退職届の書き方|退職願との違いで結果が変わる
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退職届の書式そのものは短く、迷うところがありません。迷うべきなのは、退職願と退職届のどちらを出すかのほうです。
名前が似ているだけで、法律上の意味が違います。このページは、その差が何を変えるのかを条文と厚生労働省の解説から確認します。
退職願は「お願い」ではなく「申込み」
退職願を出すと、会社の承諾を待つ状態になります。厚生労働省の解説はこう書いています。
しかし、注意しなければならないのは、合意退職は会社の承諾を得なければ労働契約を終了させることができないので、会社が退職を承認しない間はその効果が発生しないという点です。
承諾されるまで、契約は終わりません。 「退職願を出したのに話が進まない」という状態は、制度としてはこの位置にあります。

だから撤回できる。そして、できなくなる
承諾前なら引っ込められます。
合意退職の申し込みの場合には、使用者が承諾するまでの間は、その申し込みを撤回することができます。
一方、退職届のほうは扱いが変わります。
一方、任意退職の申し入れと認められる意思表示がされた場合には、労働者の意思表示が会社に到達し、会社が承諾すればその時点で効果が発生しますが、承諾しなければ2週間後に効力が発生します。会社が退職を承諾すれば、労働者が一方的に撤回することはできなくなります。
整理すると、こうなります。
退職願(合意退職の申込み)
- 効力は会社が承諾したとき
- 承諾前なら撤回できる
- 会社と日程を相談したいとき
退職届(任意退職の申入れ)
- 承諾があればその時、なければ2週間後
- 承諾されると撤回できない
- 期日を確実にしたいとき
違うのは会社の承諾が要るかどうか
同じ解説は、どちらでも撤回は簡単でないとも書いています。
いずれにしても、退職の意思表示は容易には撤回が認められないので慎重に検討したうえで行うことが大切でしょう。
表題を書き分ければ結果が決まる、という単純な話でもありません。同じ解説には、争いになれば文書の表題だけでなく記載内容や当事者の言動から判断される、とも書かれています。
厚生労働省は「退職届」を勧めている
確実に辞めたい場合について、方針まで示されています。
とはいっても、確実に一定の期日をもって退職をしたいという場合には、必要な一定の期間(下記②の1参照)を見込んだうえで、合意退職の申し込みと解釈されないような表現で、退職の意思を明確に記載した「退職届」を提出して任意退職の申し入れを行うことが無難でしょう。
「合意退職の申し込みと解釈されないような表現で」という条件が付いています。つまり、文中に「お願い申し上げます」「ご承認いただきたく」のような承諾を求める言い回しを入れると、退職願として読まれる余地が生まれます。
条文はどうなっているか
前提になるのは民法第627条第1項です。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
続けて、期間も定められています。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
「いつでも」と「二週間」です。 承諾は要件になっていません。
就業規則の「1か月前」はどうなるか
就業規則に「退職の申し出は退職日の1ケ月前までにしなければならない」と定めている例について、労働局のページが取り上げています。厚生労働省の解説にも、この関係の説明があります。
そのため、会社の就業規則などで、この期間を大幅に伸ばすよう規定や上記の期間を超える場合にも会社の許可を条件とするような規定が設けられていたとしても、そのような規定は無効とされることとなります。
「会社の許可を条件とする」規定も無効の側に挙げられています。ただし、これは「就業規則を無視してよい」という意味ではありません。引き継ぎや有給の消化を含めて調整するなら、就業規則の期間に合わせたほうが摩擦は少なくなります。無効だと分かっていることと、それを使うかどうかは別です。
月給制の「当期の前半まで」に注意(民法627条2項)
月給制について、こういう説明を見ることがあります。実際、労働局のページにも記載があります。
月給制等のように期間によって報酬が定められている場合には、賃金計算期間の前半に退職を申し入れた場合、その賃金計算期間の末日に退職することができ、後半に申し入れた場合、翌計算期間以降に退職が出来るとされています。
ところが、現在の条文はこう書かれています。
期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。
