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未経験のIT転職は許可番号を確認する

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この記事の見出し(13)
  1. 紹介するなら許可が要る(職業安定法30条・33条)
  2. 求職者からは手数料を取れない(32条の3第2項)
  3. 例外に挙がっているのは、どんな職業か
  4. 「研修費用」は別の話として出てくる
  5. 講座だけを売るところに、許可番号は無い
  6. 二月を超えるかどうかで、8日の後が変わる(49条1項)
  7. 事業者の表記は、8日までしか書いていないことがある
  8. 受講料の外に何が乗るかは、書き方が分かれる
  9. 事前に明示する義務がある(32条の13・5条の3)
  10. どこで確認するか(職業安定法5条の3・5条の4)
  11. 公的な訓練と比べてから決める
  12. 求人そのものの見方
  13. まとめ

未経験からITへ移るとき、「研修も就職先の紹介も無料」と書かれた窓口が多く出てきます。判断の入口は、その窓口が職業紹介として届け出ているかどうかです。

このページは、職業安定法の条文から、何をしていれば許可が必要になるのかを確認します。

紹介するなら許可が要る(職業安定法30条・33条)

まず有料の場合。条文はこう定めています。

有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

「許可を受けなければならない」と、例外なしに書かれています。届出でも登録でもなく、許可です。

問題は無料の場合です。無料なら要らないと思われがちですが、そうではありません。

無料の職業紹介事業(職業安定機関及び特定地方公共団体の行うものを除く。以下同じ。)を行おうとする者は、次条及び第三十三条の三の規定により行う場合を除き、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

無料でも許可が要ります。 除かれているのはハローワークなどの公的機関と、別の条文で扱われている学校などです。民間の会社が無料で職業紹介をする場合も、この条文の対象になります。

したがって「無料だから許可の話とは関係ない」という理解は成り立ちません。研修と就職先の紹介を組み合わせて提供しているなら、紹介の部分について許可を受けているかどうかが確認できるはずです。

有料の職業紹介

  • 厚生労働大臣の許可を受けなければならない
  • 求職者からは手数料を徴収してはならないのが原則

無料の職業紹介

  • こちらも厚生労働大臣の許可を受けなければならない
  • 外れるのはハローワークなどの公的機関と、別の条文で扱われる学校など

分かれているのは許可が要るかどうかではなく、許可の対象から外れる相手のほう

職業紹介の許可(職業安定法30条・33条)
未経験者向けIT就職支援が『研修も紹介も無料』とする場合でも、職業紹介に当たれば厚生労働大臣の許可が必要であることを、許可の印と研修→紹介の流れ、求職者から手数料を取れない関係を矢印や囲みで示したイメージ図です

求職者からは手数料を取れない(32条の3第2項)

次に、費用の出どころです。有料職業紹介事業者について、条文はこう定めています。

有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。ただし、手数料を求職者から徴収することが当該求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、同項各号に掲げる場合に限り、手数料を徴収することができる。

原則として求職者からは取れません。ただし書きはありますが、そこも「厚生労働省令で定めるとき」に限られ、さらに前項の各号に掲げる場合に限る、と二重に絞られています。

例外に挙がっているのは、どんな職業か

省令の側を開くと、範囲がはっきりします。職業安定法施行規則20条2項です。

法第三十二条の三第二項の厚生労働省令で定めるときは、芸能家(放送番組(広告放送を含む。)、映画、寄席、劇場等において音楽、演芸その他の芸能の提供を行う者)若しくはモデル(商品展示等のため、ファッションショーその他の催事に出席し、若しくは新聞、雑誌等に用いられる写真等の制作の題材となる者又は絵画、彫刻その他の美術品の創作の題材となる者)の職業に紹介した求職者又は科学技術者(高度の科学的、専門的な知識及び手段を応用し、研究を行い、又は生産その他の事業活動に関する技術的事項の企画、管理、指導等を行う者)、経営管理者(会社その他の団体の経営に関する高度の専門的知識及び経験を有し、会社その他の団体の経営のための管理的職務を行う者)若しくは熟練技能者(職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第四十四条第一項に規定する技能検定のうち特級若しくは一級の技能検定に合格した者が有する技能又はこれに相当する技能を有し、生産その他の事業活動において当該技能を活用した業務を行う者)の職業に紹介した求職者(当該紹介により就いた職業の賃金の額が厚生労働大臣の定める額を超える者に限る。)から、就職後六箇月以内に支払われた賃金の百分の十一(免税事業者にあつては、百分の十・三)に相当する額以下の手数料を徴収するときとする。

