離職票が届かない間の国民健康保険
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離職票を待っている間、保険はどうなっているのか
辞めた後に離職票が届かないという話は珍しくありません。そこでよく一緒に出てくるのが「保険が使えない期間が続いている」という受け止め方です。
ただ、この2つは別の制度の話です。 離職票は雇用保険の書類で、窓口はハローワーク。健康保険はまったく別の手続きで、窓口も違います。離職票が手元にないことと、健康保険に入っていない状態であることは、そのままつながっていません。
ここでは、退職後の健康保険がどの時点から始まる整理になっているのかを、条文と公的機関の記載で確認します。

離職票は雇用保険の書類
離職票は、会社がハローワークに手続きをして交付される書類です。失業給付を受けるために使います。健康保険の加入手続きのために発行されるものではありません。届くまでの日数と、マイナポータルで受け取る方法は離職票はいつ届くか|マイナポータルで受け取るにまとめました。
届かないときの窓口は、ハローワークインターネットサービスに明記されています。
なお、会社から離職票が交付されない場合や、事業主が行方不明の場合等については、住居地を管轄するハローワークにお問い合わせください。
問い合わせ先は「住居地を管轄する」ハローワークです。 会社の所在地側ではありません。会社と連絡が取れない状態でも、こちらから動ける窓口があります。
離職票を含めて、退職後に会社から受け取る書類が何のために要るのかは退職の書類は受け取るものと返すものに整理しています。
失業給付の側も、届くまで止めておく必要はありません。 受給資格の仮決定手続きがあり、退職日の翌日から12日目以降に申し込めます。行った日にさかのぼって扱われるため、待った場合との差がそのまま入金の遅れになります。離職票が届かない|仮決定手続きで待たないにまとめました。
退職後の健康保険は3つのうちどれか
会社の健康保険は、退職によって被保険者ではなくなります。その後については、協会けんぽがこう案内しています。
健康保険については、1.任意継続健康保険、2.国民健康保険、3.ご家族の健康保険(被扶養者)のいずれかに加入する手続きが必要です。
「どれかに加入する手続きが必要」という書き方で、離職票を待つという条件は付いていません。任意継続の期限や保険料の考え方は退職後の健康保険と年金|20日と14日で扱っています。
以下は、このうち国民健康保険を選んだ場合の話です。
国民健康保険の資格は、届出の日から始まるのではない
ここが誤解の生まれやすいところです。国民健康保険法は、資格がいつ生じるかを条文で定めています。
まず、市町村の区域内に住所がある人は国民健康保険の被保険者になる、というのが原則です。そのうえで第六条が例外を並べており、その第一号がこれにあたります。
健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による被保険者。
会社の健康保険に入っている間は、この第一号に該当するので国民健康保険の被保険者にはなりません。では、そこから外れたときはどうなるか。第七条が資格取得の時期を定めています。
都道府県等が行う国民健康保険の被保険者は、都道府県の区域内に住所を有するに至つた日又は前条各号のいずれにも該当しなくなつた日から、その資格を取得する。
「前条各号のいずれにも該当しなくなつた日」が、会社の健康保険の被保険者でなくなった日にあたります。条文が基準にしているのは、その日であって、届出をした日ではありません。
つまり制度の組み立てとしては、会社の健康保険を抜けた時点で国民健康保険の側に移っている整理になっています。届出は、その状態を市町村に知らせる手続きです。
14日以内は「届出の期限」
厚生労働省は届出について、こう案内しています。
国民健康保険の被保険者となったとき、脱退するときなどは、14日以内に、お住まいの市町村の国民健康保険の窓口(国民健康保険組合の場合は国民健康保険組合の窓口等)まで関係書類を提出する必要があります。
この14日は、届出をいつまでにするかの期限です。 前の条文と読み合わせると、資格が生じる日を決めているものではないことが分かります。
だからといって放置してよいという話ではありません。届出をしないと保険証が手元に来ないので、窓口で全額を立て替える場面が出てきます。期限は守ったほうがよいものです。ここで言いたいのは、期限を過ぎたことと、その期間が無保険だったこととは別だという点だけです。
過ぎてしまった場合にどう扱われるかは、市町村によって案内の仕方が異なります。ただし窓口で全額を立て替えた分は、後から請求できる制度があります。その手順と期限は10割払ったあとに、取り戻せることがあるで扱います。金額の目安はここでも書きません。窓口で直接確認してください。
保険証が反応することと、資格が残っていることは別
マイナンバーカードを保険証として使っている場合、退職したあとも読み取り機が反応してしまうことがあります。会社が資格喪失の届出を出すまでに時間がかかると、その間はシステム上まだ有効に見えるためです。
これを「前の保険がまだ続いている」と受け取ると危険です。資格そのものは退職日の翌日に切れています。協会けんぽは、資格を失ったあとに使った場合の扱いをこう案内しています。