「使用者からの」と限定されています。 当期の前半までという制限も、条文上はこの使用者側の申入れに続けて置かれています。
つまり、条文の文言と、上の解説の書きぶりは一致していません。このページは条文の文言を優先して書いています。 労働者側からの退職は、1項の「いつでも」「二週間」が基本という読み方になります。
とはいえ、月末退職にしたいなら日付から逆算するのが確実です。争点にしないほうが早く、社会保険料の扱いも退職日で変わります。月末とその前日の差は退職日を月末にするかどうかで変わるものに整理しました。判断に迷う場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーで確認してください。扱う範囲は退職相談は無料の公的窓口でできるにまとめています。

実際に書く項目
書式は決まっていません。手書きでもパソコンでも構いません。入れる要素はこれだけです。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 表題 | 退職届(確実に辞めたい場合) |
| 本文 | 「一身上の都合により、◯年◯月◯日をもって退職いたします」 |
| 届出年月日 | 提出する日 |
| 所属と氏名 | 部署名と氏名。押印は必須ではない |
| 宛名 | 会社の代表者名。自分の氏名より上に書く |
縦書きか横書きか、便箋かコピー用紙か、ボールペンか万年筆か。 どれも法律の側に決まりがありません。民法627条1項は「解約の申入れ」とだけ書いていて、書面の様式にも筆記具にも触れていないためです。慣習として白い便箋に縦書きという説明をよく見ますが、根拠は条文ではありません。
封筒も同じです。色も大きさも折り方も、条文には出てきません。入れずに手渡しても、申入れが届いたことに変わりはありません。封筒が意味を持つのは、手渡しできずに送るときです。そのときは中身より届いたことをどう残すかが効いてきます。方法は退職届を郵送で出すときの手順にまとめました。
決まりがあるとすれば、勤め先の就業規則です。様式が定められている会社では、それに従うほうが手続きが早く進みます。規則に定めが無いなら、読める形であれば足ります。
パソコンで作って印刷する場合、横書きになるのが普通です。それで効力が変わることもありません。
理由は「一身上の都合」で足ります。 詳しく書く義務はありません。会社都合での退職なら「一身上の都合」と書かないほうがよく、離職理由の判定に影響することがあります。判定の仕組みは離職理由は会社の記載で決まらないにまとめました。
退職日は自分で書きます。 空欄にして会社に決めてもらう形にすると、上で見た「期日を確実にする」効果が消えます。
出したあとに証拠が残るか
手渡しでは、受け取っていないと言われたときに示すものが残りません。到達したことが要件になっている以上、そこが弱点になります。
郵便で送る方法と、内容証明が何を証明して何を証明しないのかは退職届を内容証明で送るときに整理しました。内容証明が証明するのは差し出した内容で、届いたことは配達証明という別のサービスです。
自分で出せない状況なら
そもそも渡せない、渡すと引き止められて話が終わらない、という状態もあります。その場合、伝えること自体を代わってもらう選択があります。
運営元によってできる範囲が違います。 報酬を得る目的で法律事務を扱うことは弁護士法72条で制限されているため、退職日や有給の条件を調整する必要があるなら労働組合か弁護士が対応できる範囲になります。線引きは退職代行|弁護士と労働組合の違いで条文をたどりました。
辞めるときに、研修費用の返還を求められることがあります。労働基準法16条は違約金や損害賠償額をあらかじめ定めることを禁じていますが、貸付としての実質があれば返還が認められる場合もあります。判断の要素は退職時の研修費用の返還に整理しました。
書面を出す前の、口頭で切り出す段取りは退職は何ヶ月前に言えばいいかにまとめました。
手渡しできないときの送り方は退職届を郵送で出すときの手順にまとめました。
まとめ
- 退職願は合意退職の申込みで、会社が承諾するまで効力が発生しない
- 退職願は承諾前なら撤回できる。退職届は承諾されると撤回できない
- 厚生労働省は、確実に期日を決めたい場合に「退職届」の提出を勧めている
- 民法627条1項は「いつでも」申し入れられ、二週間の経過で終了すると定めている
- 就業規則で期間を大幅に伸ばす規定や、許可を条件とする規定は無効とされる
- 月給制の「当期の前半まで」は、条文上は「使用者からの」申入れに付いた制限
- 表題・退職日・宛名・氏名があれば足りる。理由は「一身上の都合」でよい
書式で迷う時間より、どちらを出すかを決める時間のほうが結果を変えます。