挙がっているのは芸能家とモデル、それに科学技術者・経営管理者・熟練技能者です。後ろの3つには条件が付いていて、紹介により就いた職業の賃金が厚生労働大臣の定める額を超える者に限られます。

未経験からのIT転職は、ここに入りません。科学技術者の定義は「高度の科学的、専門的な知識及び手段を応用し、研究を行い、又は生産その他の事業活動に関する技術的事項の企画、管理、指導等を行う者」で、未経験の求職者を紹介する場面とは違います。熟練技能者も、特級か一級の技能検定に合格した者が有する技能、またはこれに相当する技能を持つ者です。

上限も書かれています。例外に当たる場合でも、取れるのは「就職後六箇月以内に支払われた賃金の百分の十一(免税事業者にあつては、百分の十・三)に相当する額以下」です。入り口で数十万円を求める形は、この上限の外にあります。

だから未経験の読者にとっては、求職者から手数料を取る余地が条文の側に無いことになります。紹介の名目で費用を求められたら、それは紹介の手数料ではない何かです。

つまり「紹介してもらう側が無料」なのは、サービスの好意ではなく制度の側の設計です。費用は求人を出す側が負担しています。その仕組みは転職エージェントはなぜ無料なのかに整理しました。

ここから、確認すべきことが決まります。無料と書かれていることではなく、無料である理由が制度に沿っているかを見ます。

「研修費用」は別の話として出てくる

紹介の手数料が取れないのとは別に、研修の費用が争いになることがあります。途中でやめた場合や、一定期間内に辞めた場合に返還を求める、という形です。

紹介手数料の禁止と、研修費用の返還は別の条文の問題です。後者は労働基準法が違約金や損害賠償額の予定を禁じている点が関わってきます。線引きは退職時に研修費用の返還を求められたらに整理しました。

未経験向けの窓口では、研修と紹介がひとつのサービスとして案内されます。契約書の上では別々の合意になっていることがあるので、どちらの話なのかを分けて読んでください。

講座だけを売るところに、許可番号は無い

許可が要るのは紹介の側です。講座を売るだけなら職業紹介をしていないので、許可は要りません。スクールの側に許可番号が見当たらないこと自体は、おかしなことではありません。そこで見るところが変わります。

講座の契約のほうは、特定商取引法が扱っています。同法41条1項1号が、特定継続的役務提供という形を定めています。

役務提供事業者が、特定継続的役務をそれぞれの特定継続的役務ごとに政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約(以下この章において「特定継続的役務提供契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供

期間も金額も、条文ではなく政令のほうにあります。金額は特定商取引に関する法律施行令24条2項です。

法第四十一条第一項第一号の政令で定める金額は、五万円とする。

期間のほうは同じ政令の別表第四にあり、役務ごとに違います。パソコン教室にあたるものは二月です。別表第四の六がその欄です。

電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授

動画編集やWebデザインの講座がこの欄に入るかは、講座の中身で決まります。編集ソフトの操作を教える部分が大きければ近づきますし、考え方や企画のほうが中心なら離れます。ここは契約書と講座の内容を見て判断することになるので、記事の側で決め打ちはできません。

二月を超えるかどうかで、8日の後が変わる(49条1項)

