失業保険の延長|期間と日数は別
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この記事の見出し(11)
「失業保険を延長したい」と調べると、話が噛み合わないことがあります。同じ「延長」という言葉で、別の制度が呼ばれているためです。
このページは、その2つを分けたうえで、後者にあたる給付日数の延長を雇用保険法の条文から確認します。
同じ言葉で呼ばれている別のもの
受け取れる期間が延びる
- 病気や出産、育児ですぐに働けないとき
- 本人が申請する
給付日数そのものが延びる
- 訓練を受ける、再就職が難しいと認められるとき
- 安定所長が認定する
違うのは何が延びるか。前者は「今は受け取らずに後ろへずらす」もので、総額は増えない
前者は「今は受け取らずに、後ろへずらす」ものです。 働ける状態になってから受け取り始めるために、受給期間を延ばします。要件と申請の時期は辞める前に|失業給付の受給要件に整理しました。
後者は「もらえる日数が増える」ものです。以下はこちらの話になります。

訓練を受けている間の延長(雇用保険法24条2項)
雇用保険法は、公共職業訓練等を受ける人についてこう定めています。
公共職業安定所長が、その指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者(その者が当該公共職業訓練等を受け終わる日における基本手当の支給残日数(当該公共職業訓練等を受け終わる日の翌日から第四項の規定の適用がないものとした場合における受給期間(当該期間内の失業している日について基本手当の支給を受けることができる期間をいう。以下同じ。)の最後の日までの間に基本手当の支給を受けることができる日数をいう。以下この項及び第四項において同じ。)が政令で定める日数に満たないものに限る。)で、政令で定める基準に照らして当該公共職業訓練等を受け終わつてもなお就職が相当程度に困難な者であると認めたものについては、同項の規定による期間内の失業している日について、所定給付日数を超えてその者に基本手当を支給することができる。
括弧が深いので、条件だけ取り出します。
- 安定所長が指示した訓練であること
- 訓練を受け終わる日の残日数が政令の日数に満たないこと
- 受け終わってもなお就職が相当程度に困難と認められること
自分で選んだ講座では対象になりません。 安定所の指示という条件が先に来ます。
政令の日数は三十日
「政令で定める日数」の中身は、雇用保険法施行令5条1項にあります。
法第二十四条第二項の政令で定める日数は、三十日とする。
訓練を受け終わる日の残日数が三十日に満たないことが条件です。残りが三十日以上あるなら、この延長は出てきません。
もう一方の「政令で定める基準」に、除外が入っている
同じ雇用保険法施行令5条の2項です。
法第二十四条第二項の政令で定める基準は、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(法第十五条第三項に規定する公共職業訓練等をいう。以下この項において同じ。)を受ける受給資格者(同条第一項に規定する受給資格者をいう。以下同じ。)が、当該公共職業訓練等を受け終わる日における法第二十四条第二項に規定する支給残日数に相当する日数分の基本手当の支給を受け終わる日(当該公共職業訓練等を受け終わる日において同項に規定する支給残日数がない者にあつては、その日)までに職業に就くことができる見込みがなく、かつ、特に職業指導その他再就職の援助を行う必要があると認められる者(その受給資格(法第十四条第二項第一号に規定する受給資格をいう。以下同じ。)に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後、正当な理由がなく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けること又は厚生労働大臣の定める基準に従つて公共職業安定所が行う再就職を促進するために必要な職業指導を受けることを拒んだことのある者を除く。)に該当することとする。
前半は「受け終わる日までに職業に就くことができる見込みがなく」という部分です。そこに「特に職業指導その他再就職の援助を行う必要があると認められる者」が続きます。ここまでは想像がつきます。
読むところは括弧の中です。除かれるのは、求職の申込みをした日以後に、正当な理由がなく断ったことのある人です。断る対象は紹介された職業に就くこと・指示された訓練を受けること・職業指導を受けることです。
