退職金はいつもらえるか
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辞めたあと、退職金がなかなか振り込まれないことがあります。
日数を定めた条文はありません。 決まっているのは、どこにその日が書かれているか、そしていつまで請求できるかです。
支払う時期は就業規則に書いてある(労働基準法89条3号の2)
労働基準法は、就業規則に必ず記載する事項を並べています。退職手当については、こう書かれています。
退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
「支払の時期に関する事項」が入っています。つまり制度がある会社なら、いつ払うかは就業規則に書かれています。
「定めをする場合においては」とあるとおり、退職金そのものは義務ではありません。制度が無い会社もあります。まず自分の会社に制度があるかを見てください。

就業規則は見せてもらえる(106条1項)
「就業規則を見たことがない」という場合、会社に周知の義務があります。
使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三第一項、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第九項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び同条第五項(第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)並びに第四十一条の二第一項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
長い条文ですが、間に並んでいるのは協定や決議の条番号です。先頭に「就業規則」が入っていることだけ押さえておけば足ります。
在職中に確かめておくほうが早く済みます。読む順序は退職は何ヶ月前に言えばいいかにまとめました。
7日以内の定めとの関係(23条1項)
賃金については別の条文があります。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
請求があれば7日以内です。ただし退職金については、就業規則に支払時期の定めがあるときは、その日が支払期日として扱われます。
だから「就業規則に退職後3か月以内と書いてある」という会社で、7日を過ぎたことだけを理由に請求するのは難しくなります。まず自分の会社の定めを見るのが先になります。
一方、定めが無いのに払われないなら話が変わります。そのときは請求から7日以内の条文が効いてきます。
就業規則に支払時期の定めがある
- その日が支払期日になる
- 七日を過ぎたことだけでは請求しにくい
- まず自分の会社の定めを読む
定めが無い
- 23条1項が効く
- 権利者の請求があれば七日以内
- 請求したことを書面で残す
定めがあればその日、無ければ請求から七日以内が効く
5年で消える(115条・附則143条3項)
もう1つ、期限があります。時効の条文です。
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
そして経過措置がついています。
第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
退職手当は5年、それ以外の賃金は当分の間3年です。未払い残業代と退職金では、請求できる期間が違います。
5年あるとはいえ、記録は年々たどりにくくなります。在職中の給与明細と就業規則の写しは残しておいてください。
振り込まれないときの順序
- 就業規則の退職金の条項を読む(支払時期・対象者の範囲)
- 自分が対象に入っているかを確かめる(勤続年数の条件があることが多い)
- 定めの期日を過ぎているなら、書面で請求する
- 動かないなら、労働基準監督署か専門家に相談する
2つ目で外れることがあります。 対象になる労働者の範囲も、必ず記載する事項に入っています。勤続3年未満は対象外、といった条件です。
共済に入っている会社は、払う相手が違う(中小企業退職金共済法10条・20条)
中小企業では、退職金を会社が直接払うのではなく、中小企業退職金共済(中退共)を使っていることがあります。この場合、条文はこうです。
機構は、被共済者が退職したときは、その者(退職が死亡によるものであるときは、その遺族)に退職金を支給する。
払うのは機構であって、会社ではありません。 請求先も振込元も会社ではないので、会社の資金繰りとは切り離されます。倒産しても支給は止まりません。
ただし条件があります。
ただし、当該被共済者に係る掛金の納付があつた月数(以下「掛金納付月数」という。)が十二月に満たないときは、この限りでない。
掛金の納付が12か月に満たないと支給されません。短い在籍で辞める場合、ここで外れることがあります。
もう1つ、押さえておくとよい定めがあります。
退職金等の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
差し押さえられません(国税の滞納処分は除きます)。自分の会社が中退共に入っているかは、就業規則か給与担当に確かめてください。
額の計算は自分で確かめられる
「決定、計算及び支払の方法」も必ず記載する事項です。つまり計算式も就業規則に書かれています。
支給額に納得がいかない場合、勤続年数と基礎額を当てはめて確かめてください。自己都合と会社都合で係数が違う会社もあります。
離職理由が会社の記載どおりとは限らない点は離職理由は会社の記載で決まらないにまとめました。

税金が引かれた後の額が振り込まれる
退職金には所得税と住民税がかかりますが、給与とは別の計算になります。勤続年数に応じた控除があるため、額面より税負担は小さくなります。
計算の仕方は退職金にかかる税金にまとめました。住民税の扱いは退職後の住民税にあります。
懲戒で減らされることがある
就業規則には、退職金を減額または不支給とする条項が置かれていることがあります。ただし書いてあれば必ず通るわけではなく、これまでの功労を帳消しにするほどの事情があるかどうかで判断されるとされています。
自分がそこに当たるのかは、まず就業規則の条項を読んで確かめてください。扱いは懲戒解雇と退職金にまとめました。
会社に言い出しにくいとき
退職金の話は、辞めた後に持ち出しにくいものです。交渉が要る場面なら、相手の選び方が変わります。
未払いの請求まで扱えるのは弁護士で、労働組合は交渉まで、民間業者は交渉そのものができません。退職代行|弁護士と労働組合の違いにまとめました。
引き継ぎを理由に支払いを止められた場合の扱いは引き継ぎをしないと賠償されるかにあります。
まとめ
- 退職金の支払日を定めた条文は無い。就業規則に書かれている
- 退職手当は「定めをする場合」の制度で、そもそも義務ではない
- 就業規則には周知の義務があるので、見せてもらえる
- 定めが無いのに払われないなら、請求から7日以内の条文が効く
- 請求権は退職手当は5年、それ以外の賃金は当分の間3年
- 対象者の範囲と計算方法も、必ず記載する事項に入っている
定めがあるのに払われないとき
就業規則に退職手当の定めがあれば、それは労働契約の内容になります。払われないなら請求することになりますが、報酬を得て代わりに請求できるのは弁護士だけです。根拠は弁護士法72条で、運営元ごとの違いは退職代行|弁護士と労働組合の違いにまとめました。
先に就業規則の退職手当の条項を手元に置いてください。 定めが無ければ請求する根拠そのものがなく、時効は5年です。
まず就業規則の退職金の条項を読んでください。日数はそこにあります。