則の休職期間が1年なら、そちらが先に切れて、給付のほうはまだ残っていることになります。逆に休職期間のほうが長い会社では、給付が先に終わります。
会社ごと休職できる期間
何が決めているか就業規則
通算1年6か月傷病手当金が出る期間
何が決めているか健保法99条4項
2つは別々に進む
どちらが先に来るかを、休み始める前に数えておいてください。
給与が出ている間は原則として出ない
もうひとつ、108条1項があります。
疾病にかかり、又は負傷した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金を支給しない。
同じ条にただし書きがあり、受けられる報酬の額が99条2項で算定される額より少ないときは、その差額が支給されます。
つまり給与が出る休職制度がある会社では、その分だけ傷病手当金が減ります。 制度がある会社のほうが必ず得になる、という単純な話ではありません。有給休暇を先に使う場合も、有給は報酬なので同じ扱いになります。
復職せずに辞める場合
休職の期間中に、そのまま辞めることもあります。このとき傷病手当金がどうなるかは条件が付いていて、傷病手当金は退職後も受け取れるに4つの条件をまとめました。
失業給付のほうは、働ける状態にないと受けられません。働けるようになるまで受給期間を延ばす手続きがあるので、失業保険の受給期間は延長できるを先に見てください。
就業規則の書き方に納得できないとき
休職の期間や、期間満了後の扱いは会社が決めるものですが、決め方が法令に違反していないかは別の問題です。就業規則そのものを争う段になると、代理して交渉できるのは弁護士に限られます。根拠は弁護士法72条で、運営元ごとの違いは退職代行|弁護士と労働組合の違いにまとめました。
先に費用のかからない窓口があります。扱う範囲は退職相談は無料の公的窓口でできるにあります。
まとめ
- 労働基準法にも健康保険法にも「休職」という語は1度も出てこない
- 出てくるとしたら89条10号の「定めをする場合においては」のほう
- だから制度が無い会社があっても違法ではない。期間も給与も会社ごとに違う
- 就業規則の周知は106条の義務なので、見せてほしいと言える
- 作成時に意見を聴くのは義務だが、同意までは求められていない(90条)
- 傷病手当金の要件は「療養のため労務に服することができないとき」(健保法99条1項)
- 休職制度が無いことは、傷病手当金を受けられない理由にならない