つまり断った履歴があると、訓練延長給付の対象からも外れることになります。延長が始まったあとに断ったときの扱いは、下の延長の間に断ると、失業給付そのものが止まるで扱います。そちらとは別に、始まる前の履歴もここで見られています。 訓練そのものの種類と、給付制限が解除される扱いは職業訓練と失業給付|給付制限の解除にまとめました。
会社都合などで再就職が難しい場合(24条の2第1項)
もうひとつ、離職の区分に紐づくものがあります。
第二十二条第二項に規定する就職が困難な受給資格者以外の受給資格者のうち、第十三条第三項に規定する特定理由離職者(厚生労働省令で定める者に限る。)である者又は第二十三条第二項に規定する特定受給資格者であつて、次の各号のいずれかに該当し、かつ、公共職業安定所長が厚生労働省令で定める基準(次項において「指導基準」という。)に照らして再就職を促進するために必要な職業指導を行うことが適当であると認めたものについては、第四項の規定による期間内の失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限る。)について、所定給付日数を超えて基本手当を支給することができる。
対象は特定理由離職者(契約が更新されなかったなど、やむを得ない理由で辞めた人)と特定受給資格者(倒産や解雇で辞めた人)に限られています。自分がどちらに当たるかは特定理由離職者に当たるかで受給資格が変わるで確かめられます。自己都合で辞めた人は、この規定からは外れます。
さらに「指導基準に照らして」という条件が付いていて、安定所長の判断が要ります。条件を満たせば自動的に付くものではありません。
自分がどの区分になるかは、会社の記載ではなくハローワークが決めます。判定のしくみは離職理由は会社の記載で決まらないに、区分によって保険料が変わる話は会社都合退職のデメリットはあるかにあります。
条文の書き方から読み取れること
引用した2つの規定は、どちらも「所定給付日数(何日分もらえるか)を超えて基本手当(失業給付のこと)を支給する」という形をとっています。延長は元の日数に上乗せされるもので、元の日数そのものを増やし直すわけではありません。所定給付日数がどう決まるかを先に押さえておかないと、増える量の見当が立ちません。
訓練を理由とする延長には、もうひとつ読み落としやすい条件が入っています。対象が「支給残日数が政令で定める日数に満たないもの」に限られている点です。残日数がまだ十分にある段階では、この延長の対象になりません。訓練の開始時期によって当たり外れが出るということなので、受講の時期を相談するときは、残日数と訓練の終了日を並べて見てもらってください。
区分を理由とする延長のほうには、「失業していることについての認定を受けた日に限る」という限定があります。認定日に出頭して認定を受けた日だけが数えられる、という意味です。延長が決まっても、認定日を飛ばした分は日数になりません。延長の可否と、認定日を守ることは別の話として押さえておく必要があります。
景気が悪化したときの延長(27条1項)
個人の事情ではなく、全国の状況で発動するものもあります。
厚生労働大臣は、失業の状況が全国的に著しく悪化し、政令で定める基準に該当するに至つた場合において、受給資格者の就職状況からみて必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り、第三項の規定による期間内の失業している日について、所定給付日数を超えて受給資格者に基本手当を支給する措置を決定することができる。
この条には、日数の数字が入っていません。1項の後段は「所定給付日数を超えて基本手当を支給する日数は、政令で定める日数を限度とするものとする」となっています。数字は政令に預けられています。
同じ条文の並びには、特定の地域について広域の職業紹介を行う場合の延長(25条)もあります。どちらも動かすのは行政の側です。
60日という数字が書いてあるのは、地域延長給付のほう
日数が条文に直接書かれているのは、雇用保険法附則5条の暫定措置です。見出しは「給付日数の延長に関する暫定措置」で、一般に地域延長給付と呼ばれています。
本則の個別延長給付(24条の2)とは別の制度です。名前が似ているうえ、条文が本則ではなく附則にあるので見つけにくくなっています。
前項の場合において、所定給付日数を超えて基本手当を支給する日数は、六十日(所定給付日数が第二十三条第一項第二号イ又は第三号イに該当する受給資格者にあつては、三十日)を限度とするものとする。