※資格喪失日以降に保険証の使用はできません。資格喪失日以降に使用(受診)した場合、医療費の保険負担分を全額返納いただくこととなります。
通ってしまっても、あとで7割を返すことになります。 その場は3割で済んだように見えて、後日まとめて請求が来る形です。窓口で10割払うのと最終的な負担は変わりませんが、いつ払うかが変わるぶん、思わぬ時期に出ていきます。
読み取り機が通るかどうかは、資格があるかどうかの判定になりません。退職日の翌日から、次の保険の手続きが要るという点は、カードが反応しても変わらないと考えてください。
なお、返す物そのものが何かも変わりました。従来の健康保険証は有効期限が終了していて、いま返却の対象になるのは資格確認書です。マイナ保険証だけの人には返す物がありません。誰が回収するのかを含めて退職時に返すのは保険証か資格確認書かに整理しました。
10割払ったあとに、取り戻せることがある
前の節は「通ってしまって、あとで7割を返す」側の話でした。逆に、手続きが間に合わず窓口で全額を払った場合は、払いすぎた分を後から請求できる制度があります。療養費といいます。
墨田区は、申請できる場合をこう案内しています。
緊急のときなどやむを得ない理由で、資格確認書やマイナンバーカードを持たずに治療を受けた場合や国保を扱っていない医療機関等で治療を受けた場合などに申請することができます。
10割払った時点で終わり、ではありません。 ただし自動では戻らず、自分で申請する必要があります。そして期限があります。
※医療費を支払った日の翌日から2年を経過すると時効となり申請できませんので、ご注意ください。
起点は受診日ではなく、医療費を支払った日の翌日です。 2年あるので急ぐ話ではありませんが、忘れたまま過ぎると戻らなくなります。
捨ててはいけないのは領収書のほう
申請には領収書が要ります。ここで取り違えが起きます。
※医療機関が患者に対し、領収書と一緒に発行する「診療明細書(医療費明細書)」は、当該申請の添付書類としては使えませんのでご注意ください。
会計のときに2枚渡されますが、使えるのは領収書だけです。 明細のほうが詳しく見えるので、そちらを残して領収書を捨ててしまうと申請できません。
再発行も期待できません。小城市は返還金の領収書についてこう書いています。
領収書は再発行できませんので大切に保管してください。
前の保険証を使ってしまった場合は経路が違う
同じ「10割ぶんの負担」でも、旧保険証で受診した場合は順序が変わります。いったん返してから、新しい保険のほうへ請求する形です。
このため、国保の資格喪失後の受診により不当利得となった場合は、医療機関等へかかった医療費の給付分7割(一部8割または9割)を小城市に返還していただくことになります。
返還したあとに、その領収書を添えて次の保険者へ請求します。返して終わりではありません。
なお、審査があるので必ず全額が戻るとは限りません。墨田区は申請書の書き方についてこう添えています。
保険証等を提示できなかった理由は、詳しく具体的に記入してください。
手続きが間に合わなかった事情は、そのまま書けば足ります。扱いは市町村ごとに違うので、住んでいる市町村の国民健康保険の窓口で確認してください。

必要な書類は市町村が定めている
では、届出のときに離職票が要るのか。厚生労働省は書類についてこう書いています。
提出が必要な書類や申請方法などは、お住まいの都道府県・市町村や国民健康保険組合のホームページ等をご確認ください。
全国共通の必要書類は示されていません。 何を持っていくかは、住んでいる市町村のページで確認することになります。
実務では、退職日が確認できる書類として、健康保険の資格喪失を証明する書類や退職証明書が案内されていることが多くあります。離職票がその一つとして挙げられている自治体もあります。ただ、離職票でなければ手続きできないと国が定めているわけではありません。
離職票が届かずに困っているなら、まず住んでいる市町村のページを見てください。離職票以外の書類で足りるかどうかを確かめるのが早い順序です。退職証明書は請求すれば会社が交付する義務のある書類で、離職票よりも早く手に入ることがあります。
どの書類も無いときに、そこで終わりとは限らない
会社が何も出してくれない、という状態もあります。窓口で「会社に聞いてください」と言われてそのまま帰ってしまうと、無保険のまま時間が過ぎます。ただ、書類が無い場合の扱いを案内している市町村があります。
常総市は、証明書が発行されない場合をこう説明しています。
社会保険資格喪失証明書が発行されていない場合でも、市役所にてマイナンバーによる情報連携や年金記録で社会保険等(厚生年金)の喪失日が確認できれば、国民健康保険加入の手続きをすることができます。この記録が確認できない場合は、
書類そのものではなく、喪失日が確認できるかどうかが判断の中身です。 記録で確認が取れない場合は、次の手順が示されています。
退職証明書や雇用保険喪失証明書等を確認したうえ、社会保険の喪失日や扶養になっていた方の氏名等の確認のため、お勤め先に電話で確認を取らせていただくことがあります。その際、担当者不在や休業日等で確認が取れず、国民健康保険加入の手続きが進められない場合もあります。ご了承ください。