この形に当たると、契約から8日を過ぎた後でも解除できます。特定商取引法49条1項が、そう書いています。

将来に向かつてその特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる。

「将来に向かつて」なので、受けた分はさかのぼって返ってきません。これから先の分をやめる、という解除です。

講座を提供する期間二月

二月以下

この形には当たらない。8日を過ぎた後の解除は、法律ではなく契約の定めによる

二月を超える

五万円を超える契約なら当たる。8日を過ぎた後でも、これから先の分を解除できる

特定継続的役務提供に当たるかどうかの境目のうち、期間のほう(パソコン教室にあたる役務の場合)

同じスクールの中で、この境目をまたぐことがあります。むびるスクールの広告の着地ページには、期間1か月のコースと3か月のコースが並んでいます。受講料は前者が110,000円、後者が330,000円です。1か月のほうは二月を超えないので、この形には当たりません。

事業者の表記は、8日までしか書いていないことがある

むびるスクールの特定商取引法に基づく表示は、解約についてこう書いています。

契約から8日間または初回講義開始までのどちらか長い方を期日としてキャンセルが可能

8日というのはクーリング・オフの期間です。49条1項の解除はそれとは別のもので、期間の定めがありません。表示が8日までしか触れていないことは、それを超えて解除できないという意味にはなりません。

申し込む前に確かめるのは、契約書と概要書面のほうです。受けた分をどう計算するかと、解約したときに請求される額が書かれています。

受講料の外に何が乗るかは、書き方が分かれる

同じ「スクール」でも、金額の見せ方が揃っていません。実際に4つの公式サイトを開いて比べました。

ChapterTwo

  • Adobeの年間契約費・編集用マウス・PCの購入費を料金ページに並べている
  • 受講料そのものは下限の形でしか出ていない

むびるスクール

  • 頭金が別途かかることと、分割手数料が1回につき2,200円かかることを注記に置いている
  • 着地ページにはコースごとの総額が出ている

Wannabe Academy

  • 金額の欄が画像なので、テキストでは金額を取れない
  • 分割手数料の率と休学費は注記にテキストで出ている

違うのは、受講料に含まれないものを事業者の側から出しているかどうか

受講料の外にかかるものを、公式サイトがどこまで書いているか

読む順序としては、まず総額が出ているかを見ます。月額だけが出ている場合は、回数を掛けても総額になりません。頭金と分割手数料が別に乗るためです。

事前に明示する義務がある(32条の13・5条の3)

条文は、説明についても定めを置いています。

有料職業紹介事業者は、取扱職種の範囲等、手数料に関する事項、苦情の処理に関する事項その他当該職業紹介事業の業務の内容に関しあらかじめ求人者及び求職者に対して知らせることが適当であるものとして厚生労働省令で定める事項について、厚生労働省令で定めるところにより、求人者及び求職者に対し、明示しなければならない。

「あらかじめ」「明示しなければならない」です。 聞かれたら答える、ではありません。

明示の対象に苦情の処理に関する事項が入っている点も見ておく価値があります。うまくいかなかったときにどこへ言うのかを、契約する前に知らせることが求められています。

条件が変わったら、変わったことを明示する義務がある(5条の3・5条の4)

未経験の転職でいちばん起きやすいのが、最初に聞いた条件と契約直前の条件が違うことです。ここにも条文があります。まず入口の義務です。

公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

そのうえで、変更したときの定めが別に置かれています。

当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令で定める事項を明示しなければならない。

黙って差し替えることは認められていません。 変えるなら「変えた」と示す必要があります。最初にもらった条件の書面やメールは、契約するまで消さずに持っておいてください。後から比べる材料になります。

求人の表示そのものにも定めがあります。

当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。

「誤解を生じさせる表示」まで含んでいます。 嘘とまでは言えなくても、受け取り方を誤らせる書き方は対象です。未経験歓迎の求人で、実際の配属先や仕事の中身が違っていたと感じたときは、ここに当たる可能性があります。