60日が限度です。所定給付日数が短い区分では30日になります。
この規定には期限が入っています。
受給資格に係る離職の日が令和九年三月三十一日以前である受給資格者
2027年3月31日までに辞めた人までの措置です。対象になる区分は、上で見た延長と同じです。そのうえで、住んでいる場所に条件が付きます。
厚生労働省令で定める基準に照らして雇用機会が不足していると認められる地域として厚生労働大臣が指定する地域内に居住し、
「地域」延長給付と呼ばれるのはここが理由です。厚生労働大臣が指定した地域に住んでいることが要件で、指定は入れ替わります。自分の住所が入っているかは、ハローワークで確認することになります。
同じ条は、個別延長給付を受けられる人を対象から外しています。どちらか一方です。
「60日延びる」を全国的な措置のことだと読むと、対象を取り違えます。 数字が入っているのはこちらです。

順番が決まっていて、足し算にはならない
複数に当てはまることがあるので、28条が順番を決めています。
個別延長給付を受けている受給資格者については、当該個別延長給付が終わつた後でなければ広域延長給付、全国延長給付及び訓練延長給付(第二十四条第一項又は第二項の規定による基本手当の支給をいう。以下同じ。)は行わず、広域延長給付を受けている受給資格者については、当該広域延長給付が終わつた後でなければ全国延長給付及び訓練延長給付は行わず、全国延長給付を受けている受給資格者については、当該全国延長給付が終わつた後でなければ訓練延長給付は行わない。
読み解くと、個別 → 広域 → 全国 → 訓練 の順です。同じ条の2項は逆向きも決めています。訓練を理由とする延長を受けている人に他の延長が始まると、その間は訓練のほうが止まります。まとめて受け取れるわけではありません。
延長の間に断ると、失業給付そのものが止まる
いちばん見落としやすいのが29条です。
正当な理由がなく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けること又は厚生労働大臣の定める基準に従つて公共職業安定所が行うその者の再就職を促進するために必要な職業指導を受けることを拒んだときは、その拒んだ日以後基本手当を支給しない。
「その拒んだ日以後基本手当を支給しない」とあります。延びた分だけでなく、失業給付そのものが止まります。ただし書きで戻れるのは「新たに受給資格を取得したとき」だけです。
紹介や訓練を断るときは、正当な理由に当たるかどうかを先に窓口で確かめてください。
「延長できますか」と聞く前に
条文を通して見ると、給付日数の延長はどれも安定所長または大臣の認定を前提にしています。本人の申請だけで決まる仕組みにはなっていません。
したがって窓口では、延長の可否そのものより、自分がどの区分に当たるかと指示された訓練の対象になるかを確認するほうが話が進みます。区分は離職理由コードで決まり、訓練は安定所の指示が前提になるためです。
一方、受給期間の延長(前者)は本人の申請で動きます。病気や出産で今は働けない場合、まずこちらの期限を確認してください。先に期限を逃すと、後から取り戻せません。
日数が足りないと感じたときの他の道
延長に当たらない場合でも、支給残日数が残っているうちに就職すると再就職手当の対象になることがあります。要件は再就職手当はいくらもらえるかに整理しました。残日数が多いほど率が上がるので、延長を待つより早く決めるほうが金額として大きくなる場合があります。
給付そのものの金額と日数の決まり方は失業給付はいくらもらえるかにあります。
退職後に事業を始めた場合は、期間そのものを止める特例があります。起業したら失業保険の期間は止められるにまとめました。
まとめ
- 「延長」という言葉は、受給期間の延長と給付日数の延長の両方に使われる
- 受給期間の延長は本人の申請。病気や出産で働けないときに後ろへずらす
- 給付日数の延長は雇用保険法にあり、どれも安定所長または大臣の認定が要る
- 訓練を理由とするものは、安定所長が指示した訓練であることが条件
- 区分を理由とするものは、特定理由離職者と特定受給資格者に限られる
- 全国的な悪化を理由とするものは60日(一部30日)が限度で、大臣が決定する
- 窓口では「延長できますか」より、区分と訓練の指示を確認するほうが早い
本人の申請で動くのは受給期間のほうだけです。ここを取り違えると期限を逃します。