内々定の取り消しで残るもの
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内々定を取り消されたとき、「まだ内定ではないから仕方ない」と言われることがあります。たしかに内定とは段階が違いますが、何も残らないという意味ではありません。
このページは、厚生労働省の「確かめよう労働条件」の記述から、内々定の段階で何が成立していて、取り消されたときに何が残るのかを確認します。
出発点は「労働契約が成立していない」
同省のQ&Aは、内々定がどう扱われるかをこう書いています。
採用の内々定は、内定の段階に比べて多くの場合に労働契約を締結したとの認識には至っていないと考えられます。
「多くの場合に」「至っていないと考えられます」とあります。成立していないと断定されているわけではなく、そう扱われることが多い、と書かれています。
内定のほうは扱いが違います。
採用内定通知のほかには労働契約締結のため特段の意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められることが多いと考えられています。
契約が成立していれば、取消しは解雇として扱われます。その場合の手順は内定取り消しは解雇にあたるに整理しました。

それでも損害賠償が残りうる
内々定について、Q&Aはさらに踏み込んで書いています。
そのため、内々定の取消は解雇ではなく、また、内々定の辞退は契約の破棄ではないとも考えられますが、個別の事案によっては、拘束関係の度合いが強ければ「採用内定」と認められ、労働契約が成立していると判断されることもあり得るほか、労働契約は成立していない場合でも、採用内定の「予約」とされることにより、内々定の取消や内定の辞退が信義に反し、相手方の期待権を侵害したとして損害賠償責任が認められることもあり得ますので、双方で注意をしておかねばなりません。
長い一文ですが、2つの道が書かれています。
拘束関係の度合いが強い
- 「採用内定」と認められる
- 労働契約が成立していたと判断されうる
契約は成立していない
- 「予約」として扱われる
- 期待権の侵害で損害賠償が認められうる
違うのは契約が成立していたと見るかどうか。下の道がこの論点でいちばん見落とされる
下の道が、この論点でいちばん見落とされます。契約が無いことと、責任が無いことは別です。
判断の場も示されています。
個別の事案によって、拘束関係の度合いによっては「採用内定」と認められることもあり得ますので、その場合には当該内々定取消の適法性は司法において判断されることとなります。
つまり、会社が「内々定だから自由だ」と言い切れる話ではありません。
分かれ目は「拘束関係の度合い」
条文のような基準は示されていません。示されているのは拘束関係がどれだけ強かったかという見方です。
そこから逆算すると、記録しておく価値があるのは次のようなものになります。
- 他社の選考を辞退するよう言われたか。言われたなら、いつ、誰から
- 研修や懇親会など、参加が求められた行事があったか
- 入社日や配属について、具体的な連絡があったか
- 誓約書や承諾書にあたる書面を出しているか
呼び方が「内々定」でも、実態が内定に近ければ扱いが変わります。逆に、口頭で一言あっただけなら拘束関係は弱いことになります。
やり取りはメールやメッセージの履歴として残しておいてください。後から作れないのは、日付が入った記録のほうです。
「期待権」という言い方が意味すること
損害賠償の根拠として挙がっているのは、契約違反ではなく期待権の侵害です。ここは読み分ける必要があります。
契約違反なら、履行されなかった分が問題になります。期待権の侵害は、そこまで進んだのだから当然そうなると信じてよかった、という状態を壊したことが問題になります。だから、どれだけ信じてよい状況だったかが焦点になります。
この違いは、求められる材料にも出てきます。契約の存在を示す書面が無くても、信じてよい状況だったことを示す材料があれば足りうるという組み立てです。他社を断った事実は、その材料にあたります。
一方で、期待権の侵害が認められても、入社できるわけではありません。 Q&Aが挙げているのは損害賠償責任であって、地位の確認ではありません。求められるのは金銭で、就職先が戻るわけではありません。ここを先に理解しておくほうが判断を誤りません。

会社側からの取消しには別の仕組みもある
採用内定の取消しについては、行政の側にも仕組みが置かれています。Q&Aによると、採用内定取消事案はハローワークが一元的に把握して企業を指導し、一定の場合には内容を公表することができるとされています。
公表という手段があること自体が、会社側への抑止になっています。内々定の段階でこの仕組みが直接動くとは限りませんが、実態が「採用内定」と認められる場合には射程に入ります。
まずは大学のキャリアセンターか、新卒応援ハローワークに相談してください。公的な相談窓口の使い方は退職相談は無料の公的窓口でできるにまとめました。総合労働相談コーナーは在職者に限らず利用できます。
自分から断る場合
逆に、こちらから内々定を辞退する場合も同じ資料が扱っています。内定の辞退については「基本的に問題ない」とされていて、履行を強制されることはありません。線引きは内定辞退で損害賠償を求められるかに整理しました。
内々定の辞退は、内定の辞退よりさらに問題になりにくい位置にあります。契約が成立していないと考えられる段階だからです。
取り消された後にすること
選考が振り出しに戻るので、時間の使い方が問題になります。条件を確かめる段階では、書面に何が書かれているかが判断材料になります。
内定の段階で渡される書面と、そこで見る項目は労働条件通知書で確認する項目に整理しました。2024年4月から就業場所・業務の変更の範囲が明示事項に加わっていて、入社前に分かることが増えています。
求人の条件そのものについては、職業安定法が明示を義務づけています。条件を変えて契約しようとする場合は変更の明示が必要で、見るべき順序は求人票の見方|違う条件なら明示義務があるにあります。
同じ卒業年度のまま就職活動を続ける場合、大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークが無料の窓口になります。公的な窓口だけで足りることも多く、まずそちらで構いません。民間の新卒向けエージェントも同じく無料で使えますが、対象が卒業年度で区切られている点に注意してください。
下の窓口のうちJAIC就職カレッジは、卒業年度ではなく年齢で区切っています。対象は18歳から35歳で、就職を希望する地域が12の都府県のいずれかであることが成果の条件です。卒業年度で切られる窓口とは条件が別なので、既卒になってからも同じ条件で使えます。
内々定が取り消されて卒業まで決まらなかった場合でも、翌年に新卒枠が閉じるわけではありません。厚生労働省は、既卒者が卒業後少なくとも3年間は新卒枠に応募できるよう努めることを事業主に求めています。根拠と確認のしかたは就職浪人は新卒枠に応募できるに整理しました。
まとめ
- 内々定は、労働契約の締結の認識には至っていないと考えられる段階
- ただし拘束関係の度合いが強ければ「採用内定」と認められることがある
- 契約が成立していなくても、期待権の侵害として損害賠償が認められうる
- 適法性は司法において判断されるとされている。会社が自由に決められる話ではない
- 分かれ目は拘束関係の度合い。日付の入った記録を残しておく
- 採用内定取消事案は、ハローワークが把握して指導し、公表できる仕組みがある
- 自分から辞退する場合は、内定の辞退よりさらに問題になりにくい
「まだ内々定だから」で終わらせる前に、どこまで拘束されていたかを書き出してください。