どこで許可を確認するか(公的な許可一覧や確認窓口)と、公的訓練と民間の研修を並べて比較し判断する流れを、拡大鏡と対比図で示したイメージ図です

どこで確認するか(職業安定法5条の3・5条の4)

許可を受けている事業者は、許可番号を持っています。番号は公式サイトの会社概要や利用規約に書かれていることが多く、そこに無ければ問い合わせて確認できます。

厚生労働省は、職業紹介事業者の情報を掲載するサイトを設けています。許可番号のほか、紹介した人数や、就職後どれくらい定着したかも見られます。使い方は実績は人材サービス総合サイトで見られるにまとめました。

未経験の分野へ移るときほど、ここを見る価値があります。自分に業界の相場観が無いぶん、窓口の説明を検証する材料が少なくなるからです。

実際に引いてみた例

この記事のとおりの手順で、IT特化の窓口を1つ引いてみます。人材サービス総合サイトで都道府県と事業主名称を入れると、株式会社ユニゾン・テクノロジーの許可番号 13-ユ-313348 が出てきます。許可年月日は令和3年7月1日、所在地は東京都渋谷区で、番号の「ユ」は有料職業紹介事業であることを示しています。

同じ手順を、検討している窓口それぞれで踏んでください。出てこなければ、その窓口は職業紹介として許可を受けていないことになります。

上場していると、もう1つ確かめる道がある

この記事が載せているJAIC就職カレッジは、運営が上場企業です。その場合、有価証券報告書という別の資料でも許可を確かめられます。

2026年1月期の有価証券報告書に、厚生労働大臣の有料職業紹介事業許可を受けていること、許可の有効期間が2023年8月1日から2028年7月31日までであることが書かれています。公式サイトの会社概要が書き換わっても、過去の報告書は金融庁のEDINETに残ります。

会社概要のページが消えて根拠が確かめられなくなった窓口を、このサイトでは実際に1件、掲載から外しています。公式サイトのほかにも確かめる先がある事業者のほうが、あとから検証しやすくなります。

公的な訓練と比べてから決める

民間の窓口を使う前に、公的な訓練が使えないかを見ておくと選択肢が増えます。ハローワークが案内する訓練にはIT分野のものがあり、受講そのものは無料です。

失業給付を受けている場合は、訓練を受けることで給付の扱いが変わります。給付制限との関係は職業訓練と失業給付|給付制限の解除に整理しました。在職中に自分で講座を選ぶ場合は、教育訓練給付の対象かどうかで負担が変わります。期限は教育訓練給付金|離職後1年の期限にあります。

公的なものと民間のものは、どちらかを選ぶという関係ではありません。訓練は公的なもので受け、紹介は民間で受ける、という組み合わせもできます。

求人そのものの見方

窓口が信頼できるかとは別に、紹介された求人の条件を読む作業が残ります。未経験可の求人では、給与の幅が広く示されることがあり、どの条件で自分が採用されるのかが分かりにくくなります。

求人票は広告ではなく、職業安定法が明示を義務づけている書面です。条件を変えて契約しようとする場合は変更の明示が必要になります。読む順序は求人票の見方|違う条件なら明示義務があるにあります。

内定後に渡される書面で見る項目は労働条件通知書で確認する項目に整理しました。就業場所と業務の変更の範囲が明示事項に入っているので、配属先が決まっていない形の採用では、ここが判断材料になります。

まとめ

  • 職業紹介は有料でも無料でも厚生労働大臣の許可が要る。無料だから不要にはならない
  • 除かれているのは公的機関と、別の条文で扱われる学校など
  • 有料職業紹介事業者は求職者から手数料を徴収してはならないのが原則
  • だから「求職者が無料」は好意ではなく制度の設計。費用は求人側が負担している
  • 研修費用の返還は別の条文の問題。紹介手数料の話と混ぜない
  • 取扱職種・手数料・苦情の処理に関する事項を、あらかじめ明示する義務がある
  • 許可番号と実績は厚生労働省のサイトで確認できる

無料と書いてあることではなく、無料である理由を確認してください。

出典