清瀬市も同じ流れを案内していて、窓口へ行くときに何を持っていくべきかまで書いています。
会社の事情等で社会保険資格喪失証明書が用意できず、手続きができない場合には、前の勤務先に電話で確認させていただきます。連絡先電話番号や前の勤務先の名称を控えてきてください。
つまり、書類が揃わないまま窓口へ行くとしても、マイナンバーカードと、前の勤務先の名称・電話番号を持って行くだけで進む場合があります。逆にこれが無いと、確認する手立てがないので出直しになります。
ただしどちらも「できる場合がある」とされています。 引用したとおり、担当者不在や休業日で確認が取れず、手続きを進められないこともあるとされています。扱いは市町村ごとに違うので、行く前に電話で「書類が揃っていないが手続きできるか」を聞いておくと往復が減ります。
離職票は、保険料そのものにも効く(国民健康保険法施行令29条の7の2)
ここまでは「加入できるかどうか」の話でした。離職票にはもうひとつ、保険料を下げる働きがあります。
国民健康保険法施行令に、特例対象被保険者等という区分があります。
前項に規定する特例対象被保険者等とは、都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険の被保険者又は特定同一世帯所属者のうち次の各号のいずれかに該当する者(これらの者の雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第十四条第二項第一号に規定する受給資格(以下この項において「受給資格」という。)に係る同法第四条第二項に規定する離職の日の翌日の属する年度の翌年度の末日までの間にある者に限る。)をいう。
続けて、当てはまる人が2つ挙げられています。
雇用保険法第二十三条第二項に規定する特定受給資格者
特定受給資格者(倒産・解雇など、自分の意思ではなく辞めた人)のことです。
雇用保険法第十三条第三項に規定する特定理由離職者であつて受給資格を有するもの
特定理由離職者(契約が更新されなかった、体調や家庭の事情でやむを得ず辞めたなど。該当する条件は特定理由離職者に当たるかで受給資格が変わるにあります)で、失業給付を受けられる人が対象です。
当てはまると、保険料の計算に使う給与所得の扱いが変わります。
当該給与所得については、同条第二項の規定によつて計算した金額の百分の三十に相当する金額によるものとする。
前年の給与所得を3割として計算するということです。 国民健康保険料は前年の所得で決まるので、辞めた直後は在職中の収入で計算されて高くなります。この区分に当たれば、そこが大きく下がります。
期間も条文にあります。離職日の翌日が属する年度の、その翌年度の末日まで。たとえば2026年5月に辞めた場合、2026年度と2027年度の末日(2028年3月31日)までが対象になります。
当てはまるかどうかは、離職票の離職理由で決まる
ここが離職票と繋がります。特定受給資格者と特定理由離職者は雇用保険の区分で、判定の材料になるのは離職票に記載された離職理由です。
つまり離職票が届かないと、加入そのものは別の書類で進められても、この軽減だけは判定できません。 自己都合で辞めたつもりでも、実際には特定理由離職者に当たる場合があります。判定の中身は離職理由はどう判定されるかにまとめました。
手続きの順序としては、こうなります。
- 書類が揃わなくても、まず加入の手続きに行く(無保険の期間を作らない)
- 離職票が届いたら、軽減の申請ができるかを市町村の窓口で確認する
- 当てはまれば、そこから保険料が計算し直される
加入と軽減は別の手続きです。 加入したときに自動で判定されるものではないので、離職票が後から届いたら、もう一度窓口に行く必要があります。
窓口が2つに分かれていることを押さえる
ここまでを整理すると、待つべき相手と動くべき窓口が分かれています。
失業給付
- 住居地を管轄するハローワーク
- 離職票が要る
国民健康保険への切替
- 住んでいる市町村
- 離職票は市町村の案内による
任意継続
- 加入していた健康保険の保険者
- 離職票は案内に条件として出てこない
離職票の到着を待つ必要があるかどうか
離職票を待つ必要があるのは、失業給付のほうです。 健康保険の手続きは、離職票の到着とは別に進められる場合があります。
離職票が届かない状態が続いているなら、2つを同時に進められることがあります。ハローワークへの問い合わせと、市町村での保険の手続きです。片方が止まっているからもう片方も進まない、とは限りません。
迷ったときに確認する順序
- 住んでいる市町村の国民健康保険のページで、必要書類を確認する
- 離職票以外の書類で足りるなら、そちらで届出をする
- 離職票については、住居地を管轄するハローワークに相談する
制度の整理としては以上ですが、個別のケースがどう扱われるかは窓口の判断になります。 期間が空いている、書類が揃わないといった事情があるときは、自分で結論を出さないでください。市町村の窓口で事情を伝えて確認します。
辞めた後の手続き全体の順序は退職の書類は受け取るものと返すものに、保険と年金の期限は退職後の健康保険と年金|20日と14日にまとめています。
年金の側は健康保険と扱いが違います。切り替えに離職票は要らず、免除だけが待つ側になります。離職票が届かなくても年金の免除は間に合うに分けて書きました。